中国セキュリティーシアター


中国には日本やドイツのそれとは比較にならないほど多くの警備員や身分チェック用のスタッフ、または警察官が町にあふれています。人口が多いせいも当然あるとは思いますが・・。

一日中エスカレーターの前に立ってるだけの人とか、大きな建物やショッピングモールの前にただいるだけの人とか、信号の近くとかありとあらゆる場所にボーッと立ってる警備員的な人が大量に湧いている。

各地下鉄の駅の改札前では、こん棒などを持ったセキュリティ要員たちが機械を通した荷物チェックをするのは広く知られています。

道端や改札前などあらゆる場所で適当な人物に身分証提示を求める警察官も溢れている。いわゆる職務質問ってやつ?

中国には大きく分けて2つの日常的に行われる検査項目があります。ヒト(身分)と持ち物。

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・ヒトの場合

中国は「いつ誰がどこにいるか」の全てを知りたがります。これを全員分把握しようと思ったら当然ながら相当な人員とコストがかかる。

結果中国にいる人々は、旅行でも帰省でもなんでも長距離の交通機関を利用をするたびに国境を通過する時のような身分証の提示や荷物のチェックを求められる。場所によって写真や指紋を取られることも多い。中国は地方政府があり、各省や市がある程度独立して政治を行っているため、中国国内を長距離移動する=外国に行くぐらいの大変な感覚なのでしょう。

深圳なんて特定の所属グループの人たち(詳しくは謎)は入れないといった規制を設けています。明らかな差別のレベルでです。マジで独立した国のようなシステムだよね。

義烏駅では「外国人と少数民族」のみを対象に身分証の登録を行う。f:id:nanapupst:20180710183106j:plain

さらに中国はそれにとどまらず「どこに泊まっているか」や「どこを観光しているか」といった個人の行動まで徹底的に知っておきたい国なんです。

ホテルでは必ず全員のパスポートや身分証がスキャンされて政府機関に送られ、時には写真撮影までされる。

観光地で入場券を買うときなどは多くの場所でパスポート/身分証の提示を求められ名前やナンバーを入力されるし、張家界ではなんと入場時に親指の指紋まで取られました。

外国人も含めて「いつ誰がどこで何をしているか」をひとつ残らず記録しているんです。

そのデータ集めのために通常の何倍もの人が動員されているのです。

それは習近平政権になってからかなりきつくなったと言われています。私が初めて中国を訪れた2007年には中国人のツアーに参加しても身分証など求められませんでした。中国人と偽って参加できたぐらいですからホテルや観光地にも情報はいっていなかったはず。

さらに2017年の頭ぐらいからは各省でバスの長距離移動でも荷物や身分チェック、時には指紋などたった1時間のバス移動でも全ての行程をこなさなければならなくなりました。

もちろん前科者や過去の行いなどに「問題あり」と刻印された人は電車だけでなくバスのチケットも買えなくなります。(社会信用システム

 

でもなぜそんな細かい事までいちいち把握したがるの?

理由の一つは中国政府が年々相当に疑い深くなっており(裏でもバレたらやばい事いろいろしてるんでしょう)、誰も何も信用できないからじゃないかな。国民に対しては本当に中国政府の思う通りに行動しているのか、微々たる信用や信頼も持っていないどころか常に疑っている。そのため何でも監視しなければ気が済まないし、バカな国民たちにはあれこれと正しい行いをするよう”指示”しなければならない。逆らえないという存在感も見せつけておかなければならない。という考えがあるんでしょう。

もちろん外国人も対象です。わが中国の国民たちに革命分子的なことを吹き込まないか、またスパイでないか、中国国内で変な動きをしないかなど常に疑っている。

それが結果的にあんな(意味のなさそうな)検査の数や警察官の増員につながっている感じを受けます。

 

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・赤外線を使った荷物検査だらけ。

日常的なのは地下鉄ですね。地下鉄は中国では比較的大都市と呼ばれる街にしかないですが(桂林レベルでもまだ地下鉄がないよ!)、荷物検査の状況はそれぞれの場所で少しずつ異なっています。上海では小さなバッグなどは赤外線を通す必要がないし、セキュリティー要員が「荷物を降ろして」と通せんぼしても無理やり通り抜ける人も多々いる。

でも深圳の地下鉄ではもう武器といえるぐらいの形の棒を持った人が目立つ場所に待機していて、逆らえば暴力を想像してしまうレベル。チェックもとても厳しく、液体の中身を調べる機械まであり、その違いには驚きました。

また長距離列車の止まる各駅にはチケット売り場に入る前や駅の入り口、または待合室に入る前などいろんな場所で荷物のチェックが行われます。バスの駅でも。とにかく乗り物に乗るたび、または公共の建物に入るたびに荷物検査を受けると思って間違っていない。ということはおびただしい数の荷物検査場所があり、おびただしい人数がセキュリティ要員として雇用されているということ。

でもね。これこそ中国!と思う事。

暇なときにでも荷物チェックのセキュリティー要員を観察してほしい。あの人たちがどれだけ真剣に画面を見ているかを。

目が閉じていたり、隣の人と世間話中だったり、赤いランプがついていても無視だったり。散々である。結果誰も真剣に荷物など見ていないのです。検査結果が大事なのではなく建前で「検査を行う事」だけが大事なのです。

そもそも空港レベルの最新機器でのチェックや専門的な人材をあんな大量の場所に置けるはずがない。地下鉄なんてピーク時には混雑しすぎるため簡単に通されてしまうし(少なくとも上海では)あんな状態で荷物検査をしてになんの意義があるのか。

誰もが思ってるでしょう。

それでもあんなに大々的にあちこちで荷物検査を行う理由はこれでしょう。国民に「ここまでやってる我が国は安全だ」と感じさせるため。そして暗黙の脅し。逆らうと怖いぞ、という。国の存在感や権威をあちこちで見せつける目的。その証拠に多くのセキュリティ要員達は黑や紺、時には迷彩柄といった威圧感たっぷりの正装で仕事をしている。その割には立ってるだけの人も多いんだけど。

そんな見せかけの大芝居をセキュリティー要員や警察などを通して、また多大なコストをかけて大々的に行っている国なんだなと。その滑稽な状態を私は検査大劇場と呼んでいます。

 

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ちなみに中国の検査大劇場は習政権になってから、徐々に目に見える形で厳しくなっているそうです。私は上海に住んでいた3ヶ月は地下鉄の荷物検査ぐらいだったので、いつもめんどくさいなーぐらいしか感じていませんでしたが、中国各地を旅行した時は非常に不便さを感じました。

だって人も荷物も一人一人検査するってことはとにかく並んだり待ったりする時間が相当にかかるんです。切符を買うのにもいちいち身分証を渡して名前とナンバーを登録されるだけで行列ができたりするのに。切符を買うというなんら普通に思っていたことが思った以上に大変だったりしました。

その他、驚いた大劇場は柳江駅。電車降りて駅を出た途端に大量の警察どころか特警までが武器を持ってズラッと並び、到着した客に目を配っていました。(地元の人々にとってあの光景は普通らしい)あそこまでの威嚇は流石にやりすぎだと思いました。独裁国家や軍事国家ってこーいう感じなんだろうな。柳江に行ったことのある人はどう感じたのだろう・・。

そして中国を旅行したことのあるみなさんもこんな思いをしながら旅行していたの・・・?とちょっとビックリした新たな発見でした。