「最近」のドイツ語を正しく使おう。
「最近」という日本語はとても広範囲で使えて便利な表現だと日本語に詳しいドイツ人の友人はいいます。
なぜならドイツ語では日本語のもつ「最近」の意味は状況によっていくつかの単語に使い分けられるからです。
たとえば
「最近腰が痛いんだよ」
「最近の若者は礼儀がなっていない」
「最近スマホ買い換えたんだ」
「最近日本語が下手になった気がする」
これらの文をドイツ語にするとすべて、ふさわしい「最近」の単語が違います。
いちばん日本語の「最近」に似た意味で使われるドイツ語はneulichでしょう。
しかしこれはオーストリアなどのある地域では、意味は通じるが違和感があるほど使われておらず、またドイツの中でも全く使わないというネイティブも少なくありません。
逆によく使うネイティブもいます。ちなみに私の周り(ヘッセン州)ではよく使われており、私もよくneulichを使っています。
なので人によって大きく感覚が異なる語であり、一般的とは少し言いにくいかもしれません。
ここでは一般的にドイツで広く使われている「最近」の単語バリエーションを紹介します。
まず日本語の「最近」は過去形と現在進行形の両方に使うことが出来ます。
たとえば
1)最近この本を読んだ。
2)最近たくさん本を読んでいる。
両方とも「最近」を使って違和感ないです。
この2つをドイツ語に変換してみると
1)Vor Kurzem habe ich das Buch gelesen.
2)Seit Kurzem lese ich viele Bücher.
過去には“vor Kurzem”、そして進行形には“seit Kurzem”を使います。
直訳は前置詞vor(前)+kurz(短い)=「少し前」
そして前置詞seit(前から)+kurz(短し)「少し前から」
という意味です。
ちなみに2つの文にneulichを使ってもなんら問題ではありません。
1)Neulich habe ich das Buch gelesen.
2)Neulich lese ich viele Bücher.
neulichのほうもどちらの時制にも使えるので、日本語の「最近」の意味に一番違いといえます。
vor Kurzem と seit Kurzem は時間の長さ的にはここ1~2週間以内の出来事を指します。これ以上長くなると別の単語を使うことが一般的です(後で解説)
それではこれらの例文を少し見てみましょう。
・Vor Kurzem ist mein Computer kaputt gegangen.
=最近コンピュータが壊れてしまった。
・Ich habe erst vor Kurzem einen Studienplatz an einer Uni bekommen.
=最近、やっと大学に受かったんだ。
・Vor Kurzem bin ich vollständig geimpft worden.
=最近2回ワクチン接種したよ。
・Vor kurzem haben die Taliban Afghanistan erobert.
=最近タリバンがアフガニスタンを支配した。
・Seit Kurzem habe ich viel zu tun.
=最近やることいっぱいある。
・Seit Kurzem macht mir das Lernen Spaß.
=最近ドイツ語の勉強が楽しい。
・Seit Kurzem habe ich Rückenschmerzen.
=最近腰が痛い。(数日前~2週間ぐらい前から)
・Seit Kurzem fahre ich mit dem Fahrrad zur Arbeit.
=最近自転車で仕事行ってるんだ。
これらの例文は直近1~2週間ぐらいまでの出来事だと先ほども言いました。
それではそれよりも少し長い期間、1か月ぐらい前、また月単位の前からだと何を使えばいいでしょう?
たとえば
「最近日本語が下手になったんだよ~。」
これは3日前からや1週間前からの直近というよりはもう少し長いスパンでしょう。
この文の「最近」はドイツ語ではin letzter Zeitがふさわしいです。
・In letzter Zeit ist mein Japanisch schlechter geworden.
といいます。
この文はneulichでもギリギリいける感じですが、自然なのはやはりin letzter Zeitでしょう。
この語はneulichと同じで過去でも現在進行形でも使えます。
・In letzter Zeit habe ich Rückenschmerzen.
=最近腰が痛い(約2週間以上前~数か月前から)
・In letzter Zeit macht mir das Lernen Spaß.
=最近勉強が面白い。
最後の単語です。
日本人の学習者がよく「最近」の意味で使うのを耳にするのがheutzutageです。
なぜこの語を使うのかと訊いてみると、参考書に書いてあるのだそう。
確かに日本語では「最近」と訳すこともできますが、この単語は「最近私は~をした/している」には使えません。
数十年、数百年単位の長いスパン、そして主に時代の流れなど客観的な事柄に一般的に使われます。
たとえば、昔から代々年配の人たちが同じように使うこの文
「最近の若者はどんどん無礼になる」
この「最近」はここ1年2年の話ではなく、数十年前と比べての話なので、
・Heutzutage sind junge Leute unhöflicher.
がふさわしいです。
日本語では「今日(こんにち)」がしっくりくるかもしれません。
他にheutzutageがふさわしい例文としては
・Heutzutage benutzt man eher Smartphones als das Festnetztelefon.
=今日では固定電話よりスマホのほうが使われている。
・Heutzutage wird Beethoven immer noch aufgeführt.
=ベートーベンは今日、なお演奏されている。
・Wir leben heutzutage in einer Medienwelt.
=私たちは今日、メディアの世界に生きている。
↑このように客観的、または一般的な事柄に使われるheutzutageですが、個人的なことには使えるのかというと例えば50歳ぐらいの人が
「昔バイオリンちょっと弾いてたけど今は全然弾けない」
つまり10歳ぐらいのときには少し弾けたけど50歳の今は全然弾けない、と言う意味でこの文を言ったとしたら、数十年のスパンがあるので文法的には
△ Ich habe früher etwas Geige gespielt, aber heutzutage kann ich das gar nicht mehr.
と言うことは文法的には正しく、なんら問題はありません。
ただこれは個人的なことなので、より違和感のない言い方は
Ich habe früher etwas Geige gespielt, aber mittlerweile kann ich das gar nicht mehr.
とまたまた新しい単語mittlerweileを使うことが自然です。
・・・このように、よりふさわしい語をたどっていくと、文によって本当に使われる語が違い、エンドレスの闇にはまっていきます。
これが言語の醍醐味でもありますが、今回はこのへんで区切ってまとめておきましょう。
☆☆☆
「最近」のまとめ
・直近~2週間以内の過去の出来事:
vor Kurzem/neulich
・直近~2週間以内からの現在進行形の出来事:
seit Kurzem/neulich
・2週間~数か月以内の出来事(過去&現在):
in letzter Zeit/neulich
・数十年~数百年スパンの出来事(客観的なこと):
heutzutage
*これらは日本語ではすべて「最近」と表現できますが、ドイツ語では時間のスパン、または客観的・主観的事柄の「最近」の表現が少し細かく分かれているということです。
いちばん広範囲で使えるのはneulichなので、私はこの単語を好んでいますが、一般的ではないのが苦しいですね。
そして日本語の「最近」がどれだけ便利な語か、日本語母語者のみなさんも実感されたのでは?
動画解説はこちら↓
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