【ドイツ語文法41】命令形 -Imperativ-


ドイツ語基礎文法一覧

ドイツ語の命令形は日常生活で非常によく使われています。

「命令形」と訊くと、「やれ!」のような命令するというイメージが強く、そんなこと言わへんから勉強しない、無意識でこの文法を排除してる人も多い気がする。

でもたとえば

「ちょっと待って」とか

「これ見て見て」とか

「気をつけて帰りや」とか

「寒いから暖かくしいや」とか

日本語でもしょっちゅう会話で聴いたり言ったりするかと思います。

これはドイツ語では「命令形」という文法で表されます。

 

また外のお店などでも

「こっちに並んでください」とか

「この書類にサインしてください」

「お名前を教えてください」

などと言います。

ドイツ語のこのような表現もすべて命令形の文法で表されます。

つまり命令形は言葉通りの「命令する(強制的にさせる)」という意味ではなく、要求、お願い、助言といった意味でも幅広く使われているんです。

私も毎日命令形を使って人に頼んだりお願いしたりしています。

☆☆

 

ドイツ語の命令形は3つの特徴があります。

・2人称のみ

→ドイツ語の2人称はdu, sie, ihrの三種類。

・動詞が最初に来る

→疑問文と同じ形。ハテナがつかない。

・一部の動詞に変化形がある

→duの動詞の形だけが変わる。

 

それではdu, sie, ihrの命令形をそれぞれ細かく見てみましょう。

*命令形の文法は動詞の現在人称変化の応用です。現在人称変化をまだ覚えていない方はそちらから先に勉強することをおすすめします。

動詞の現在人称変化【文法2】

 

 

duの命令形

まずはduの動詞の現在人称変化をさらっと復習してみましょう。

規則動詞

動詞の原形 二人称単数(du)
kaufen du kaufst
fragen du fragst
arbeiten du arbeitest
tanzen du tanzt
anrufen du rufst an

不規則動詞

動詞の原形 二人称単数(du)
fahren du fährst
tragen du trägst
sprechen du sprichst
geben du gibst
lesen du liest

見ての通り、動詞の現在人称変化には規則動詞と不規則動詞があります。規則動詞は-stがつきます(少しの例外は緑色の動詞:語幹の最後にtがつく動詞は-est、また語幹の最後にs, z, ßがつく動詞は-t)。

不規則動詞は3種類あり、a→äの形(ピンク)、e→iの形(オレンジ)、e→ieの形(青)があります。

 

続いて命令形の形です。

規則動詞

二人称単数(du) duの命令形
du kaufst kauf
du fragst frag
du arbeitest arbeit
du tanzt tanz
du rufst an ruf an

不規則動詞

二人称単数(du) duの命令形
du fährst fahr
du trägst trag
du sprichst sprich
du gibst gib
du liest lies

つまりduの命令形の基本は

-stが消滅

duが消滅

の2つ。

また例外として形が変わるのが不規則動詞のa→ä型。

命令形になるとäが消滅します。

du fährst →fahr

du trägst →trag

du schläfst →schlaf

 

それではよく日常で使われる例をいくつか挙げてみます。

単発ではなく、命令形+mal, bitte, nichtなどと一緒に使われることも多いです。

・Wart mal
(ちょっとまって)

・Wart kurz
(ちょっとまって)

・Guck mal das.
(ちょっとこれ見て)

・Guck mal hier.
(ちょっとここ見て)

・Sag mal
(言って言って)

・Pass mal auf.
(気を付けて)

・Trink viel Wasser.
(水たくさん飲んでね)

・Schlaf gut
(おやすみ)

・Komm gut nach Hause
(気をつけて帰ってね)

・Hilf mir bitte
(手伝ってほしい)

・Ruf mich später an.
(後で電話して)

・Mach dir keine Sorgen.
(心配しないで)

・Trink nicht mehr.
(もうそれ以上飲むな)

・Macht’s gut.
(頑張って)

・Zieh dich warm an.
(あったかくしいや)

・Vergiss das bitte nicht.
(それ忘れないでよ)

・Halt Klappe.
(黙れ)

 

また、命令形の最後に-eをつける言い方もあります。よりフォーマルに聴こえる言い方です。

・Warte mal

・Trinke viel Wasser

・Schlafe gut

・Komme gut nach Hause

・Rufe mich später an

・Mache dir keine Sorgen

・Trinke nicht mehr

・Ziehe dich warm an.

・Halte Klappe

ただ、全ての命令形に-eをつけるとフォーマルに聴こえるかというとそうではなく、やはりよく使う言い方と使わない言い方があります。

たとえばGucke malやHilfe mirはまず言いません。

そのへんの細かい感覚や違和感などはネイティブの表現を聴いて徐々に養っていきましょう。

 

 

ihrの命令形

こちらもまずihrの動詞の現在人称変化をさらっと復習してみましょう。
ihrはどの動詞にも不規則な変化がなく、すべて規則的です。

動詞の原形 二人称単数(ihr)
kaufen ihr kauft
fragen ihr fragt
arbeiten ihr arbeitet
tanzen ihr tanzt
anrufen ihr ruft an
fahren ihr fahrt
tragen ihr tragt
sprechen ihr sprecht
geben ihr gebt
lesen ihr lest

 

続いて命令形の形を見てみましょう。

二人称単数(ihr) 命令形
kaufen kauft
fragen fragt
arbeiten arbeitet
tanzen tanzt
anrufen ruft an
fahren fahrt
tragen tragt
sprechen sprecht
geben gebt
lesen lest

命令形の作り方は、ihrが消滅するだけです。

 

先ほどの日常表現のihrバージョンはこちらです。

・Wartet mal
(ちょっとまって)

・Wartet kurz
(ちょっとまって)

・Guckt mal das
(ちょっとこれ見て)

・Guckt mal hier
(ちょっとここ見て)

・Sagt mal
(言って言って)

・Passt mal auf
(気を付けて)

・Trinkt viel Wasser
(水たくさん飲んでね)

・Schlaft gut
(おやすみ)

・Kommt gut nach Hause
(気をつけて帰ってね)

・Helft mir bitte
(手伝ってほしい)

・Ruft mich später an
(後で電話して)

・Macht euch keine Sorgen
(心配しないで)

・Trinkt nicht mehr
(もうそれ以上飲むな)

・Zieht euch warm an.
(あったかくしいや)

・Haltet Klappe
(黙れ)

二人称複数での命令形も、相手が2人以上であれば自動的に使われるので覚えておきましょう。

 

 

Sieの命令形

Sieの命令形の形は疑問文と同じです。

通常文:

Sie geben mir ein Kilo Bananen.

(あなたは1キロのバナナを私にくれます。)

命令文:

Geben Sie mir bitte ein Kilo Bananen.

(1キロバナナを下さい。)

疑問文の場合は最後に?マークがつきますが、命令文の場合は最後に何もつかないことが特徴です。

さらに命令文といえど敬称の2人称Sieを使っている時点で相手に敬意を表した丁寧な言葉になっているので、bitteと一緒に使われることが多いです。

 

更なる例文:

Rauchen Sie hier bitte nicht.

=ここでたばこを吸わないでください。

 

Fahren Sie mich bitte zum Bahnhof.

=駅まで行ってください。(タクシーの運転手に言うシチュエーション)

 

Schnallen Sie sich bitte an.

=シートベルトを締めてください。

 

Hören Sie mir bitte zu.

=よく聴いてください。

 

Rufen Sie mich bitte später an.

=後でお電話ください。

 

Desinfizieren Sie bitte die Hände.

=手を消毒してください。

いかがでしょうか。

日常的にもよく使われる表現がほとんどではないでしょうか。

知らない人対し(お客さんなど)お願いをするときは頻繁に命令形+bitteが用いられます。

 

 

seinとhabenの命令形

動詞seinとhabenの命令形は例外的な変化をします。

du, ihr, Sieそれぞれの変化形の表がこちらです。

二人称 sein haben
du sei hab / habe
ihr seid habt
Sie seien haben

duの変化形は通常、それぞれbist (sein), hast (haben)になりますが、命令形だとseiとhabという形に変化します。

またSieも通常のsind (sein)ではなく、seienという独特の形に変化します。

ihrは通常の人称変化と同じ形です。

それではどのように使うのか、日常でよく使われる例を見てみましょう。

 

「静かに!」

・Sei ruhig!

・Seid ruhig!

・Seien Sie bitte ruhig.

 

「気を付けて!」

・Sei vorsichtig!

・Seid vorsichtig!

・Seien Sie bitte vorsichtig!

 

「心配しないで」

・Hab keine Angst.

・Habt keine Angst.

・Haben Sie bitte keine Angst.

特にduとihrは主語が抜けているので不完全な文のような違和感が最初はあるかもしれませんが、命令形はそういう形です。

使っていると慣れてきます。

 

 

【応用】命令形と心態詞

また最後に、命令形は人に何かを命令したりお願いしたり提案したりする言い方であるため、伝え方やニュアンスがとても大事になってきます。

ネイティブが命令形を使うときはbitteのような、心態詞(Modalpartikeln)と一緒に使うことが大半です。

心態詞とは、文法に影響は一切なくまた書面では出てこない語です。

口語表現にだけ出てくる語で、細かいニュアンスを伝える有効な表現です。

たとえば

ja, wohl, aber, doch, denn, eh, eben, halt, mal, schon,,,,などまだまだたくさんの語があります。

ここでは命令形とよく使われる語を5~6つ紹介します。

mal: Guck mal das Foto, die Katze ist so goldig!

=ちょっとこの写真見て、めっちゃ可愛い猫!
(malはちょっと。warte mal「ちょっとまって」などもよく言う。)

 

doch: Fahr doch etwas langsamer, wir haben noch genug Zeit.

=もっとゆっくり走ろうよ、まだまだ時間あるから。
(dochは強調。)

 

einfach: Ruf mich einfach an. Ich bin immer bereit, dir zu helfen.

=気軽に電話してね、いつでも手伝うよ。
(einfachは気軽に、気にせずといった思いやりを感じる)

 

ruhig: Mach ruhig deine Sachen. Das macht mir nichts aus.

=自分のことやっていいよ、気にしてないから。
(ruhigはニュアンスを和らげるかんじ)

 

ja / bloß: Räum bloß sofort dein Zimmer auf!

=まじですぐに部屋片づけて!
(ja, broßは強い強調。脅しに似た強調。)

*einfachやruhigのように形容詞として意味のある語もありますが、ここではあくまで心態詞としての意味なので、形容詞の意味はありません。

さらに心態詞は、文や背景に応じてニュアンスがころころ変わる特徴も持つので、ここに出したものはほんの一例にすぎません。

これらを使いこなすのはネイティブはいつどのように使っているかを十分に聴いて吸収する必要があります。

命令形の練習問題をやってみる。

命令形の動画解説はこちら↓

さらなる例文↓

 

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