場所の副詞(3)hinとher -Lokale Adverbien- 【ドイツ語文法50】


場所の副詞(2)のつづきです。

今回はhinとherの意味その多岐にわたる使い方を勉強します。

 

 

hier/da/dort+hinとher

前回の場所の副詞(2)ではこちらの表を学びました。

wo? wohin? woher?
hier hierhin von hier
dort dorthin von dort
da dahin von da

hier/dort/daの後ろにhinを付けると「ここ/あそこへ」、vonを前につけると「ここ/あそこから」という意味になりましたね。

それでは今日の表を見てみましょう。

wo? wohin? woher?
hier hierhin hierher
dort dorthin dorther
da dahin daher

今日のメインテーマであるhinとherが後ろにつくバージョンです。赤いところが前回の表と違うところです。

これ同じ意味でしょうか?

もちろん同じ意味ではありません。

簡単に説明すると、von hierなどの表現ははあくまでA地点からB地点に移動する時のA地点のほうにいる時に使うものです。

Ich gehe von hier. =ここから行くわ

は、ここ(A地点)から離れて、どこか別の場所(B地点)に向かう時に言いますね。

しかしhierherは自分がその場所から離れるのではなく、誰か(または何か)が自分のところに来る時に使うのです。

つまりB地点にいる人がA地点にいる人に向かって、

Komm hierher. =こっちに来て

というと正しいです。

×Ich gehe hierher.や×Komm von hier.は使えません。

ちょっとややこしく思うかもしれませんが、前回の表はあくまで主語が今いる場所から離れる時に使うものに対し、今回の表はhinがつく時は同じく離れる時に使いますが、herの時は主語が自分のところに寄って来る時に使われるのです。

つまり実践的にはherのほうは、「〇〇をこっちに持ってきて」とか「自分のところに来て」とか人にお願いしたり指示したりする時に使うもので、そもそもich、つまり自分自身が主語になるのは意味が成り立ちません。

×Ich komme hierher.や×Ich gehe dorther.が使えないのはそのためです。自分がいる場所に自分を呼び寄せるなんて意味が分かりませんね。

「今スーパーにいるんだ、そこから直接行くね」とかなら

Ich bin gerade einkaufen. Ich gehe von dort (aus) direkt zu dir.

ということができます。

von hierとhierherの違いを分かりやすく絵にしてみると、

こういうことです。副詞もけっこう手ごわいですね。

ちなみに亀がgehenではなくなんでkommenって言ってるの?と疑問に思った方はこちらのkommen解説ページでも軽く解説していますが、ドイツ語では話している相手のところに自分が行くときはgehenではなく、kommenを使うのですね。

「今から家に帰る~」と一緒に住んでいる家族に連絡するときはIch gehe jetzt nach Hauseではなく、Ich komme jetzt nach Hause.というのが自然です。

ちなみにgehenを使うのはこんな時↓

話し相手も同じ場所にいる時です。

Ich gehe langsam nach Hause.は今まで一緒にいた相手に「そろそろ帰るわ」って感じです。

 

 

hinとher+動詞

hinとherはよく動詞の前にもついているのを見かけることが多いと思います。

hingehen
hinlaufen
hinsetzen
hinlegen
hinstellen
hinschauen
hinbringen

herkommen
herlaufen
hersetzen
herlegen
herschauen
herbringen

副詞というより分離動詞の前つづりとしての使い方ですね。

Ich setze mich hin.
=そこに座るわ(今いる位置から椅子の位置まで行く)。

Setze dich mal her
=ここに座ってよ(自分の近くに来て座って)。

ただ、すべてのhinとherが先ほど解説したような動きを表すかといえばそうではないので注意です。

たとえばherkommenは先ほどの例のようにKomm bitte her!=こっちに来て!とも言えるけどWo kommst du her?という質問からも分かるように「どこ出身?」ともいえます。herstellenなどはそもそも自分のほうに何かを立てておくという意味はなく「製造する」になったりしますね。

でも上に挙げた動詞は基本的に解説どおりの意味で使えます。

日本語ではちょっと想像しにくいかもしれませんが、「あっち見てみて!」みたいな言い方もSchau mal hin!です。目線も遠くに移動するならhin。

hinとherの動詞コンビネーションは無限にあります。

しかし次に紹介するものにはたった5つの形しかありません。副詞(前置詞)バージョン

 

 

hinとher+副詞(正確には前置詞)

次は副詞の後ろhinまたはherを足したもの。しかし数は限られています。5つだけ。

場所の副詞(1)に出てきた9つの中の5つ(oben, unten, drinnen, draußen, drüben)です。

しかし副詞の形ではなく、前置詞の形に姿を変えます。意味は同じです。

それではこの5つの前置詞の前にhinとherをつけた表がこちら。

wo? hin her
oben(上) hinauf herauf
unten(下) hinunter herunter
drinnen(中) hinein herein
draußen(外) hinaus heraus
drüben(向かい側) hinüber herüber

こちらはhinとherの意味の上にどの方向に/どの方からという情報がさらに加わったものです。

たとえば「今から中に入る」と言いたかったらIch gehe hinein.ですね。自分が中にいて誰かに自分のいるところまで入って来てほしかったらKomm bitte herein.と言えます。

もう一度絵で見て理解しましょう。まずはhinaufとherauf。先に出した絵に比べると2人の距離の他に高さが加わっています。これがauf効果。

次は降りるほう。矢印の方向でhinかherかを使い分ける必要がありますね。

しかーし!

日常生活ではこんなことは言いません。聴くとめっちゃめちゃ違和感です。なぜなら格調が高すぎるから!上がったり下がったり中に入ったり外に出たりする日常行動にしてはしっかりしすぎていて合いません。

日常でとてもしょっちゅう聴く表現はこっちの赤い省略形です。

nach schriftlich mündlich
nach oben(上) hinauf/herauf rauf
nach unten(下) hinunter/herunter runter
nach drinnen(中) hinein/herein rein
nach draußen(外) hinaus/heraus raus
nach drüben(向かい側) hinüber/herüber rüber

そう、口語になるとhinもherもどっちも同じなのです。

楽!

Ich gehe hinauf.と言わなくてもIch gehe rauf.と言えばいいし、Komm bitte heraufと言わなくても、Komm bitte rauf.と言えばいいのです。

絵で表現するとこうなります↓

日常会話ではすべて省略形が使われます。

しかし作文や書くときには使えませんし、ドイツ語文法としてreinやraufを理解しようとするときちんとした形を知っておくことは必須です。

ということで、場所の副詞(1)から今の(3)まで全てをまとめると

Ich gehe nach oben.
=Ich gehe hinauf.
Ich gehe rauf.

☆☆

Wir gehen nach unten.
= Wir gehen hinunter.
Wir gehen runter.

☆☆

Geht nach drinnen.
= Geht hinein.
Geht rein.

☆☆

Sie gehen nach draußen.
= Sie gehen hinaus.
= Sie gehen raus.

☆☆

Wir gehen nach drüben.
= Wir gehen hinüber.
Wir gehen rüber.

nachのバージョンも場合によっては使われることがありますが、ほぼ口語の形。そして真ん中は日常会話では一切と言っていいほど使われません。

 

さらに、こちらも一つ残らず分離動詞としての機能もあります。

hinaufgehen(raufgehen)

herunterbringen (runterbringen)

hineinschauen (reinschauen)

herausfahren (rausfahren)

hinüberlaufen (rüberlaufen)

また、普段の会話や文章ではrausgehenとausgehenといった動詞もよく見かけると思います。これは適当にどちらを言っても同じではないのはよくわかったのではないでしょうか。reinkommen/einkommen、rausfinden/ausfindenなども全く別のところからきている動詞なのですね。

一つ例を挙げると、rausgehenはここまで読んだ方ならもう理解ができると思います。「(中から)外へ出る(hinausまたはheraus)」という意味ですね。

しかしausgehenには中から外へ出るという意味はなく、「遊びに行く」という純粋な分離動詞です。副詞がついた動詞ではありません。

たったrひとつの差は動詞の中では非常に大きく、そしてこのrにどれだけの文法が含まれているのかがこのページでは理解できたのではないでしょうか。

しかしこちらはもっと複雑なので注意が必要です。

上に出した動詞はたとえばhineinschauenは「中を見る」のようにこのページで解説したその原型の意味を持っていますが、たとえばhineinversetzenなどはもうかなり遠く抽象的な意味になっていたりするのでそれぞれの分離動詞として意味を一つずつ覚えたほうがいいことも多いかと思います。

 

それでは最後に少し例文を。

日常ではこのように使われていますよ。

Guck mal das rein!
=ちょっと中覗いてみて!

Kannst du den Teller hierher bringen (herbringen)?
=お皿こっちに持ってきてくれる?

Die Sanitäter tragen den Verletzten raus.
=救急隊員が怪我人を外に運んでいる。

Die Katze will nicht vom Schrank runterkommen.
=あの猫は棚から降りて来ようとしない。

Das Kind klettert rauf.
=子供がよじ登っている。
 

Ich habe Gemüse in den Topf reingetan.
=野菜を鍋に入れた。

☆☆

最後にこれをぜひ読んでほしい。

台湾で偶然に見つけたものですが、このページを理解した方なら私と同じように感激するのでは!

ある台湾人による翻訳の極み【ドイツ語考察】

動画解説はこちら↓

場所の副詞(1)9つの動く副詞と動かない副詞 -Lokale Adverbien-【ドイツ語文法48】

場所の副詞(2)こことあそこ☆hier/da/dort -Lokale Adverbien- 【ドイツ語文法49】

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