おたがい動詞 Reziproke Verben【ドイツ語文法35-2】


最初に3つの文をドイツ語に訳してみましょう。

指定の動詞を使ってください。正しく訳せるでしょうか?

1.うちらもう知り合って長いよね。(kennen)

2.リザとアリーナはよく会ってる。(sehen)

3.君らどこで知り合ったん?(kennenlernen)

日常でも使う場面がよくありそうですよね。

 

こう訳した人はいませんでしょうか?

1.×Wir kennen schon seit Langem.

2.×Lisa und Alina sehen oft.

3.×Wo habt ihr kennengelernt?

これらの文は日本語を直訳した感じですが不正解です。なぜなら文に四格がないから。

kennen, sehen, kennenlernenはいずれも四格支配の動詞ですから、四格がないと成り立ちません。

 

正解はこうです。

Wir kennen uns seit Langem.

うちらもう知り合って長いよな。

Lisa und Alina sehen sich oft.

リザとアリーナはよく会ってる。

Wo habt ihr euch kennengelernt?

君らどこで知り合ったん?

そう、再帰代名詞が入るのだ!

日本語からしたらめっちゃ無駄な気がしますが、ドイツ語は文法ファースト。

四格をとる動詞なら必ず四格がいる。意味はすでに分かっていても。

なので四格目的語として、それぞれuns, sich, euchを入れれば意味を変えずに文法も満たしました。

めでたしめでたし。

 

・・・んー?

ちょっとまてよ、鋭い人ならもう気づいたはず。

動詞はそれぞれkennenとsehenとkennenlernenだよね。これってそもそも再帰動詞やっけ?

私もkennenlernenをあんなにきっちり解説したのに「再帰動詞」とは一言も言っていません。

なんで?

じゃあ再帰動詞じゃないの?

いやいや再帰代名詞入ってるのに再帰動詞じゃないとか意味がわかりません。

 

そうなんです。

kennenとかsehenは一般的には再帰動詞と言われてませんが、ある一定の条件を満たせば再帰動詞になる、という動詞なのです。このような動詞は日常動詞の中でゴロゴロと転がっています。

実はhelfenもそうなのです。helfenは四格がつかないし(再帰動詞はそもそも四格支配の動詞の一部です)、再帰動詞とは程遠い気がします。でも再帰代名詞をつけることができるのです。(Wir helfen uns.)

そもそも日本語は再帰代名詞という文法がないので、ドイツ語を学ぶときは特に「こうなるときは再帰動詞」「こうなるときは再帰動詞じゃない」みたいなカテゴリー化を頭で整理しておかないと間違いまくってしまいます。

今回は、条件によって再帰動詞になったりならなかったりするsehen, kennenなどを含む

「おたがい動詞」

という動詞のカテゴリー化を頭の中でする気持ちで、以下読んで勉強していただければと思います。

 

今回はちょっとあやふやな再帰動詞の中の文法なので、その前に基礎的な再帰動詞の知識が必要です。

↓本物の再帰動詞や偽物の再帰動詞などを理解した後でこのページを先に進んでください。

再帰動詞と再帰代名詞 -Reflexive Verben und Pronomen- 【ドイツ語文法35】

☆☆

 

前置きが長くなりました。

おたがい動詞。

ドイツ語ではちゃんと名前があってReziproke Verbenといいます。

 

Reziprokは「お互いに」という意味です。

たとえば

Lisa ist die Freundin von Alina. Alina ist die Freundin von Lisa. Sie sind Freunde.
リザはアリーナの友達です。アリーナはリザの友達です。この人たちは友達です。

この文はReziprokといいます。なぜならお互いに友達だから。

 

ここではこのReziprokの動詞バージョンを勉強します。

最初にあげたkennenやsehenやkennenlernenはおたがい動詞(Reziproke Verben)になることができます。

そしておたがい動詞は、条件がそろった時だけ再帰動詞になることができます。

その条件とは

1.再帰代名詞があること。またはeinanderに書き換えられること。

2.主語が複数形であること。

3.2人以上で「お互いに」作用しあっている時のみ。2人一緒に別の物事に向いている時は違う

です。

1と2は明確として、3はどういう意味でしょう。

図で理解しましょう。

↓これは矢印を見ると分かるようにお互いに作用しあっています。

↑この文にあるkennenはおたがい動詞です。なぜなら亀は犬と知り合いで、犬も亀と知り合いなので、この人たちは知り合いです。

 

次の図を見てみましょう。

↓これは2人が同じ場所から別の対象にを向いています。つまり矢印はお互いに作用していません。

 

 

↑この図のkennenlernenは複数形という条件は満たしていますが、再帰代名詞がない上に亀と犬がお互いに作用しあっていません。なのでkennenlernenはこの文ではおたがい動詞ではありません。

☆☆

 

意味と使い方が理解できたでしょうか。

それでは次。

私はおたがい動詞を使い方により2種類に分類しています。

(考え方によっては3種類やもっと多数などさまざまですが、私は2つに分類するのがもっとも分かりやすいと思うので理由とともに解説します。

一つ目は偽物のおたがい動詞

二つ目は本物のおたがい動詞

です。

 

一つ目は先ほどの3つの条件がそろった時のみ再帰動詞になる動詞。

たとえば

sehen(会う)

kennen(知っている)

kennenlernen(知り合う)

anrufen(電話をかける)

begrüßen(挨拶する)

verstehen(気が合う)

lieben(愛する)

umarmen(ハグする)

küssen(キスする)

hassen(嫌う)

schlagen(殴る)

respektieren(尊敬する)

などの動詞です。

どれも私たちがドイツ語学習者が習う再帰動詞の文法のところでは出てこないはずです。

これらはすべて四格がつく動詞で、一格と四格に別の人物が入ることができますね。でも、複数形で再帰代名詞が入った場合はおたがい動詞になります。

そして、もう一つ重要なこと。

これらの動詞に入れる再帰代名詞はeinanderとの書き換えが可能です。

 

例文をどうぞ

1)Wir sehen uns jeden Tag in der Schule.

2)Sie kennen sich seit vielen Jahren.

3)Wir haben uns vor einem Monat kennengelernt.

4)Wir rufen uns jeden Abend an.

5)Lukas und Luka verstehen sich sehr gut.

6)Europäer umarmen sich zum Abschied.

7)Sie hassen sich nicht, aber sie mögen uns auch nicht.

8)Ihr müsst euch mehr respektieren.

 

四格はすべてeinanderに書き換えが可能です。意味は全く変わりません。

Wir sehen einander jeden Tag in der Schule. 

Sie kennen einander seit vielen Jahren.

Wir haben einander vor einem Monat kennengelernt.

Wir rufen einander jeden Abend an.

Lukas und Luka verstehen einander sehr gut.

Europäer umarmen einander zum Abschied.

Sie hassen einander nicht, aber sie mögen einander auch nicht.

Ihr müsst einander mehr respektieren.

 

日本語訳の例

1)私ら毎日学校で顔合わせてるよね。

2)あの人たちは長年お互いを知ってる。

3)私たちは1か月前に知り合ったよ。

4)毎晩電話をかけあってます。

5)ルーカスとルカがとても仲がいい。

6)ヨーロッパ人は別れ際にハグします。

7)あの人たちは憎み合ってはないけど好んでもない。

8)あんたらもっとお互いを尊重せなあかんやん。

 

 

それでは二つ目。本物のおたがい動詞。

これは再帰動詞の文法の中でも本物として出て来る動詞たちです。これらの一部がおたがい再帰動詞になることができます。

たとえば

sich anfreunden(友達になる)

sich verabreden(約束する)

sich trennen(別れる)

sich einigen(同意する)

sich verkrachen(仲たがいする)

sich verfeinden(敵対する)

sich verheiraten(結婚する)

このへんの再帰動詞。

 

例文をどうぞ。

1)Wir haben uns schnell angefreundet.

2)Habt ihr euch im Café verabredet?

3)Nach vielen Jahren haben sie sich getrennt.

4)Wir einigen uns auf einen Kompromiss.

5)Nach dem Streit haben sie sich richtig verkrachtet.

6)Sie haben sich wegen einer Kleinigkeit verfeindet.

 

日本語訳の例

1)私たちはすぐに友達になった。

2)君らカフェで会う約束した?

3)あの人たちは長年の後別れた。

4)私たちは妥協案に合意します。

5)けんかの後あの人らは険悪になった。

6)あの人らはしょーもないことから敵対した。

 

このグループで注意なのは、おたがい動詞になれない再帰動詞もあるということです。

たとえば

sich freuen über A/auf A

Wir freuen uns auf den Urlaub.

=私たちは休暇を楽しみにしている。

これはおたがい動詞ではありません。

なぜ?複数形だし再帰代名詞があるし。しかしこの文は例の条件の3つ目を満たしていないのです。

お互いがお互いをむいているのではなく、先ほどの亀と犬の図でいうと後者です。

二人で同じ方向を見ており、その先には「休暇」がある。だから相互関係ではないのです。

☆☆

 

まとめ

ということで今回は「おたがい動詞」について解説してみました。

復習すると、おたがい動詞は再帰代名詞が入ってるけど再帰動詞とはいえないという、文法的には非常にややこしい所にいる動詞です。

お互い動詞になる条件は3つあります。

1.再帰代名詞があること。またはeinanderに書き換えられること。

2.主語が複数形であること。

3.2人以上で「お互いに」作用しあっている時のみ。2人一緒に別の物事に向いている時は違う

 

さらにおたがい動詞を2種類に分けました。

1.偽物のおたがい動詞(einanderに書き換え可能)

2.本物のおたがい動詞(einanderに書き換え不可能)

このように文法的に説明するととてもややこしくなりがちですが、覚えたり使ったりするときはこんなややこしいこと覚える必要ありません。

一つ一つの動詞についてしっかりと知識があれば分類なんかどうでもよく、正しく使うことができます。

要は自分なりに理解し、正しく使えればどのような覚え方でもいいのです。

今回の私の説明で混乱した!どうしてくれる!と思った方は別の方向からこれらの動詞を使えるようになって下さい。

 

ちなみに最後にhelfenとbegegnenもおたがい動詞です。

どちらも三格を取りますので

Wir helfen uns.

Wir begegnen uns.

unsはどちらも三格の再帰代名詞になります。

これらは3つの条件をちゃんと満たしており、また日常でもよく使うおたがい動詞です。

上に挙げた動詞以外にも状況によってはおたがい動詞になるものもたくさんあります。

とにかく3つの条件を満たせばすべておたがい動詞!

ということで終わり。

 

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参考:https://www.deutschplus.net/pages/Reziproke_Verben