形容詞の名詞化(2) -Adjektiv als Nomen- 中性名詞【ドイツ語文法46】


形容詞の名詞化(1)のつづきです。

形容詞の名詞化(1) -Adjektiv als Nomen-【ドイツ語文法45】

 

形容詞が名詞化した単語が一般的な名詞と違うところは

・男性・女性・中性・複数のどの性別にもなれること

・名詞の語尾が格変化すること

でした。

前回(1)はこの中の男性・女性・複数名詞の文法を解説しました。

今回(2)では形容詞が名詞化して中性名詞になった語、そしてその意味と使い方を解説します。

今日やるのはすべて中性名詞です。そして基礎の部分のみ(おもに一格と四格)です。

☆☆

 

まずは形を見てみましょう。意味はその後に見ます。

 

広く知られている文を例にしましょう。

「誕生日おめでとう」のドイツ語は何と言いますか?

Alles Gute zum Geburtstag!

が一般的ですよね。

じゃあこのGuteって何?なんでこの形でここに入ってるんですか?

 

このGuteは形容詞gutが名詞化したものです。

男性・女性・複数だと(1)で勉強したように人(善人)という意味になりますね。

der Gute(男性の善人)

die Gute(女性の善人)

die Guten(複数の善人)

 

でもAlles Gute zum GeburtstagのGuteはallesが中性名詞四格の変化形をしているので、中性名詞です。

これが今から勉強する中性名詞+名詞化した形容詞の意味と使い方です。

このページを最後まで理解するとAlles Gute zum Geburtstagの文法を理解できます。

 

それではいきましょう。

まず形から。意味は後ほどやります。

 

形容詞化した中性名詞には2種類の基本形があります。

gutの場合、語尾がGuteに変化する時とGutesに変化するときがあります。

識別法はその前にがついてるか、です。

つまりAlles Gute zum Geburtstag.であればallesのことです。

1)dasまたはallesがついた場合⇒Gute

2)etwas, nichts, viel, wenig, einigesがついた場合⇒Gutes

になります。

例)Alles Gute zum Geburtstag.
=お誕生日おめでとう。

↑はallesがついてるからGute

例)Ich habe nichts Gutes gefunden.
=全然いいの見つからなかった。

↑はnichtsがついているからGutes

 

*Gutesの前につく単語はこれだけではありません。ここではよく使われるもののみ出してあります。

 

それでは形を練習してみましょう。

下の形容詞を名詞化してみてください。

まずはdasをつけてこれらの形容詞を変化させましょう。

・cool

・süß

・möglich

・bequem

・positiv

・negativ

・teuer

・billig

 

答えはこちら↓

・das Coole

・das Süße

・das Mögliche

・das Bequeme

・das Positive

・das Negative

・das Teure

・das Billige

teuerの変化形は大丈夫でしたか?注意です。

またallesのほうは、使える場面が非常に限られていますので、dasとつくほうが圧倒的に多いです。意味は後ほど。

 

それでは次、etwas, nichts, wenig, viel, einigesなどをつけて名詞化してみましょう。

形容詞の意味も確認しながらどうぞ。

・schön

・hübsch

・groß

・klein

・toll

・wichtig

・ärgerlich

・scharf

・bitter

 

答えの例はこちら↓

・etwas Schönes

・viel Hübsches

・wenig Großes

・einiges Kleines

・nichts Tolles

・viel Wichtiges

・wenig Ärgerliches

・etwas Scharfes

・nichts Bitteres

このようになりますね。あらゆる組み合わせがあります。

男性・女性・複数の名詞化は限られた形容詞しか名詞化できないと一つ前の文法で解説しましたが、中性の名詞化は比較的広範囲の形容詞で名詞化ができます。

形容詞をたくさん知っていればいるほど使えますので、ぜひ一つでも多く形容詞を知っておきましょう。

【ドイツ語単語】形容詞1(1~50)

 

その中でも意味の性質上、名詞化で使われやすい形容詞があります。

それはを表す形容詞です。これらはよく日常会話で名詞化されます。

なのでここで色の形容詞もいくつか名詞化しておきましょう。

rot⇒das Rote, etwas Rotes

gelb⇒das Gelbe, wenig Gelbes

grün⇒das Grüne, nichts Grünes

blau⇒das Blaue, nichts Blaues

schwarz⇒das Schwarze, etwas Schwarzes

weiß⇒das Weiße, viel Weißes

rosadas Rosane, etwas Rosanes(*)

lila⇒das Lilane, etwas Lilanes(*)

*rosaとlilaは外来語(ラテン語由来)です。そのため名詞化の時には-nがつきます。

 

形容詞の格変化も同じ形をとります↓

rosaの特殊な格変化

Kasus(格) maskulin feminin neutral plural
Nominativ der rosane Rock
ein rosaner Rock
die rosane Uhr
eine rosane Uhr
das rosane Kleid
ein rosanes Kleid
die rosanen Schuhe
meine rosanen Schuhe
Genitiv des rosanen Rocks
eines rosanen Rocks
der rosanen Uhr
einer rosanen Uhr
des rosanen Kleids
eines rosanen Kleids
der rosanen Schuhe
meiner rosanen Schuhe
Dativ dem rosanen Rock
einem rosanen Rock
der rosanen Uhr
einer rosanen Uhr
dem rosanen Kleid
einem rosanen Kleid
den rosanen Schuhen
meinen rosanen Schuhen
Akkusativ den rosanen Rock
einen rosanen Film
die rosane Uhr
eine rosane Uhr
das rosane Kleid
ein rosanes Kleid
die rosanen Schuhe
meine rosanen Schuhe

 

☆☆

 

それでは意味を見ていきましょう。

先ほどの

1)dasまたはallesがついた場合⇒Gute

2)etwas, nichts, viel, wenig, einigesがついた場合⇒Gutes

という2つの法則は1が定冠詞、2が不定冠詞でもあります。

dasがついた場合は特定しているもの、またetwas(何か)は意味からしても特定していません。

意味についてはこれらの単語と同じです。

たとえばdas Guteは「このいいもの」

たとえばnichts Gutesは「全くよくないもの」

たとえばetwas Gutesは「何かいいもの」

となります。

 

それでは具体的に。

次のダイアログの下線は形容詞の名詞化が入る単語です。

2人はこの料理の写真を見ながら会話をしています。

A:料理の中にあるこの赤いのは何?

B:とうもろこしの隣にあるこの小さいやつ?パプリカだよ。

A:その丸いのは何?

B:この黄色いやつのこと言ってる?パンプキン。

A:真ん中にあるその長方形のは?

B:これは何だっけな・・?どっちにしろ全然おいしくないやつ

 

形容詞の名詞化は日本語に直訳すると「(形容詞)の」に近い感じですね。

このダイアログは2人で写真を見ながら話しているので特定しています。

この赤いの⇒das Rote

この小さいの⇒das Kleine

特定しているのでdasがつきますね。

最後の「全然おいしくないやつ」はnichts(全く~ない)が前につくと意味が同じです。

それでは変化形にも注意してドイツ語で書いてみましょう。

回答例はこちら↓

A:Was ist das Rote da im Essen?

B:Meinst du das Kleine neben dem Mais? Paprika.

A:Was ist das Runde da unten?

B:Meinst du das Gelbe? Kürbis.

A:Was ist dann das Rechteckige in der Mitte?

B:Was war….? Jedenfalls war es nichts Leckeres.

どうですか?

「この〇〇色のやつなに?」とか「なんだこの苦いのは!」

といった表現には形容詞の名詞化がぴったりです。

だから色や味や形など、名前がわからないけど描写できる形容詞がよく使われるのですね。

 

それではさらなる例文をあげていきます。

どれも実践的です。

・Es ist etwas Schlimmes passiert. Das Flugzeug ist abgestürzt.

=なんかヤバいことが起きた。飛行機が落ちた。

 

・Ich habe etwas Großes vor.

=ちょっと大きい計画があるねん。

 

・Viele Jugendliche träumen davon, etwas Großes zu erreichen.

=たくさんの思春期の少年少女が何か大きいことを達成すると夢見てる。

 

・Ich habe alles Mögliche versucht, aber es hat nicht geklappt.

=できることは全部やってみた、でもあかんかってん。

 

・Der Junge hat etwas Unmögliches geschafft.

=あの少年は不可能っぽいことを成し遂げた。

 

・Ich kann nichts Scharfes essen.

=私は辛いものが全く食べられない。

 

・In diesem Supermarkt gibt es wenig Süßes.

=このスーパーは甘いものがちょっとしかないね。

 

・Die Polizei hat bei der Untersuchung leider nichts Neues gefunden.

=警察は捜査で何も新しいものを見つけられなかった。

 

・Ich würde viel Positives für die Zukunft in der Ukraine.

=ウクライナの未来にいいことがいっぱいありますように。(私はなにもしないけど。と後に続きそうな発言)

 

・Suchen Sie etwas Bestimmtes?

=特定ものものをお探しですか?

 

*随時更新

 

☆☆

最後にひとつ、応用を。形容詞の名詞化はまだまだ深いです。

普通の名詞と形容詞から来た名詞の意味の違いはある?を見ていきましょう。

頭がこんがらがらって嫌にならない自信のある人は先へどうぞ↓

 

たとえば

「寒い・冷たい」はドイツ語ではkalt、「寒さ・冷たさ」はdie Kälteといいます。

でもこのdie Kälteはkaltから名詞化したものではありません。

なぜならこの名詞は女性名詞と決まっているからです。

じゃあkaltは名詞化できないの?

できます。

Möchtest du etwas Kaltes trinken?

=何か冷たいの飲む?

規則の通り、「冷たい」という意味です。「冷たさ」という意味ではありません。

非常にややこしいですが、形容詞から来た名詞は辞書にはのっていないので意味の理解が難しいですね。

☆☆

また格の問題もあります。

また今までは1格と四格しか出していませんが、格変化があります。

このような変化です。中性名詞しかないので格変化も1種類。

still(静かな)という例で見てみましょう。

Kasus neutral
Nominativ das Stille
Genitiv des Stillen
Dativ dem Stillen
Akkusativ das Stille

stillにも普通の名詞(die Stille)があります。「静寂」とか「静けさ」という意味です。

たとえば

「静けさの中で小説を読むのが好き」と言いたければ

In der Stille lese ich gern Romane.

といいます。

しかし名詞化してdas Stilleとなったときは「こっそり」とか「ひそかに」という意味になったりします。日本語では形容詞っぽい意味しか書けませんが、名詞です。

Menschen leiden oft im Stillen, weil sie vor anderen Leuten stark sein wollen.

=人は他の人に弱みを見せたくないので、よくひそかに苦しんでいる。

↑これは名詞化したdas Stilleが三格になった例ですが、文法だけでなく意味も非常に難しいですね。

形容詞の名詞化はまだまだ深いです。

 

動画解説もどうぞ↓

 

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