日本人とドイツ人の歴史認識の違い


8月15日は終戦記念日なのでちょっと日本人の歴史認識について仲間だった敗戦国のドイツ人と比較してみましょう。

――――――――――――――――――

みなさんは731部隊ってご存じですか?

そして日本の731部隊が中国で行った虐殺行為ととナチスドイツがアウシュビッツで行った虐殺行為がよく比較に上がることもご存じでしょうか。731の方がアウシュビッツより悲惨だったと考える研究者もいます。

――――――――――――――――――

私は中学校、高校の修学旅行で広島、長崎、沖縄(ひめゆりの塔)と第二次世界大戦と深く関係のある代表的な場所に行きました。そのためか戦争といえば「原爆」というイメージがあります。

実際に写真も見て涙したし、被爆者の方からのお話なども聞いた。千羽鶴もたくさんおったし、現場ではある変わった先生の提案で「ダイイン」という行為もしました。だから印象深いんだと思います。戦争にも負けたし「世界で唯一核を落とされた被害国のニッポン」という思いが強かった。

ゼロ戦とかのエピソードにはやるせない思いでいっぱいになり、大人になって百田尚樹氏の永遠の0を読んだときはボロ泣きしました。母への手紙とかももうたまらない。火垂るの墓は泣けて最後まで見れません。ほっとけば次々と例が出てきます。そういう戦時中の可哀想な日本人の姿を伝える資料が日本には大量にある。

では日本人以外はどう思ってるのでしょう?

海外に出て10年以上たつ私は、今まで色々な国の友だちから日本の戦争の歴史について聞かれたり意見を聞いたり討論したりしてきました。私が20代~30代前半の事なので、ここで挙げる外国人もだいたい同じ世代だと思ってください(年代によってだいぶ違うので)。ここではその過程で気になった重要な以下の2点のみあげます。

・「神風」について、ネタにして笑う人がけっこういる。

・「原爆」のキーワードが出ても日本に同情してる人はいない。

あなたが日本人なら神風を冗談でもネタになんてできないだろう。ほぼ無駄死にながら国のために死んで行ったたくさんの若い命です。20年間大阪に住んでても一度もきいたことがありません。

でも、外国人の神風の認識って「洗脳された自爆テロ軍団」なんです。なんなら更に「アホな」とつくレベルかもしれない。日本を出れば誰一人この出来事に同情なんてしていない。

たとえばドイツ人たちとボードゲームで遊んでいる中で自爆行為をする時など「カミカゼ~!!」とか言って大げさに捨て駒を動かす。それを見てみんなが「アハハハ、ほんとにカミカゼそっくりだ!」「カミカゼまじ無能~!」とかって笑う。(ちなみに”シンプウ”と呼ぶ人はほぼゼロ)

日本人(私)の様子を見ながら気を遣うそぶりは見せてくれますが。私はというと、少し胸がざわつくもののその場に合わせて笑っています。だって彼らがなぜそう思うのか理解できるから。

神風特攻隊の戦士について「なぜあんなことができたのか?」とか「拒否はできなかったのか?」とか真面目に聞いてくる人もいます。そこから読める感情はもちろん同情ではなく好奇心と「なぜ日本人はあんなバカげた行為ができるのだろう」という疑問。

大学時代の友だちはその好奇心から”神風は命令だったのか?志願だったのか?”というもう何千回も討論の的にあがっている問題について論文まで書いていました。

ある行為について「そんなことしたらカミカゼになるぞ」とたとえ話に使われることも多いです。(私が日本人だからかもしれませんが)

原爆も外国人にとって「核戦争は絶対起こってはいけない」との戒めにはなっているようですが「日本は被害国」とは決して思われていない。だって彼らが日本が外国に対して行った数々の侵略行為を知らないわけがない。中には侵略された歴史を持つ国の人もいますから。

 

 

どれほど大きな溝が日本と海外の歴史認識の間にあるのでしょうか。中には日本の侵略行為や南京大虐殺がなかったとか主張してる人も日本国内にはたくさんいます。そういう主張をする人たちは「祖国びいき」を超えて陰謀論者の域に入っている可能性も大きい。(あの時の写真は実は日本の軍服を着た中国人だったのだ!とかいう信じられない主張も多い)
「侵略」という言い方を「当時中国は“国家”ではなかったから、国際法の観点から侵略はいえない」と主張する日本人の偉い人もいます。しかしこれは言い方の問題であり、日本軍が様々な国に勝手に行って資源を取ったり現地の人々を苦しめたのは間違いのない事実。
そして世界での認識は第二次世界大戦が終わるまでの日本は明らかな「加害国」であり「敗戦国」です。

 

では同じ加害国で敗戦国としてよく比較に上がるドイツの対応を見てみましょう。

ドイツではメディアから「ナチスばあさん(Nazi Grandma)」と呼ばれている女性がいます。なんと今年90歳。彼女はアウシュビッツでの虐待は行われなかったと主張しつづけて実刑をうけ、2015年から拘留されています(Ursula Haverbeck)。最近もうろ覚えですがベルリンの国会議事堂の前で右手を上げる禁止行為をやめなかった中国人観光客が拘束されました。あまりにも日本と異なる処置ですよね。

もちろんドイツは言論の自由があります。基本的には根拠を示せばどんな意見を言ってもいい。それでもアウシュビッツの有無を問う議論や意見を持つこと、またナチスを連想させる行為は法律で罰せられるんです。言論の自由を抑えてでもここだけはまかり通せない、という態度なんです。

ナチスばあさんを始めとする極右の実刑がその例です。彼女らは革命なんて起こしてないし、被害者がいるわけでもない、ただ意見を主張しただけ。それでも罰せられる。それほど明白であった事実をドイツは徹底的に認めています。ここが日本とドイツの態度が全く異なるところなんです。ところが日本なんて知事レベルの人が「日本の侵略行為はなかった」とかって堂々と発言できるレベル。なんなのこれ?

ドイツ人は日本で中学生にあたる年齢から高校にかけてアウシュビッツについて徹底的に叩き込まれます。その方法は

・時代の流れ。どんな経緯がアウシュビッツでの残虐行為につながったのか。

・アウシュビッツで実際に行われた行為の数々。

・どんな範囲や規模で、誰に対して行われたか。

つまり原因と事実関係を徹底的に知ること、それについて徹底的に考えることに重きを置いているそうです。そのために映像や書物、証言者などありとあらゆるものが用意されています。また、プレゼンやレポートとして一人一人が自分で調べ発表、報告、議論する行為を経てほとんどのドイツ人が大人になる頃にはアウシュビッツは「ドイツの恥」として心にしっかり刻印されている。私たち外国人がアウシュビッツに対して認識している事実、またはそれ以上に彼らはアウシュビッツについて詳しく知っています。

興味がある人はドイツ人に一度聞いてみればいい。あなたに悪意さえなければ隠すことなく普通に恥の歴史として語ってくれると思うから。「なにそれ?知らないよ?」なんていう人はいないし、「うちの国はそんな残酷なことしてないよ?」という人もいない。

 

つまり主に日本は第二次世界大戦の自分たちを被害国として教育し、ドイツは「加害国」として教育している。日本は一時期、めちゃめちゃ強くて侵略行為に燃えて現地人を殺しまくってたんですよ。残虐行為も間違いなく多数しているし証拠もある。日本は必死で隠しているけど世界には博物館もある。

なのに日本人はドヤ顔で「中国はなんでこんなに時がたってるのに戦争の責任問題を問う?」「慰安婦?あれは合意でしょ?」「南京大虐殺とかよー知らんし興味もない」「731って何?」「中国も韓国も文句ばっかでヤな国」とか主張する人多いんじゃないかな。

確かに中国も韓国も日本の行為を国民の支持を得るために政治利用したりそんな側面はある。日本だって賠償行為は(政治家の間でお金だけで)しっかり行っている。でも、これで「終わった」ことにはなっていない。

なぜかというと、当事者が罰せられていないことや、首脳陣が謝罪するといった象徴的態度をとらないこと、反省がないこと、そしてなにより日本国民の無知無関心、日本人が被害国として教育されていることなどが日本は「事実に目をそむけている」といった印象につながっているからです。

これは当事者の子孫などからしたら気絶するほど腹ただしいことだと思います。時がたったとはいえ加害国である日本人が「証拠を一生懸命隠ぺいしようとしている」事に加え、現代の日本人が原爆を落とされたことばかりを強調し、加害行為については「何も知らない」「何も学んでいない」「むしろなかったと主張する」という方向性に。やった方はすぐ忘れるけどやられた方はずっと覚えてるもんですよね。

 

日本の加害行為について「忘れましょう」「なかったことにしましょう」的な後世に伝えもしない傲慢な、そして無知を装う態度、それ以上に証拠隠滅をはかり口をとざす。どれだけ被害国にとって後味の悪いことか。

先ほど731部隊とアウシュビッツが比較される要因のひとつに、非常に残虐な人体実験を行っていた事実があります。アウシュビッツに関わったナチスの人々は事実確認された全員が裁かれました。もちろん死刑も。

しかしアウシュビッツと同等程度な残虐行為を繰り返した731部隊の日本人は誰一人裁かれていないんです。それどころか大金をもらったり、はなばなしく昇進したりしてる。731部隊のナンバー2で医者でもあった北野政次など、同じく中枢メンバーだった内藤良一とともに大手医薬品メーカーのミドリ十字を創立。人体実験の主導者たちが。それがなんで戦後に裁かれずにしかも医薬品作っているのでしょう。なぜ輝かしい経歴の中を歩ける環境にあるのでしょう。

こういう日本の態度が加害事実を軽くみすぎているんです。

これが私たちの国の「なかったことにしよう」精神です。被害国にとったらあまりにもやるせないです。

私たちは無知のままではだめです。数々の資料の中から”自分なりに根拠立てて事実を認識する”ことが第一歩。ドイツ人のやるように日本人の恥ずべき行為も学ばなきゃいけない。

「731の事実はなかった」と主張する人々にはそれなりに調べて根拠も持っている人もいます。でもね。その人たちって日本人の書いた日本語の、それも都合の良い資料しか読んでないのでは?中国語や少なくとも英語の文献も読んだ上でそう主張する?

そして被害者と関係のある中国人を目の前にして「日本はしてないよ、それ中国のでっちあげだよ」と説得できる?731も含めた約14年間にも及ぶ日本の侵略行為を、「日本はなんら虐殺行為とかしてないヨ」と堂々と言える根拠はどこにある?

以前、ある中華系ドイツ人の友達に「日本も中国にした行為は認めなければならないよね」 といわれて胸がざわつきましたが認めるためには「知る」行為が必須で、その“知る”ところからして問題アリアリの日本が浮き彫りになっているのを感じます。もちろん私も含めて。

もっと勉強しよう。

日本を出ると日本では気づくことのできない事実を目にします。

f:id:nanapupst:20180816014341j:plain

こんなん見たらショックじゃない?私はショックだったよ。