【応用】statt (anstatt) の使い方を完全に理解する:文法別用法【ドイツ語】


statt (anstatt)は意味は基本的に「~の代わりに」なのですが、4つの使い方の違いがあります。

1つ目:statt+二格(前置詞として)

2つ目:und nichtの代わりとして(接続詞として)

3つ目:statt dass +副文(接続詞として)

4つ目:statt…. zu+不定詞(接続詞として)

ここではこの文法的用法を解説します。

 

1.statt+二格(前置詞)

前置詞には格支配があり、後には基本的に名詞または代名詞がつく品詞です。

stattは二格支配。しかしほかの二格支配の前置詞にもれず二格は書面のみで、会話ではほぼ三格が使われます。

例)

Statt der Chips esse ich das Eis.
(チップスの代わりにアイスを食べる。)

・Ich will statt eines Flügels ein E-Piano kaufen.
(グランドピアノの代わりに電気ピアノを買おうと思う。)

・Sie hat ihn statt mir geschrieben.
(彼女は私の代わりに彼に連絡した。)

*会話ではstatt den Chips / statt einem Flügelです。

 

前置詞+二格すべてに共通する注意点:

二格はかならず冠詞とつかなければなりません。つまり前置詞と名詞の間に冠詞(statt eines Flügelsまたはstatt des Flügels)がなければならないのです。

それでは複数形の不定冠詞などゼロ冠詞と一緒に使いたかったらどうすればいいのか?

その時だけは三格になるようです。三格というか、そのまま前置詞の後に名詞を入れるだけで完成します。

例:Anstatt Urlaub bleibe ich zu Hause.
(バカンスのかわりに家で過ごす。)

さらに、statt+人称代名詞の場合も三格になります。なぜなら人称代名詞の二格は性によって形が違うからです。前置詞の後にどの形をつけていいかわかりません。なのでそういうときはstatt mirのように書面でも会話でも三格です。

細々とした面倒なルールに聞こえますが、要は二格で対応しきれないところは全部三格にしちゃえ、ということです。

ちなみにstattは方法の前置詞(Modal Präposition)に属します。詳しくは方法の前置詞についての文法解説をご覧ください。

 

2.und nichtの代わり(接続詞)

これは一応接続詞なのですが、なんとも先ほどの前置詞に似た使い方をします。前者とはっきりと見分けましょう。

前置詞と違うのは、格が関係ないということです。stattの後に一格が来てもなんなら直後に前置詞が来てもオッケーです。

例文を見てみましょう。

・Ich fahre nach links, statt nach rechts.
(私は右に曲がる代わりに左に進んだ。)

↑この文はIch fahre nach links, und nicht nach rechts.のように“und nicht”と置き換えることができます。全く同じ意味です。

逆に先ほど前置詞で出てきた“Statt der Chips esse ich das Eis.”という文を否定するとIch esse das Eis nicht, sondern die Chips.としか言えず、und nichtでは置き換えられません。

・Heute holt dich die Oma statt ich ab.
(今日はおばあちゃんが私の代わりに迎えに行くからね。)

↑この文もund nichtで置き換えると“Heute holt dich die Oma, und nicht ich.”と言えます。statt+一格というなんとも奇妙な形も前置詞ではないことが分かります。

 

・・・とはいえ前置詞のstattも接続詞のstattも表現や単語の順番が違うだけなので、言い方を変えればどんな文でも接続詞になったり前置詞になったりすることはできるということですね。ちなみにネイティブも感覚的には使い分けていますが、違いを説明できる人はドイツ学を学んだ人ぐらいです

 

4.statt dass+副文(接続詞)

これはstatt dassがセットになった形で意味は「~するかわりに」ですね。

・Ich räume mein Zimmer auf, statt dass ich lerne.
(勉強する代わりに部屋を片付ける。)

Anstatt dass du fleißig arbeitest, liegst du immer faul herum.
(キミ、まじめに働く代わりにいつも寝ころんでるねぇ。)

Statt dass wir zusammen arbeiten, interessiert sich jeder nur für sich selbst.
(一緒に作業するかわりにそれぞれが自分でやるほうがいいみたいだ。)

 

 

3.statt… zu+不定詞(接続詞)

先ほどの4番目のstatt dass..で表す文の中で主文と副文の主語が同じならこちらでも使えます。

・Ich räume mein Zimmer auf, statt zu lernen.
(勉強する代わりに部屋を片付ける。)

・Du liegst immer faul herum, anstatt fleißig zu arbeiten.
(キミ、まじめに働く代わりにいつも寝ころんでるねぇ。)

・Ich gehe einkaufen, anstatt Gassi zu gehen.
(私は犬の散歩に行く代わりに買い物に行くよ。)

この文法はよくum…..zu/ohne…zuと一緒にでてくるやつですね。主語が同じときは上の副文よりもこちらのほうが短くて簡潔なので愛用したいところです。

なにも調べてはいない私個人の感覚ですが、2のstattの使い方はなんとなく代わりになる元の単語の格に合わせたほうがしっくりくることから自然に出てきた気がしますね。

文法的には1であったように二格支配です。なので論理的には元の単語が何格であろうと二格になることが正しいのですが、生きたドイツ語の日常会話が徐々に変化している途中なのかも。今はund nichtの代わりのみでしか使えませんが、そのうち元の単語の格をそのままうつしてstattの後につけるように将来、なんている気がしてなりません。

語学も生き物のように常に姿を変えながらさまよっているのですね。

ドイツ語読解一覧
ドイツ語文法一覧
文法練習問題一覧
ドイツ語例文一覧
ドイツ語すべての記事