髪の長さ=美しさ。ヤオ族の村を訪ねたよ:黃洛瑤寨長髮村【中国】


”女性の髪は長ければ長いほど美しい”という伝統のもと、髪を伸ばし続ける少数民族が存在します。最近は広く知られるようになりましたが、中国南部、ベトナム、タイ、ラオスなどの一定の地域に住むヤオ族(瑤族)という民族。

私が今までヤオ族について知っていた知識は、「髪を切らない」ことと「80歳を過ぎるまで白髪がない」それは「米のとぎ汁で髪を洗っているから」ということぐらい。

80歳まで黒髪でいられるなんてすばらしい!果たして本当なの!?

 

その美しい髪を一目見たくて7月末、中国湖南省にヤオ族が住む”黃洛瑤寨長髮村”という小さな村を訪ねました。著名な観光地、龍脊梯田に行く途中にあります。壮大な稲作が見れる地域ですね。そこはとても小さい村でおうちは全60戸。総人数はわかりませんがとてもこじんまりとしています。

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美しい自然と川の中での生活。

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f:id:nanapupst:20180801120712j:plain川沿いを歩いていくとほどなくヤオ族の集落に入ります。とても小規模の観光客用の露店とオンボロの舞台小屋へとつながっている。

わきにある石の階段を登っていくと鶏たちが出迎えてくれ、彼女たちの住まいがあります。f:id:nanapupst:20180801121114j:plainインフラとは全く無関係に見える質素な印象。午後でしたがほとんど誰もいません。本当に人が少ない。後で知りましたが、ここで暮らすほとんどの女性は団体客相手に商売をしているようです。

村で一番髪の長い家庭が紹介されていた。

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長髮奶(おばあさん):87歳、髪の長さ2m、白髪なし、米のとぎ汁でずっと髪を洗っている(一輩子只用發酵的經典米湯)

 

長髮嫂(兄嫁さん):51歳、髪の長さ1、8M、2~3日に一度米のとぎ汁で髪を洗う。一度だけ化学製品(シャンプー)を使用したがそれから半年間髪が抜けないかと心配だった(兩三天用米湯洗髮一次,只用發酵的經典米湯,一輩子只用過一次化學洗髮水,擔心了半年,害怕頭髮掉)

 

長髮姐(その義理の娘さん):29歳、髪の長さ1,7M、10年前にシャンプーを使っていたが髪質が悪くなり抜けやすくなった。嫁に来てからは伝統の方法でのみ2~3日に一度髪を洗っている。つややかな髪。(10年前用化學洗髮水,髮質不佳,易斷,嫁過來后一直用發酵的經典米湯洗髮,等等)

なんかもうこの説明読むだけでヤオ族の髪に対しての情報がけっこうわかりますね。

家庭って書いてあるから家族=髪の長さが遺伝すると言いたいのかな、と思ったら3人とも全く血はつながってないらしい。

しかしこの情報見てると30年でたった10センチ、または20センチしか伸びひんのか?18歳から伸ばし始めるのだから29歳の娘さんは、20代の10年間で少なくとも約1,5mぐらい伸びてる?ってことだよね。まあまあ深く考えるのはやめましょう。

あともうひとつの疑問。

髪が一番長い=村一番美しい女性の息子のもとに髪が二番目(?)または相当長い=美しい女性が嫁ぎ、またその女性の息子のもとに伝統的な髪を持つ=美しいお嫁さんがくる。これは偶然なのでしょうかね?

そもそも男性はより髪の長い女性と結婚することが名誉や幸せだと定義されてるのだろうか?村で一番髪の長い女性を全員が本当に美しいと感じるのだろうか?そもそも恋愛結婚はあるのか?やっぱり1度訪れたぐらいじゃなんにも理解できないなぁ。

しかし髪についての基本的な情報は教えてくれました。

話によるとヤオ族の女性たちは人生で8歳と18歳の2度、髪を切るんだそうです。18歳のころに切った10年分の長さの髪は束ねて取っておくそう。

そしてまた髪が伸びたころ、切った髪も一緒に束ねて決められた髪型をつくります。ボリューム満点ですね。

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近くで見れば見るほどびっくりの艶!なにこの生き生きとした髪!羨ましい!

女性の髪型には2種類あり、真ん中を丸くおだんごみたいに束ねている写真のような髪型は子供を生んだという印だそう。この髪型は”wu long pang fa”というんだって。

そしておだんごがない人(上の家族紹介の29歳の女性はおだんごがなく、平べったい髪型です)はまだ子供を産んでいないということ。

そして重そうな耳のイヤリングは結婚をしているという印なんだそうです。重さも決まっているそうで一生外さないそうです(右1,5〇〇 左1,5〇〇 あわせて3〇〇なのよと教えてもらったがグラムではなく独自の単位だったので理解できなかった)。重そうだよね。

女性の”結婚しているか”と”子供がいるか”という情報は一目見てわからなければならないほど(きっと男性にとって)重要だということですね。これだけでも伝統を守るとても保守的な民族であることがわかります。

それでは束ねた髪の中身がどうなっているのか、見せてもらいましょう。

 

BEFORE

f:id:nanapupst:20180810231543j:plain(撮影は許可を得ています)

          ↓            ↓

AFTER

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あれ?髪が二つに分かれた!?手に何か持ってるよ?

そうなんです!これが18歳のころに一度切った髪。束ねて頭の上に常に保管しているんです!あの脅威のボリュームは今までに伸びた髪がすべて詰まっているからだったんですね。

髪を下ろしてもらったとき、左の人は切って束ねた髪を1束しかもっていませんでしたが、右の人は2束持っていました。右は2回切ったのかな?でも左のほうが明らかに年配。伸びる速さって個人によって相当違うのかな?と疑問に思うも、次々と髪を変化させる彼女らを見るのに必死で質問する暇がない。

後で思ったけど、もしかしたら身内の形見みたいな状態で一束は別の人の髪を入れてる可能性もありそうな気がする。とにかく切った髪まで四六時中身につけたり、手入れして美しい状態を保っているのだから(重さも相当なのに!)彼女たちにとって髪は何にも代えられない宝ものなんだな。

 分けた髪をいったん肩に置き、現役の髪たちを再び束ねます。

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ゴムなどは使わず、髪で髪を束ねています。もつれない綺麗な状態を保つのにすごい技術がいりそうな作業です。

 

髪を一つに束ね終わったら次はお手入れ。伝統的な櫛を使って丁寧に髪を梳きます・・・が、長すぎるがためにそれがとっても大変そうな作業になっている。全身を動かした渾身の力仕事のように見えました。かなり必死。でももつれたり、櫛に引っかかったりする髪が全くない。ホントにサラサラです。

 

お手入れが終わると祈るような体勢になった。

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ここで先ほど分けた髪の束を慎重に現役の髪の中に戻します。これにも技術がいるっぽく意外と時間がかかっていました。その証拠に入れ終えた後はまるで現役の髪が2倍になったかのように自然にフィットしてます。しかし艶々だ。

 

そしてフィットし終えたタイミングでそろってポーズ!凄い!!ボリューム満点!

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しかし慣れてますね。村を訪れる団体客に毎日ショーを見せてるんだそうです。大変な力仕事だよきっと。

 

その後は髪をクルクル巻いてあの”wu long pang fa”の形を作ります。

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すごい速さ!どんどん巻いていく。

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最後には再び元に戻りました!お見事!

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写真を見て気づきましたか?

彼女たちは正規の髪型(wu long pang fa)をしているときはニコニコしていてとても余裕があり、たくさんしゃべりました。でも髪をほどいて手入れを始めた瞬間に笑顔が消え、ものすごい真剣になるんです。そのさまがとても必死で余裕がない。写真にも今にも泣きそうな顔が写っています。終わったらまたコロっと余裕ができるんですけどね。

何百回、何千回と繰り返しているであろう完全に慣れた作業をここまで余裕をなくして必死で行う。それだけ大変な作業であり、さらに髪や伝統に対して真摯に向き合う生々しい姿を見れたのでした。

・・・それをわかっていながら髪の手入れ中も質問攻めにした私に、顔をゆがませながらたくさん答えてくれた二人に感謝です(その様子を撮ったビデオをいつか公開するかもしれません)。

その会話の中には、すでに書いたような結婚したらこう、子供がいたらこう・・・というよな基本的な伝統の他にも興味深いものがありました。

たとえば彼女たちの年代のヤオ族(50,60代)は中国語は話せるが、文字が書けず読めない。学校教育を受けていないんです。受けれなかったのか受けない主義なのかどっちかは分からないけど。そのために今も携帯電話を持っていない。

また男性と女性の仕事が完全に分業しており、男性は10時から16時までは農業に行き(お米の産地です)、女性は髪の手入れと観光客の相手が仕事だそうです。

結婚の時期、子供を産んだ時期を聴いてみるとだいたいが18歳。しかし今の若い世代はもっと遅くなっているといいます。確かに髪の長い家族の紹介では一番若い人は29歳でもまだ子供がいないしね。

あとこの村にはほぼ子供や若い子がおらず、それも尋ねてみると最近の若い子は伝統を守らなくなり街に出ていく子が多いのだと聞きました。一人だけ10代ぐらいの、髪を伸ばした女の子が読み書きを勉強していましたがそれ以外に若い子には会いませんでした。

保守的な伝統は頑なに遮断して守らない限り、便利さや先進的なものに徐々に飲み込まれていくのかもしれません。

最後に、白髪がない秘訣に対しては「空気がきれいだからよ」との答えが。そうだよねそれも多いにありそうです!伝統を守ってここで生活する女性たちの髪は全員、キラキラ光っていてまるで子供のような、そして真っ黒な生き生きした髪の毛でした。

「髪が一番長い人が一番美しい」と堂々と主張する彼女たちの色々な話を聞けてとても貴重な体験になりました、ありがとう!