再帰動詞と再帰代名詞 -Reflexive Verben und Pronomen- 【ドイツ語文法35】


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再帰動詞(Reflexive Verben)とは何でしょうか?

再帰動詞は四格支配の動詞の一種です

ではどのような動詞なのでしょう?

 

再帰動詞とは

再帰動詞とは、

・主語で一度出てきた人(人称)をもう一度目的語に戻らせることのできる動詞

文法的に言い換えれば

・再帰代名詞を目的語にもつ動詞

ということができます。

 

再帰代名詞って何?という前にひとつ、再帰動詞の例を見てみましょう。

例)Ich setze mich.(私は座る)

この例は動詞setzen(座らせる)の前後にich(主語)とmich(目的語)という2つの人称代名詞がついています。

主語と目的語に同一人物を付けれる動詞(「私」の一格”ich”と四格“mich”)のことを再帰動詞というのです。

意味的に見ると「私は私自身を座らせる」が直訳です。つまり日本語でいうと「私は座る」ということに他なりません。

目的語michをつけずにIch setze.と言ってしまうと「私は座らせる」という奇妙な文になり、文法的に間違いです。

 

では再帰代名詞とは何でしょう?

再帰代名詞とは、再帰動詞の目的語として使える人称代名詞のことです。先ほどの例でいうと“mich”が再帰代名詞です。

ふつうの人称代名詞と再帰代名詞の大きな違いは、目的語が主語と同一人物かどうか、です。

別の人物:
Er setzt sie.(彼は彼女を座らせる。)

同一人物:
Wir setzen uns.(私たちは座る。)

人称代名詞のほうは主語が「彼」、目的語は「彼女」という二人の人物です。再帰代名詞は主語も目的語も同一の「私たち」ですね。

さらに、再帰代名詞は人称代名詞と形が異なるものがあります。

こちらが再帰代名詞の表です。再帰代名詞は目的語なので三格、または四格のみです。

人称代名詞(一格) 再帰代名詞(三格) 再帰代名詞(四格)
ich mir mich
du dir dich
er, sie, es sich sich
wir uns uns
ihr euch euch
sie sich sich

いかがでしょうか。

もう一度、人称代名詞の三・四格を隣にして比べてみましょう。

人称代名詞(一格) 人称代名詞(三・四格) 再帰代名詞(三・四格)
ich mir, mich mir, mich
du dir, dich dir, dich
er ihm, ihn sich, sich
sie ihr, sie sich, sich
es ihm, es sich, sich
wir uns, uns uns, uns
ihr euch, euch euch, euch
sie ihnen, sie sich, sich

御覧のとおり、三人称だけが再帰代名詞の場合すべてsichという語になります。これは再帰代名詞だけに出てくる単語であるため、辞書には再帰動詞の表記が“sich setzen”となっています。

さっきのsetzen(座らせる)を人称変化させてみると

・Ich setze mich.
(私は座る。)

・Du setzt dich.
(君は座る。)

・Er setzt sich.
(彼は座る。)

・Sie setzt sich.
(彼女は座る。)

・Wir setzen uns.
(私たちは座る。)

・Ihr setzt euch.
(君たちは座る。)

・Sie setzen sich.
(彼らは座る。)

人称代名詞との違いは明確になったでしょうか。

 

文法の形を理解したところで今から実践に入ります。

どんな再帰動詞があるのか、どういう使い方をするのかを見ていきましょう。

 

まず、再帰動詞には本物と偽物の2種類があります。これは動詞が持っている意味を理解することで見分けます。

本物とは、再帰代名詞とのセットで使う再帰動詞のことです。

たとえば動詞freuen(嬉しく思う)は再帰代名詞なしにIch freue.(✖)とは言えません。

Ich freue mich.(楽しみだ)と再帰代名詞をつけて文が成り立つ動詞です。

*「本物の再帰動詞」とはここでは、ほとんどが再帰動詞として使われる動詞のことを指します。ただし100%ではありません。たとえばIch freue mich.はDas freut mich.とも言えたりする。もう少しいえば人が主語になることができる動詞は偽物、人が主語にならない動詞は本物と分類してます。しかしここでは深く言及しません。

 

逆に偽物のほうは、本来は四格支配なんだけど、場合によっては再帰代名詞にもなるという動詞です。

たとえば先ほどのsetzen(座らせる)は

Ich setze ihn auf die Stuhl.
=私は彼を椅子に座らせる。

というように四格目的語と使うこともできれば、

Ich setze mich.
=私は座る。

のように再帰代名詞を使うこともできます。

後者の文の直訳は「私は私を座らせる」ですね。ネイティブ的には動詞の意味の矛盾はありません。

それでは例文とともに具体的な両方の再帰動詞の使い方を見てみましょう。

 

本物の再帰動詞

この動詞がでてきたら再帰代名詞なしでは使えない、という本物の再帰動詞とその例文です。

sich sonnen

=日光浴をする

Im Urlaub möchte ich mich am Strand sonnen.
(バカンスでは浜辺で日光浴をしたいな~。)

Die Katzen sonnen sich auf dem Fensterbrett.
(猫たちが窓の台で太陽の光を浴びている。)

 

sich erkälten

=風邪をひく

Zieh dich warm an, sonst erkältest du dich noch.
(服を着な、でないと風邪ひくよ。)

 

sich beeilen

=急ぐ

Wir müssen uns sehr beeilen, wenn wir den Zug noch kriegen wollen.
(電車に間に合いたかったらめっちゃ急がなきゃ無理だよ。)

Beeil dich doch ein bisschen im Bad. Ich muss noch rein.
(ちょっとお風呂急いでくれる、私も入らなきゃなの。)

 

sich befinden

=いる・ある

Ich befinde mich in Deutschland.
(私はドイツにいます。)

Das Opfer befindet sich im Krankenhaus.
(被害者は病院にいる。)

Die Toiletten befinden sich im Untergeschoss.
(トイレは一階にあります。)

 

sich ausruhen

=休憩する

Ich möchte mich jetzt eine halbe Stunde ausruhen.
(今から30分間休みたい。)

Ich muss jetzt erstmal meine Beine ausruhen.
(先に足を休めなきゃもう無理。)

 

sich freuen

=楽しみにする

Ich freue mich auf deinen Besuch.
(明日来てくれるの楽しみにしてるよ。)

Ich freue mich so auf den Urlaub!
(バカンスがほんと楽しみ!)

 

sich verlaufen

=道に迷う

Hänsel und Gretel haben sich im Wald verlaufen.
(ヘンゼルとグレーテルは森で道に迷った。)

Der Park war so groß, dass man sich darin verlaufen konnte.
(この公園は中で迷ってしまうぐらい広い。)

 

sich irren

=間違える・勘違いする

Ich habe mich geirrt. Das Konzert ist am Sonntag, nicht am Samstag.
(勘違いしてた、ライブは日曜じゃなくて土曜だった。)

Er hat sich in diesem Punkt geirrt.
(この点で彼は間違っていた。)

 

sich verabreden

=約束する・デートする

Wir haben uns verabredet, dass wir uns morgen treffen.
(私たちは明日会う約束をした。)

Wir haben uns für morgen Nachmittag verabredet.
(私たちは明日の午後に会う約束をした。)

 

sich entscheiden

=決める

Ich entscheide mich zum Studium.
(私は大学にいく決心をする。)

Sie hat sich jetzt zum Bleiben entschieden.
(彼女はここに残ることを決めた。)

 

sich konzentrieren

=集中する

Ich konzentriere mich auf die Arbeit.
(私はその仕事に集中する。)

Ich konzentriere mich darauf, keine Fehler zu machen.
(間違えないように集中してやる。)

 

sich ereignen

=起こる・発生する

Gestern hat sich ein Unglück ereignet.
(昨日事故があった。)

Auf dem Heimweg ereignete sich ein Unfall.
(帰り道で事故にあった。)

 

sich erkundigen

=尋ねる・問い合わせる

Sie hat sich nach dir erkundigt.
(彼女が君のこときいてたよ。)

Sie hat sich bei mir erkundigt, wie es dir geht.
(彼女が私に君は元気かときいてたよ。)

 

偽物の再帰動詞

偽物の再帰動詞はさらに大きく2種類に分けます。

一つ目は、四格と再帰代名詞のどちらかを目的語にする動詞です。

Ich wasche meinen Hund.(私は犬を洗う)
は普通の四格支配の動詞です。しかし
Ich wasche mich.(私は体を洗う)
だとwaschenは再帰動詞になりますね。しかし常に再帰動詞として使うわけではないため、偽物の再帰動詞として分類します。

 

二つ目は、すでに完成している文に三格の再帰代名詞をつけるものです。

Ich wasche die Hände.(私は手を洗う)
はすでに四格目的語がつき、完成している文です。ここに
Ich wasche mir die Hände.
という三格の再帰代名詞をつけることができます。そもそもつけてもつけなくてもいいので偽物の再帰代名詞2して分類。

どっちでもいいならつける必要があるのか、という声が聞こえてきそうですが、残念ながらネイティブはよく三格をつけて使っています

少し強調の意味を持つことができるし、完璧に特定できるよう人称代名詞を多用するドイツ語としてはとても自然なんですね。

ちなみに二つ目に属する動詞は必ず一つ目にも属しています。つまり2種類の使い方があるということですね。

それでは1つ目に属する動詞と例文を見ていきましょう。

 

四格OR再帰代名詞

*A=Akkusativ(四格)

ärgern+A

=怒らせる

Warum bellt der Hund? Der Junge hat ihn wieder geärgert.
(なんで犬が吠えてるの?少年が犬をまた怒らせたんだよ。)

Die Musik vom Nachbarn ärgert mich.
(隣の音楽がうるさい。=私を怒らせる)

sich ärgern

=怒る

Wir ärgern uns über den Regen und wurden nass.
(私たちは雨と濡れたことに怒っている。)

ーーーーーーーーー

ändern +A

=Aを変える

Ich ändere fast täglich mein Passwort.
(私はほぼ毎日パスワードを変えている。)

Wir ändern die Pläne. Wir fahren nach Spanien, nicht nach Italien.
(計画を変えましょう。イタリアじゃなくてスペインに行こう。)

sich ändern

=変わる

Unsere Pläne haben sich geändert. Wir fahren nach Spanien, anstatt nach Italien.
(私たちの計画が変わった。イタリアの代わりにスペインに行く。)

Das Wetter ändert sich heute ständig.
(今日は天気がころころ変わる。)

ーーーーーーーーー

legen+A

=Aを置く・寝かせる

Die Mutter legt das Baby ins Bett.
(母が赤ちゃんをベッドに寝かせる。)

Wo habe ich meinen Autoschlüssel gelegt?
(車の鍵どこに置いたっけ?)

sich legen

=寝ころぶ

Ich möchte mich eine Stunde legen.
(1時間横になりたいです。)

Lege dich ruhig schon hin.
(もう寝ときな。)

ーーーーーーーーー

bewegen+A

=動かす

Er bewegte eine Schachfigur auf dem Brett eins vor.

sich bewegen

=動く

Du musst dich mehr bewegen, wenn du abnehmen willst.
(痩せたかったら動かなきゃだよ。)

Die Erde bewegt sich um die Sonne.
(地球は太陽の周りをまわっている。)

ーーーーーーーーー

setzen+A

=Aを座らせる

Ich setze das Kind aufs Sofa.

sich setzen

=座る

Setz dich doch bitte.
(座って、お願い。)

Das Kind hat sich auf dem Stuhl gesetzt.
(子供が椅子の上に座った)

ーーーーーーーー

treffen+A

=(偶然)Aに会う

Gestern habe ich Daniela auf der Straße getroffen.

sich treffen

=約束して会う

Wir können uns vor dem Bahnhof treffen.
(駅の前で会うことにしようか。)

ーーーーーーーー

langweilen+A

=Aを退屈させる

Der Film hat mich total gelangweilt.
(その映画は全くつまらなかった。)

sich langweilen

=退屈する。

Ich habe mich auf der Party gelangweilt.
(パーティーがつまらなかった。)

ーーーーーーー

aufregen+A

=興奮させる・怒らせる

Meine Lügen haben meine Frau aufgeregt.
(僕の嘘が妻を激怒させてしまった。)

sich aufregen

=興奮する・怒る

Warum regst du dich so auf?
(何をそんなに怒ってるの?)

ーーーーーーーーー

anmelden+A

=Aを申請する

Habt ihr eure Kinder schon im Kindergarten angemeldet?
(もう子供を幼稚園に入学申請した?)

sich anmelden

=申請する

Du musst dich anmelden, wenn du neu in eine Stadt ziehst.
(新しい街に引っ越したら住民登録しなきゃだよ。)

 

 

三格再帰代名詞

先ほどのwaschen, schminken, rasieren, anziehen, umdrehen, sehen, putzenのような動詞にすでに四格目的語がついて文が完成しているとき、その文に三格の再帰代名詞をつけてもかまいません。

さらに四格再帰代名詞はつけれないが、ここに属する動詞としてkaufen, bestellen, holenなどがあります。(〇Ich schminke mich. ✖ Ich kaufe mich.)

例)

Ich wasche mir die Hände.
(私は手を洗う。)

Er rasiert sich den Bart.
(彼は髭をそる。)

Putz dir schnell die Zähne.
(早く歯を磨きなさい。)

Wir ziehen uns die Jacke an.
(私たちはジャンバーを着る。)

Sie schminkt sich die Augen.
(彼女は目を化粧する。)

Ich sehe mir einen Film an.
(私は映画を見る。)

Kauft ihr euch Brötchen?
(君たちパン買うの?)

ーーーーーーーーー

今回やったこれらの動詞が基礎的な再帰動詞です。次回は再帰動詞+前置詞の組み合わせを紹介します。さらに意味が複雑になり理解が困難になりますので今のうちにこの基礎を習得しておきましょう↓

再帰動詞の練習問題をやってみる

さらなる応用↓

【中・上級】三格がつく再帰動詞

この文法の解説を動画で聴きながら勉強する↓

次回の文法では同じ再帰動詞でも前置詞がつくと意味が変わる、といったような内容も紹介します。
例)Ich freue mich auf deinen Besuch. (来てくれるの楽しみにしてるね!)
Ich freue mich über dein Geschenk.(君がくれたプレゼント嬉しい。)

次回の文法を見る:再帰動詞と前置詞

 

【応用編】三格をとる再帰動詞の動画↓

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2 コメント

  1. (私は手を洗う)
    Ich wasche die Hände.
    Ich wasche mir die Hände.
    この二つの文を示して、この場合の「mir」について、「そもそも付けなくてもいい、どちらでもいいのだが、ネイティブはよく付ける」というような説明がありますが、元々はそれぞれ別の意味ですよね。
    「mir die Hände」は「自分の手を」ということであり、「die Hände」は「特定の誰かの手を」ということですよね。「ネイティブが mir die Hände をよく使う」と思うのは、(1) 他人の手を洗う状況よりも自分の手を洗う状況が圧倒的に多いから、(2) 「誰かの手」が理屈上は自分の手を指すことも可能だが、このように相手に推測を押し付ける表現を嫌う気質から、ではないでしょうか。また、「Ich wasche meine Hände.」とほとんど言わない理由は、そう言うと、手が自分の体の一部ではなく独立した「物」(その物の所有者が私)のように感じられるからではないでしょうか。

    1. ご意見ありがとうございます。
      おっしゃりたいことはわかります。考え始めるとwaschenに限らずどの文でも突き詰めることができますよね。
      でもまだ基礎文法の段階の人にはドイツ語の考察に限界があることからこのような議論をすることはふさわしくありません。

      日常では
      Ich wasche die Hände.
      Ich wasche mir die Hände.
      は同一の場面でどちらを使っても意味も変わらず差し支えないのでこのように説明をしています。でないと実践で使えないからです。

      あとIch wasche meine Hände.はIch wasche mir die Hände.と同じぐらいよく使いますよ!

 

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