勧誘から浮かび上がる厳しい現実:上海


上海に来て今日でちょうど一週間ごろの、2018年4月に書いたものです。

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観光名所の外灘や南京東路で何度か声をかけられました。この一週間、私は西洋人と歩いたり一人で歩いたりしていますが、一人で歩くほうが声をかけられます。

笑えたのは外国語の勧誘がけっこう多いこと。

”日本語ができると素敵ですよ!これで日本語勉強しませんか!?”

とか笑えませんか?・・・なんて反応したらいいんでしょう。中国語で

”私、日本人なんですけど”

って言っても信じてもらえるかね。

と思ったけど言ってみたら、一瞬”え!?”ってなるも、

”じゃあ英語はどう?どの言語でもできますよ!”

とすぐにまた切り替える。英語もできますよ(これはちょっと嘘)と言ってみたら、

”じゃああなたの子供に!”

みたいな。すごいよ中国人、あきらめずにガンガンくるしぺらぺら出てくる!

また西洋人だけを狙っている人もおり、英語で話しかける人もいます。

私は中国人観光客だと思われているっぽいです。何の勧誘なのか興味があったので、時々会話してみたりしました。

たとえばこんな感じ。

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南京東路でされた勧誘。

50代ぐらいのおばさんが一人で座っていた私のところにイキナリ寄ってきて、

”アナタの顔には才女の光が見える、おでこから出ているなんとかかんとか・・・・(全部は理解できない)。あなたの鼻もこのへんもあのへんも・・・”

と難しい言葉を使ってお経のように繰り返します。

あまりにしゃべるので

「それ全部暗記したの?あなたすごいね(你把他都记起来了吗?好厉害)」

と反応してみたら、しゃべりながらとなりに座ってくる。

なんか彼女は顔の相を見ることができる人らしい。名前入り顔写真つきの証明書みたいなのも見せてきた。

 

”あなたの人生はすべてが素晴らしい、あなたは天才である。しかし一つだけ問題がある。それは結婚運よ”

とかいうので、「それはなぜわかるの?」と質問したら、菩薩が私に教えてくださるの的にいってきた。

おーこれ、顔相占いされてるのかと思ったら宗教の勧誘なんだ!

 

「恋愛もとっても満足してるよ」と答えると、そうなんだけど他の女が寄ってくるわよ、魔よけしなきゃ。

みたいに押してくる。なるほどーそうきたかー。

 

「私は科学しか信じない主義だよ」と言ってみたら、そんなことないわ、神様は一人でしょう?お茶一杯分のお金で魔よけができるから手相をみせて、ついてきて、とけっこう強引である。

「私は仏教じゃなくてキリスト教だけど」と言ってみた(嘘です)。

なんていう?・・・同じ言葉が返ってきた。

キリスト教も仏教も神様は同じでしょう?信じるものは同じ。だと!

さらに手相でもっともっと細かいことがわかるから、手を出して、と言ってくる。

宗教の勧誘かと思ったらやっぱり占い系かーい!しかも、お茶一杯ぐらいの値段で手相を見てあげるから、とちゃっかり誘う。

 

あまりにも去らないので、「10分前にも同じような人が同じようなこと言いにきたよ」と言うと、やっとあきらめて去って行った。

ちなみにちらっと見せてくれた証明書には、”九華山”という文字が書いてあった。

きっと仏教の宗派だろうと思う。おばさんの話によると安徽省の九華山という宗派らしい。

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なるほどねー!

勧誘1つでも色々なものが見えますね。

まず、”安徽省九華山”と名乗るオバサン集団が上海の南京東路という観光客のごった返す歩行者天国で勧誘しているのは、上海で仕事につけないからである。

なぜか?

中国では、戸籍のある場所以外では仕事につくのが難しいシステムになっているからです。仕事案内の貼り紙にも「上海戸籍のみ」って強調されてることもある。

さらに農村部から都市部へ戸籍を移すのは今でも厳しく制限されています。都市に人口が集中するのを防ぐためです。階級社会ですね。

 

昔に比べ、学歴や専門性などがある人は比較的容易に戸籍が移せるようになったみたいですが(大学も相当お金かかるから農民には厳しい)、年配の人たちは実質チャンスがないのも同然な人が多いです。

だから、彼女らは街中で観光客や一般人に混じり、バレないように勧誘活動をする。

彼女らの身なりは全然みすぼらしくなく、普通でモダンな私服です。上海の中国人と変わらない。しかも声をかけるときは完全に一人です。

私は2度、彼女らのグループの別々の人から話しかけられましたが、いずれも言葉づかいは普通語。

ちょっとなまっていますが、あまり田舎臭くない発音でしっかり話します。

私に対し”結婚の部分が問題”を持ち出したのは私が指輪など何もつけておらず、一人で孤独そうな人に見えたからかもしれません。ちゃんと声をかける前に観察もしています。

きっとマニュアルがあったり、色々な教育を受けているのでしょう。

 

それでもこんな短い会話の中にも無知さは見え隠れします。

彼女は”科学”という概念を理解できなかった。だからちぐはぐな答えが返ってきた。

またキリスト教を出したところで引き下がらなかったのも、本当に仏教を信仰しているのではなく、宗教自体の意味も分かっていなかったのかもしれない。

別々の宗教を尊重することは基本で、別の宗教の人が足を踏み入れてはいけない部分って存在する。

それは絶対的な存在である”神”の解釈の部分です。だからキリスト教も仏教も神は同じだといわれると信仰心の深い人は嫌な思いをするかもしれない。

少し会話すると速攻でボロが出ているのだ。なので宗教や宗派はともかく、それを利用して占いをしてなんとか食いつないでいる人たちなんでしょう。

あらゆるところに人材募集の張り紙が貼ってあるにもかかわらず、戸籍の問題で上海で働くことを許されないひとたち。

それでも都市部に出てきて、見つからないようにひっそりとお金を稼ぐ方法を模索する人々。厳しい生き方だなと感じます。

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他にも本屋さんの前でチベット僧の格好をした男性にいきなり金色の栞を渡され、”これはもうあなたのものだ、あなたはこれで守られた。これは守護神だよ”と言われたり(このあと署名をしてくれと言われ無理やり突き返した)

他にも本屋では電子書籍の勧誘など、あちこちで積極的に街行く人に話しかける中国人の姿がありました。

安徽省のおばちゃんとかね、別に手相なんかどーでもいいからあなたの生い立ちや文化大革命時の体験とかを赤裸々に話してくれたら喜んでお金払うよ!と交渉しようかと思ったよ。

手相よりそっちのほうが何百倍も興味あるから!

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