【中国】社会信用システムは社会に浸透してる?中国のサイト「百度」を徘徊調査してみた。No.1
中国にいたとき、驚いたことがありました。
2018年7月に広州で会った中国の友達に社会信用システムの点数を持っているのか聞いてみたところ、彼女はその制度の存在すら知らないと言ったのです。
彼女は22歳で普通の大学生。社会信用システムは、2014年から各地で徐々に試行されているものの各省で進度が違い、広州では2018年時点でまだ試行されていなかったようです。
それにしても政府の社会信用システム適用宣言&配布から4年たった今の時点で、その存在すら知らない中国人がいる、しかも中国第三の都市に住む大学生が知らない、ということには驚きました。
きっと人口の半分以上の人が知らないのでは?
そこから中国の最大検索サイト「百度」はどれほど社会信用システムについての情報を国民に公開しているのか?どんなことを公開していて何を公開していないのか?気になったので徘徊してみました。
1.社会信用システムを簡単にまとめると
2014年から中国政府が進めている社会信用システム(社会信用体系)。約6年間、各地で試行錯誤の上、2020年の完全制度化を目指しています。
簡単に言えば各国民が点数を持ち、何かの基準に基づいて「良い行い」をした場合は加点、「悪い行い」をした場合は減点されていく制度。
その点数が良ければ色々な場面で優遇され、悪ければ逆に制限を受ける。
中国が一党独裁というのは周知の事実です。しかし、党中央がすべての政策を決めているのではなく、その下にある省も、政策の上で強い自治権を持っています。
つまり大まかな方向は政府が決定するものの、社会信用システムは細かい基準については各省で違ってくるという感じです。
で、各省の加点と原点の基準は?
どこの地域で何をしたら加点され、何をしたら罰せられるのか?
海外のサイトにはいろいろと出ているのですが、肝心の中国国民が見る中国のサイトはどうなっているのか謎なので調べてみました。
2.中国政府の表向き方向性
2014年6月に政府が配布した社会信用システムの概要全文はこちら(社会信用体系建设规划纲要)に出ています。
ここでは目的を「誠意の推奨と信用レベルを上げるため1」としており、とくに「政治、経済、社会への誠実さを強化する」と、とくに国民の「誠実さ」を求めた改革であると強調されています。
つまり誠実な行動をとるものが信用=点数を獲得すると。
そして国が求める「信用性」を獲得すると優遇が、反すると罰則が与えられる。1。
しかしこの2014年の概要には具体的な基準とは何なのかといったことには触れておらず、「法を守って行動する」「品のある教育をする」など非常にあいまいな表現しか使われていません。(というか読む気も失せるダラダラ文書)
そして、「社会行用体系 上海」のように自治体を入れて中国最大検索サイト「百度」で探しても、見る限りでは具体的な基準リストのようなものが出てきません。
つまり大学生の彼女をはじめ、知らない人は「今から個人に点数が与えられますー。」みたいな感じでどこかから言われ、突然社会信用システムに組み込まれて始まるのだろうと予測されます。
いや、それすら言われてない可能性も!?
3.中国人のためのネット情報
中国の最大検索サイト「百度」で「社会信用体系」で検索すると、1ページ目に一つだけ、具体例が少しのっているサイトがありました。
加点減点の基準ではないが、社会信用を失った人(失信被执行人)にはどのような罰則があるのか、という内容。
如果你是一个失信被执行人,你就很难成为公职人员,没法从事很多行业,基本上只能做做小生意、打打工了,即使有钱也没法高消费。其他严重失信人被联合惩戒后的境况也类似。作为一个自然人,最明智的策略就是安分守己,珍视自己的信用、积攒自己的人品,不碰那些严重失信的高压线,别成为“失信被执行人”或“严重失信人”,“诚信是金”已不是修辞,而是严格的字面意思。2
社会信用度を失った人は
・公務員の職には就けない
・事業を展開したりできない
・お金があっても消費を制限される
・その後頑張って点数を回復しても状況は同じまま
だから自分の信用度を大事にしろ、自分の気品を整えろ、賢く行動をしろ、くれぐれも信用を失った人になるな、信用度はカネでは買えないぞと呼びかけています。
「優遇」ではなく「罰則」のみを強調しているところが、そしてこのサイトが検索2番目に持ってこられているのが、この制度の別の目的を無言で物語っているようにも見えます。
3.興味のない中国国民とブラックボックス化
中国の国民は政治の話題を出しません。言論の自由がないのであえて議論もしないし、政府任せるというスタンスです。社会信用システムについても何も言いません。
私は2018年上海に4か月間いましたが、会社の中でも外でもたったの一度もこの制度について中国人が話題に出したことはありませんでした。
さらに2019年1月、台湾に交換留学に来ていた中国人数名にも社会信用システムについて聞いてみましたが、なんとなく知ってはいるけど細かいことはよくわからない、という回答でした。
もちろん各自、点数を持ってることは持ってるそうです。濁している可能性もありますが、本当に興味がないような人がほとんどでした。「自分は留学をしたので加点されるかも。ほっとけば上がる」と根拠なく言う子もいました。
それに中国人同士でもそれぞれ戸籍のある地域が違うので、つまり別々の社会信用システムに従っているようなので、私はずいぶん長い時間、彼らと一緒に行動したにもかかわらず、中国人同士で社会信用システムについて話題が出ることが一度もありませんでした。(仕方なく自分から聞いた)
中国を除く外野の世界は、この制度に対してわーわー騒いでいるけど、当の国民は本当にどこ吹く風。どうでもよくて、興味がないことなのだと認識しました。というより、情報がなく、目にみえるわけでもなく、データ上のみで自動で始まるので何の実感もないのかもしれません。
このように、ほとんどの国民がいまいちよくわからずに点数を持ち始めているのではないかと感じます。
そして13億人の行動一人ひとりに、人間の判断で加点か減点か点数をつけるなんてまぁ無理ですから、監視カメラやAIが判断するのだとも容易に想像できます。
つまり「何をしたら加点、何をしたら減点」といった具体的なことは中国国民、ほとんどの人が知らないのでは???
そして本人も知らない間に監視カメラの映像でなんらかの行動が判断され、自分の点数が上がったり下がったりしているのではないでしょうか。
社会信用システムの加点と原点の基準は現時点ではブラックボックス。
と言えます。
4.社会信用システムはどのように実行されているのか?
社会信用システムはある日突然、お上から交付されるお触れによって始まるらしい。
2018年5月1日。山西太原駅で乗客が切符のチェックを受けていたとき、突然、中国国家発展改革委員第8部門が公布した「信用度を失った人の乗車を制限する」というものが実行されました。
2018年7月。河北省衡水市桃城区法院が管轄内の7つの中学校へ向かってお触れを出しました。信用を失った人リストに載っている人の子供は学費が高くなり、高校への入学も制限されるというものです。つまり社会信用システムは個人ではなく、家族(特に子供)にも影響する。
さらに、23名の信用を失ったリストに入っている人たちは、子供に制限がかかるのを避けるため140万元あまりの罰金を払ったとまで書いてあります。1
5.罰則が強調されている
中国のサイトを見ていて目立つのが、「優遇」よりも「罰則」に対する情報のほうが多いということ。中国の国民が見てもいいサイトは全て政府が管理しているので、つまり社会信用システムはこっちが本質で間違いない。
なんと信用を失った人(失信被执行人)のリストが常にネットで流れているのです。名前、身分証番号、所属企業までさらされています。
さらに、「验证码」というところに言われた文字を打ち込んで、リストの誰かの名前を押すと、さらなる情報が出てきます。
これだけの情報が出てくる。
ここでは自分の情報も家族の情報も検索できます。何をした覚えもないのに、念のために検索したら信用を失ったリストに乗ってた!なんてこともザラにあるみたい。
しかしどんな行為をして信用を失ったのか、という具体的な内容はここでは濁されています。というかその情報は書かれていません。どんな罰を受けたのか、という内容は記されていますが。
でもこのサイトは全国法院なので、社会信用システムの始まる前から、もしかしたら法に違反する罪を犯したいわゆる犯罪者=「信用を失った人」という肩書が使われているのかもしれない。だって裁判って書いてるもんね。
でもでも、もしもAIによって行為を摘発されたのだとしたら、AIは一体どれぐらい正確にアジア系13億人の監視カメラの顔を識別できるのだろう・・・・。
6.信用を失った人リスト(失信被执行人)が受ける罰則の内容
2016年に政府が公布した关于建立完善守信联合激励和失信联合惩戒制度加快推进社会诚信建设的指导意见の中に、信用を失ったリストに載った人に対する処置(罰則)内容が書かれています。
簡単にまとめると、11項目の制限を受けるらしい。
1)事業に関する制限(株を発行できなくなるなど)
2)補助金の制限
3)職務資格の制限
4)食品や薬品業界へ入ることの制限
5)栄誉を受けることへの制限
6)不動産などの取引制限
7)消費の制限(私立中学入学や列車に乗るなど)
8)出国の制限
9)日常監視の強化
10)刑事罰の増大
11)その他の方面の制限3
そ、その他!?
その他って何!?
たった2サイト見ただけでこんな膨大な量になったので次回につづく。