インプットとアウトプット1:欧米と東アジアの教育方針の違い【勉強法】


インプットとアウトプットは学習方法の概念として使われることが今は一般的になっています。

コンピューター用語ではインプット(入力)、アウトプット(出力)という意味ですが、
学習ではインプット(情報や知識の取り込み・吸収)、アウトプット(自分の中にあるものを出すこと、表現すること)だといえます。

しかし動画やインターネットを見たり、話を聴いたりしていると
日本人のインプット×アウトプットの考え方と、欧米人の考え方は180%異なることに気づきます。

そして、双方の学習方法のベースとなっているのが学校教育です。

今回は、あらかた共通している学校教育の方針を東アジア(日、韓、中、台)と欧米(米、英、独、仏など)に分けて比較してみます。
そのあと、インプットとアウトプットとはいったいなんなのか、もう一度考えてみたいと思います。

まず東アジアから。この4つの国の教育方針は少々の違いはありますがあらかた共通しています。私立の学校では多種多様な教育が展開されているでしょうが、ここではおもに国の方針(=公立)にある共通点に注目します。
ここではおもにインプットを授業、アウトプットをテストとし、特徴をみていきます。

まず東アジア型から。

インプット教育の特徴は

・教科書を読む。

・先生の話を聴く。

・黒板の文字を写す。

・暗記・暗唱をする。

・復習をする。

これらのことが授業と宿題によって保たれています。

インプットの情報源は全学年の全教科で配られる教科書がほとんどです。それ以外の資料はあまり提供されません。

私は90~2000年代にかけて日本で学校教育を受けましたが、「ノートをいかにきれいに書いたか。字がきれいか」ということが小学校でも中学校でも重要視されていました。字にこだわるのは中国でも同じです。漢字文化と関係がある気もしますね。

ノートの内容といえば、先生が黒板に書いた文字を一字一句完璧に写し、色まで完全にコピーしたものです。さらに、学期の終わりにはそのノートを提出し、評価までされていました。

みなさんはどうでしたか?あれから20年以上たっているので、もしかしたら今はここまでではないかもしれません。

ではテストはどうだったか?

アウトプット教育の特徴は

・記憶力を確かめる筆記テストがある。(問題数が多い)

これに尽きます。「記憶力を確かめる」と前おきしたのは、テスト方式が穴埋め、マークシート、4択などの「覚えていることを正しい問の下に回答することができる」という方針だからです。

また、読書感想文などはアウトプット教育とも言えますが、1年に1回あるかないかの頻度では教育の方針とはとてもいえません。

また、韓国はプレゼンテーションを授業でやる高校も多いようですね。

それでは欧米型の教育方針の特徴を見てみましょう。

インプット教育の特徴は

・本や資料を読む。

・先生の話を聴く。

・ノートは個々で書きとる。(先生は黒板に全部書かない)

・特定のテーマについて課題をもらう。

まずインプットの情報源はさまざまです。
国語など教科書を使う授業もありますが、プリントや資料、本、いろいろなものを使って授業されるのが特徴です。

また、先生は黒板に書くことより話すことを重視します。話すというのは生徒にどんどん質問し答えさせる対話形式であることも多いです。ドイツの小学校の授業などを見ていると、生徒が座ったまま一度も発言せず終えるという授業は極端に少ないといえるでしょう。

アウトプット教育の特徴は

・ディスカッション

・プレゼンテーション

・記述式テスト(問題数が少ない)

・口述テスト

ディスカッションとプレゼンテーションはテストではなく授業の一部であることも多いですが、人前で話す、自分の意見を言う、人の意見を聴く、わかりやすく伝える、といったアウトプットのトレーニングといえます。

ここでは、中国とドイツの筆記テストの方法の違いを実際に見てみましょう。

どちらも12~13歳用の歴史の筆記テストの1枚目です。

中国のほうは、答えを4つの中から選ぶ選択肢問題。ドイツのほうは全部書かせる記述式です。

このテスト内容で一目瞭然であるように、アジアは「記憶を正しく出せているか」を試しているのに対し、欧米は「記憶したものをどう整理し表現するか、何を重要視し何を捨てるか」といった思考能力を試しています。

ちなみにドイツでは12歳ですでに学校のレベル分けがされており、4つのレベルがあります。
レベルが高いほど記述式は多くなります。ドイツのレベル別、学年別のテスト内容はこちらで全部見れます(ドイツ語)

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さて、アジア型と欧米型を比べて言えることは

アジア型はインプットが9割、アウトプットが1割。これでもだいぶ気をつかった言い方で、実際は

インプット9.8割、アウトプット0.2割

ぐらいだと思われます。中学・高校では年に6回の筆記テストがあるとすれば、机に座ってノートをとっている時間はどれぐらいあるか?と考えるとインプットの多さに改めてぞっとするほどです。

逆に欧米型の割合は、インプット6割、アウトプット4割、程度ではないかなと考えられます。

しかし。

 

 

よく考えて。

 

 

欧米型のアウトプットは、プレゼンテーション・記述式テスト・口述テストなどがあります。
これは、インプットだけではできません。

先ほどのドイツの歴史のテストを見てもそうですが、問題をピンポイントに予測し、長い文をあらかじめ作って暗記しておくことは不可能です。テスト中に、頭で考えて重要な部分や捨てる部分を判断し、自分の言葉で書かなければならないのです。

つまり、欧米式の試験にはインプットとアウトプットの間に思考という大事なカテゴリーがあります。

インプットしたものを頭の中でこねくりまわして=思考してはじめて、自分の言葉で、自分の表現でアウトプットができるのです。
プレゼンテーションというのも欧米では、書いてきたものをそのまま読み上げるなどという行為ではありません。「自分の言葉で」相手に伝えることが基本です。

欧米の教育はこの思考能力を発達させることを中心に評価をしているのです。

つまりここまでをまとめると

・東アジアにとってインプットとは記憶

・欧米にとってインプットとは思考の素材

・東アジアにとってアウトプットとは記憶の確認

・欧米にとってアウトプットとは思考能力の判定

という考え方の違いがあることがわかります。

この違いは、どちらがいい悪いでも正しい間違いでもなく、どちらがレベル高い低いでもありません。あくまで客観的な事実確認です。どちらを好むかは人それぞれですし、勉強分野によってどちらのほうがやりやすいという違いがあるはずです。

ただ、ここから言えることはアジア型の教育はインプットアウトプットのバランスがかなり極端になっているということです。

ネットや本でアウトプットが大事だ!と主張し、それに共感する人が後を絶たないのは、この教育方針に異を唱えているともいえるでしょう。

仮に欧米で、アウトプットが大事だ!などという本を出しても「なに今さらそんなこといってんの?」「なんでそんな偏ってるの?アウトプットもインプットも同じく大事でしょ」と見向きもされないと思われます。

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しかしインプットとアウトプットの対極のみで考えるのは、とても浅い考えです。

さらにいうとアウトプットのほうが大事だ!という主張は、日本で教育を受けた私には言わんとすることは分かりますが、あまりにも甘いです。

宮森ハヤトさんという人物を一度見てください:プロフィール

この方は悲しいまでにインプットがなく、からっぽのままアウトプットをひたすらしてしまった典型例です。
アウトプットが大事だと信じ続け、インプットを大事にせずに行動するとこのような結果になってしまいます。
この方は人柄のよさであったりネットでの売り方であったりコネであったり別の良いところもたくさん持っており、少なくとも一時的には成功しています。
ただ、知的生産という方面での成長はアウトプットのみでは得られないというよい例です。(唯一の例外はモーツァルト)

しかし当然生き方は人それぞれで、どんな考え方・行動がしっくりくるかもそれぞれの自由。正しいも間違いもありません。
宮森ハヤトさんは(無自覚だとは思いますが)ひたすらアウトプットの生き方を世間に向かって広げているわけで、それも一つの明確な意思表示ではあります。

それも踏まえて、先ほどのアジア型と欧米型の考え方に戻りましょう。

両者の方法で勉強をするときのメリットとデメリットについて考えてみます。

簡単にいえば記憶力をメインにした勉強と、思考力をメインにした勉強です。

アジア型の勉強法
メリット
・ラクで時間がかからない
・必ず答えがある

デメリット
・洗脳されやすい
・表現力がのびない

欧米型の勉強法
メリット
・意見を持てる
・伝え方が洗練される

デメリット
・エネルギーと時間がかかる
・答えが1つまたはそもそも答えが出るとは限らない

これを見ると日本の勉強の方法として、記憶・暗記・短期学習・速読・集中力などに重点をおいたアドバイスがなぜあんなにも多く、また支持されているのかが理解できますね。

多く記憶するためには時間との戦いであり、効率よく覚えることを重視するとどうしてもそうなってしまいがちです。

逆に欧米の勉強法で、記憶・暗記が良いと主張する人はアジアに比べ、極端に少ないです。
欧米人は少なくともアジア人の考えるような記憶する行為を全く重要視していないのです。

なぜなら思考は、効率的にしようと思ってできるものではないからです。
高等教育機関ではプレゼンテーションのテーマが決定した後には十分な準備の時間が与えられ、その間に最低1回は個人的に講師の部屋を訪ね、テーマについて議論や足りないところを話し合わなければなりません。

そんな教育を受けてきた欧米人が大事にするものは記憶力ではなく、伝え方であったり思考から出てきたアイデアであったりします。

アジア型の勉強は数をやるという意味では苦しいものですが、欧米型の勉強は考えがまとまらない、どれを取ってどれを捨てるかといった答えが決して出ないものにたいして考える、またはアイデアがまとまるまでその時を「待つ」といった別の種類の苦しさがつきまといます。

日本で高校までアジア型の教育を受け、ドイツの大学で欧米型の教育を受けた私の個人的な意見では、後者の苦しさのほうが圧倒的に大きかったです。

長くなりすぎたので3回に分けて記事を更新します。


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