肺がんステージIVから9年生存中の女性を考察。本当に奇跡の人なのか?【闘病ブログ】
・2010年8月、突然の肺がんステージIV告知。
・骨転移のしこりから発覚、その時点で余命半年の告知。
・当時37歳。
・関西出身シングルマザー。発覚時8歳の子供。
・1年後、肺に再発。拳大の大きさになり危険な状態。
・手術なし、放射線なし、標準治療の抗がん剤のみで2019年7月現在も元気に生存されている奇跡の女性。
(ブログ「上を向いて歩こう!肺がんステージ4あやこブログ☆」より)
現在も、ずっと原発近くに腫瘍かもわからない程度(4ミリほど)の何かがあるそうだが、肉眼では見えない状態を何年も維持している。
現在も4~5週に1度、抗がん剤アリムタを打ち続けており、その数は2019年8月時点でもうすぐ90回に届きそうだという。
この女性は本当に幸運が重なっただけの奇跡の女性なのだろうか?
それとも予後が厳しい肺がんステージIVの中、彼女自身に長期生存の要因があったのだろうか?
あるとしたら何だったのか?
その答えを探すべく、彼女の一般に公開している日記を読んで考察してみたところ、自分なりの結論が出ました。
結果から言うと、彼女は少しの運はもっていた。でも奇跡的に助かったのではない、助かる要因も十分に持っていた、と思うのです。
なぜか?
運の部分はブログを読めばすぐにわかりますが、ここでは運以外の、助かる要因のほうに焦点をあてて考えてみました。
以下、彼女のブログを情報源に、あくまで個人的な意見を書いていきます。
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まず長期生存の最大の要因は圧倒的な基礎体力。
これは癌になってから「今まで運動足りてなかった、今日から10キロ歩くぞ」とスタートする程度でつく体力ではなく、長年にわたってスポーツを真面目にしてきた人が持つ身体の基礎体力や筋肉のたぐいのもの。
この方の職業はスポーツのコーチであるという。
しかも数年の指導で全国大会に出れるほどの指導力の持ち主だというから、長年の競技生活を通して、相当精通していると思われる。
最初私は、肺がんを伴ったということは口呼吸をする水泳かなと思ったが違うようだ。
身バレを恐れて競技の名前は伏せられてはいますが、ところどころの情報で
・息子も同じスポーツをしている
・足首の怪我
・体育館
・個人と団体がある
などというキーワードが出てくる。
そこから消去法で推測すると、最もありえそうなのはバトミントンか卓球。または柔道、剣道、レスリングのような武術系。
でも重要なのは競技の種類ではない。
大事なのはどの競技も持続性と、高度な体力づくりや筋力づくりが求められるものであるということだ。
つまり、彼女も遅くとも中学生のころには部活を通して、日常的に一日数時間程度の運動をしていた可能性が高い。その頃から基礎体力をきっちり作っていたと考えられる。
同じ歳でも、プロのスポーツ選手と一般人の身体の状態は比べ物にならないほどの差であるのは明らかです。
そして義務教育の頃から基礎体力を養い、いくつになっても持続的にスポーツをする習慣のある人とそうでない人の身体の違いを想像するのもそんなに困難ではないと思う。
全体の98%ぐらいの人は、後者だろうとも容易に推測できる。
彼女はつまり、マイノリティーなほうの2%だったのだ。ほとんどの進行がん患者が亡くなってしまう中で、助かった最大の要因だと思います。
他の方が書く闘病ブログには「もともと貧血気味である」とか「血管が細すぎて・・」とか「冷え性」といった記述をよく見ます。
しかしこの方の場合は、大量に更新されているにもかかわらず、以前から身体的不調に悩んでいたような記述は一切ない。
むしろこんな記述があるほど。
元々、体育会系です。身体を動かすのが大好きなので、ストレス発散にもなります。
今は昔より体力がついています。
だから「発見時すでにステージIVだった」という結果でも、長年培っていた基礎体力という大事な部分が、内臓に発生したガンのスタートラインですでに一般の患者さんの身体の条件の比ではなかったのではないかと思います。
この方の場合、最初の抗がん剤が100人に1人レベルの効果を見せたといいます。
その後、運よく治験に参加できた新薬も功を奏して560人の中の最後の2人に残るという快挙。
運?運もあるだろう。でも最後まで(腫瘍が消えるまで)体力が持ったことのほうが大きいんじゃないか、と思う。
抗がん剤は腫瘍に対して効果があればあるほど、副作用は強いといいます。彼女も治療始めから非常に強い考えうるほぼすべての副作用があるといいます。逆にいえば功を奏しているということ。
今でも副作用についてはよく書いてらっしゃる。それほどつらいのだろうと思う。しかしそれでも常に復活できる体力。
しかしもうひとつ、この方が他のガン患者さんと一線を引いているところがあります。
痛みの記述がほぼ見られないことです。つまり痛みがほぼなかったということ。
遠隔転移も確認されていた上、余命半年の状態であったのに不思議です。
吐き気や倦怠感はしょっちゅうで、うつ病にまでなったといいますが、痛みはなかった。
さらに肺がんでレントゲンが真っ白になっていたときも、呼吸に障害が出ていない。発見前も、肺に自覚症状は全くなかったといいますからやっぱり身体が強いのだとしか思えないのだ。(発見は、骨転移のしこりだった)
なんと今はバレエを習っているというし。抗がん剤を9年近く打った身体でも体幹がしっかりしているのは尊敬レベルのだと思う。これこそが運動の継続という名の奇跡かもしれないと思う。
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別の視点で見てみると、ご自身のことを体育会系(=根性論)と表現しているように、身体を動かすことへ重点をおき、逆に思考することは得意ではなかったように見受けられます。(体育会系あるある)
データが苦手、と自らおっしゃっているように、論理的思考がかなり苦手とみていい。
血液検査の結果にすら興味がなく、写真を添付してブログにあげ「私の血液検査、どこかおかしなところあります?」と読者に聞いているのだから笑ってしまいます。もちろんいい意味で。
彼女の思考だけでいえば完全にAタイプでしょう。つまり助かる可能性を低くするほうの、そしてマジョリティ側のA思考。(A思考とB思考。癌が消える人の共通点についての記事参照)
それは彼女の思考や行動について、少しブログからのぞいてみると明らかです。
初めて告知を受けたとき、ずっと泣いていたという記述がたくさん見つかります。泣いていたということはひたすら悲しいという感情が大きかったのですね。小さな息子さんがいる母親だからその思いはいかなるものか。
しかし、泣いてはいるものの「なんとか助かる道はないものか」と検索魔になったり本などを買って必死に情報を集めることはしていない。泣きながら現実を受け入れようと終活をしている。
さらに医師を完全に信頼し、よい関係を築いて導いてもらっている。セカンドオピニオンもご自身の意思ではなく、降ってわいた幸運をつかみにいった感じです。
助かる方法を模索するには時間も心も余裕がないと感じたからかもしれません。しかし結果、少なくとも最初の2年ぐらいは、考えるところはほぼ他人にやってもらっています。
その後、体調がよくなってからはサミットに参加したり、原因を考えたり、再発防止など、自分で思考することが増えている感じが、ブログからは見て取れます。
かなり時間がかかったようですが、「癌」というご自身の病気を知的な視点からとらえようとしておられる感じがします。
つまり時間をかけて、A思考からB思考へ変わりつつある。年齢が上がってきて視野が広くなったのかもしれません。基礎体力+思考能力は長期生存の最強タッグ。さらなる長期生存を期待できそうなコンディションだと感じます。
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A思考の方だけれども、基礎体力が抗がん剤やその副作用に長く耐えうるほど強いことが長期生存のカギになっている良い例だと思うこの方のブログ。
もう一つ、気になることは食生活です。癌になる前とその後の食生活は変わっているのだろうか?と疑問に思うところですが、カフェ巡りを頻繁にしていたり、糖質などは特に制限はしていない様子です。
ただ、もともと豆類が大好きでとても食べる、などといった記述があり、健康的だと言われている食べ物も多く摂取しているのかもしれません。
しかし写真を見る限り、血糖値がかなり上がるものがかなり多い気がする。体力>食生活なのかもしれません。
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長くなりましたが、ブログを長い時間をかけて読み、わたしが出した答え。
この方は奇跡の方なんかじゃなく、一番の原因は圧倒的な基礎体力、身体の強さで癌に勝ち続けている、という結論です。癌になったあとに、抗がん剤を打ちながらバレエができる人なんて聞いたことがない!
少なくとも中学生のころから長年培った日常的なスポーツ習慣は、とっても強くなり、身体の大ピンチをも助けてくれる可能性もあるんだなと感じます。ある意味、運動の継続は食生活より強いのかもしれません。
イチローだって一日中運動をしてる、でも食生活は気にせず好きなものを食べると言っていたね。
あとはブログを見ても分かるように、内容がほとんどとってもポジティブ。あまり深く考えることを好まない明るさもストレスを減らしているのかもしれません。
彼女なりに、癌の原因はストレスや疲労、寝不足だと分析していますが、これを意識し改善した結果がポジティブなブログの内容につながっているのかもしれません。
最後に、彼女がご家族といつも元気に幸せに過ごしておられることを祈りつつ、たくさんの人に希望を与えていることに深く尊敬を抱いています。
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体力、思考能力、癌予防、めちゃくちゃ大事。