人称代名詞manって何?【ドイツ語基礎文法11ー1】
ドイツ語のmanは人称代名詞に属します。
Darf man hier rauchen?=ここでたばこを吸ってもいいですか?
のような使い方をします。
ここでいう日本語での「タバコを吸う人」は特定の人を指していません。一般的に誰でもタバコを吸っていいのか?と訊いていますね。
このような時、日本語では上の文のように主語を省略することができます。しかしドイツ語では主語を省略することができないため、manという不特定の人を指す人称代名詞が存在するわけです。
つまりmanを使うと、誰のことを指しているのかを曖昧にすることができるのですね。
特定の「あなた」や「私」を使わずに一般的な人のことを言いたいときに便利です。またほかにふさわしい場面としては、主語が重要でないとき、また客観的に表現したいときに有効です。
ちなみにmanは人の場合だけ、人以外のときはesです。
ドイツ語の人称代名詞は文法的に一人称、二人称、三人称プラス単数形と複数形の合計6つに分かれますね。manはこの6つのどこに属すのでしょう?
文法的には三人称の単数形に属します。er, sie, esのグループですね。つまりmanが主語になる文の動詞は三人称単数形の変化をします。
しかしこの6つの人称代名詞とmanにはアクセントで大きな違いがあります。
普通の人称代名詞の場合はアクセントをつけることができますが、manは不特定のため、アクセントをつけることが出来ません。
次の2つの文はアクセントがつく位置が異なります。
Ich kann das schaffen.
=私は成し遂げれる
Man kann das schaffen.
=成し遂げれる
耳で聴くとこの違いは明白で、manにアクセントをつけるのはおかしいので注意を。
またドイツ語を始めたばかりの人が戸惑いやすいのは“der Mann”と“man”の違いですね。
これは発音だけは同じに聴こえますが、意味も機能も全く違う2つの単語です。
特にリスニングの時にはどっちを言っているのか最初はわからないでしょう。
重要なのは、der Mann(その男性は)は名詞でman(人は)は代名詞なので、名詞のほうには必ず冠詞がついていることです。der, ein, mein, dein…など。
なので前になんらかの冠詞がついていなければ代名詞のmanと解釈しましょう。
さらに、manは三人称単数形をとる代名詞なので他の代名詞と同じように、格変化があります。格変化の形は↓
一格:man
三格:einem
四格:einen
です。二格はありません。
例文)
一格:Man darf hier nicht parken.
=ここに駐車してはいけません。
三格:Das macht einem bestimmt Spaß.
=これはきっと楽しいはずだ。
四格:Der Stress macht einen krank.
=ストレスは病気のもとになる。
不定冠詞の三格や四格と間違えやすいですが、名詞の前につく冠詞と違い代名詞は一つで独立しているので、後ろに名詞がついているかいないかが見分ける鍵ですね。
次に、単数形か複数形かの問題です。
不特定ではあるものの対象にしている人が複数形の場合はどうするの?
代名詞manは形はいつでも単数形ですが、複数形の意味も含みます。
たとえば
「日本では挨拶のときにお辞儀をする」
という文。
これは一般的な日本人のことなので、意味は複数形です。しかし不特定なので
〇 In Japan macht man beim Treffen eine Verbeugung.
✖ In Japan machen man beim Treffen einen Verbeugung.
と言うことが出来ます。
「この単語ってドイツ語でなんていうの?」
この文も、意味は一般的なドイツ人はこの単語をどう言っているのか?と問うており、複数形ですが、manで表します。
〇 Wie sagt man das auf Deutsch?
✖ Wie sagen man das auf Deutsch?
また一人称・二人称の意味をもつ文も不特定であればすべて三人称manでOKです。
非常に便利ですね。
たとえば先ほどの
「ここでたばこを吸ってもいいですか?」
Darf man hier rauchen?
の意味は、私または私たちがタバコを吸っていいか訊いています。
=Darf ich hier rauchen? / Dürfen wir hier rauchen?
と同じ意味ですね。
それでも私や私たちを使わず、不特定にして言うこともでき、そしてそのときはいつでも三人称でmanを使うということです。少し自分と距離を置いて客観的に表現する感じですね。
また、manを使うときに文法的に重要なことは、一度文の中で不特定のmanを使ったら、その文は終わるまでずっとmanで通すということです。そしてmanの所有冠詞はseinです。
たとえば
〇 Man muss sich gut vorbereiten, dann hat man gute Chancen.
✖ Man muss sich gut vorbereiten, dann hat er gute Chancen.
(ちゃんと準備したらチャンスが巡ってくる。)
ーーーーーー
〇 Wenn man Gesundheitsprobleme hat, sollte man zum Arzt gehen.
✖ Wenn man Gesundheitsprobleme hat, sollte sie zum Arzt gehen.
(もし健康を損ねていたら医者に行ったほうがいい。)
ーーーーーーー
〇 Man hat keine Zeit für seine Kinder.
✖ Man hat keine Zeit für ihre Kinder.
(子供と過ごす時間がない)
このように、不特定のmanを使うとこの文はすべて不特定になります。
それではいくつか例文を見てみましょう。主語が不特定で重要ではないので、他の単語が最初に来ていることも多いですね。
・In Deutschland trinkt man gern Bier.
=ドイツではよくビールが飲まれている。
・Wie spricht man das Wort aus?
=この単語どう発音するの?
・Das darf man nicht tun.
=これはやったらあかんでしょ。
・Nach der Operation soll man einen Tag lang nichts essen.
=手術のあとは1日食べてはいけない。
・Im Moment sollte man draußen besser eine Maske anziehen.
=今は外ではマスクをつけた方がいいよ。
・Wenn man Spaß hat, merkt man kaum, wie die Zeit vergeht.
=楽しいときは時間が過ぎてることに気づかないよね。
・Man muss hier Hunde an die Leine nehmen.
=ここでは犬にひもをつけなければならない。
・Ein Fahrschullehrer sagt: “Man erwirbt hier keinen Führerschein, sondern einen Waffenschein.”
=ある教習所の先生は「ここでは運転免許証を獲得するんじゃなくて、武器許可証をもらうんだ。」と言う。
・Man braucht andere Leute, die auf einen aufpassen.
= 気にかけてくれる他の人が必要だ。
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