【中国】社会信用システム。「信用中国」で知れる情報。ブラックリストの統計。No.2


前回の記事では、中国の国民が日常的に利用する中国の最大検索サイト「百度」の中には、どのように社会信用システムの情報が公開されているのかを垣間見ました。

今回はる社会信用システムの専用サイトを見つけたので紹介します。「信用中国」という、国が一括で社会信用システムを管理しているサイトがあります。百度では見つけられなかったのですが、全く別のところから浮上してきました。やっぱり文献探しは英語が圧倒的。強いわ。

ドイツ、ミュンヘン工科大学が2019年(つまり最近)、たくさんの中国語母語者の協力を経て公開されている論文1が、社会信用システムの加点と原点の具体的な基準と透明度を詳しく調査しています。

その調査対象が「信用中国」2という中国政府が運用する社会信用システムのホームページ。そして各自治体のホームページもそれぞれあるようです。たとえば「信用北京」とか「信用広州」2とか。

しかし、ミュンヘン工科大学が調査対象にした「信用北京」のホームページは今は隠されている模様。検索しても出てきません。やはり中国の社会信用システムへの不透明さは免れない印象があります。

しかし今はまだ2019年。社会信用システムは完成してはおらず、いまだ開発中です。2020年までにはもっと透明になる可能性もあります。

きっと国民は知っているサイトだと思う。ネット上にこのサイトへリンクなどは一切なかったけど、情報が欲しければこのサイトに行けばいい、と直接会社や学校などで言われてるのではないかと思う。


信用中国のサイトにはどんな情報があるのか

まず信用中国のサイトには何があるのでしょう。見てみます。

一番上のメニューは16項目に分かれています。理念や規範といった解説も多い。そのすぐ下には最新政治ニュース記事。社会信用システムについて政府の最新の動向を伝えているようです。

そしてその下の、色で分かれているメニューが具体的な情報や統計。この信用中国ではおもに企業や団体を点数で評価しているらしく、ブラックリスト(失信黑名单)またはレッドリスト(守信红名单)の欄があります。名前のとおり、ブラックリストのほうは信用を失った企業=点数が低い、レッドリストは信用度が高い企業=点数が高い、これらがずらりと並んでいます。特定の団体の検索もできます。

上のメニューで気になったのは「城市信用」2。あけてみるとすごい!都市ごとにも格付けされている!ちなみに2018年の1年間の総合点数だそうです。

省ごと、市ごと、といった階級、管轄内でのリストが出ています。当たり前ですが上海、北京などの大都市はトップに位置している。

更に「簡易的な報告」として、細かいデータも公開しています。たとえば北京2のデータによると2017年代には信用を失う重大な事件が4件起きたと。

その内容は粉飾決算、投資会社での非法行為で32人を逮捕、19人が死亡した火災事故、幼稚園で子供に針を刺した事件の4件。

また、ブラックリストに載った企業の数は24件。などの情報も。

先ほども少し触れましたが「失信黑名单查询」と書いてあるのがブラックリストです。その隣には「重点关注名单查询」という欄があり、要注意リスト、というのもあるようです。開けてみるとずらーっと並んでいるのは企業の名前ばかり。

個人の管理は省以下のサイトでされているのか、まだそこまで体制が整っていないかのどちらかでしょう。どのサイトに行っても企業情報のほうが圧倒的に多く出てきます。

また「信用中国」にはかなりの数のニュースや報告が毎日投稿されており、信用体系システムの動向を知れるようになっています。

たとえば「信用动态」というカテゴリーの最新記事は広州では、2019年の農歴新年の時期、飲酒運転での交通事故数、死亡者数、負傷者数がそれぞれ10%以上減少したという報告がでています。
2018年のデータから交通事故の中で特に飲酒運転が多かったことを受け、社会信用システムに飲酒運転に対する罰則強化した対策の効果が表れたとしています2

さらに、企業がブラックリストにのった場合、どのように信用を回復するのか、何をしなければならないのかといった手順も公開されています2。さらに提出資料などがダウンロードできるようになっている。

・・・こんな感じで「信用中国」のサイトをのぞき見してみましたが、とても規模の大きいサイトなので、すべてを把握するには膨大な時間がかかりそうです。

今回はとりあえずさっと見渡して気がついたところを挙げてみた結果「信用中国」のサイトでは

・全国の法人、企業の社会信用データ

・都市ごとの統計データ、または報告

・企業のレッドリスト、ブラックリストの公開

・社会信用システムに関する最新ニュース

・リストに載ってしまった場合の信用回復方法

などのがのっていました。きっと国民もこのサイトから情報を得ているのだと思います。


2018年のブラックリスト統計。種類別。

その中で、2018年のブラックリストデータが最近発表されたらしい2。どれぐらいの人々が一体ブラックリストに載っているのか、どんな制限を受けているのか知るのにちょうどいいと思ったので載せておきます。

2018年の時点のブラックリストの数は1421万件。その中で2018年に新しくブラックリスト入りしたのは409、64万件。

信用を失った人:1277万人

飛行機のチケット購入を制限されている人:1746万人

電車のチケット購入を制限されている人:547万人

業務を制限されている企業の顧問や経営陣:29万人

なんらかの制限を受けている法人:359万

財務や税収の違法案件:16642件

なかなか文の読解が難しくて100%正しいかは微妙ですが、なんとなくこんな感じです。

さらに交通機関に乗車するのを拒否されている人数?の統計もあるようです。チケットの購入を制限されている人たちと何が違うの?と思ったのですが、次の統計は「重大に信用を失った人のブラックリスト」らしい。ブラックリストにも軽いのと重いの、2種類あるようです。

重いほうのブラックリストにのっていて、飛行機や電車に乗れない人の総計は6908人。電車に乗れない人は1782人。飛行機に乗れない人は33195人。

だいたいこんなかんじ。さらに地域別の統計や、前年と比べて減ったか増えたか、罰金を払ってブラックリストから脱出した数などもあります。

総人口が14億とすると、現在信用を失っている人が1277万人。約1%弱でしょうか。120人に一人ぐらい?これを多いとみるか少ないとみるか。

しかし見る限り、ここにもブラックリストにのった原因は一般公開はされていないようです。

なので、次回は先ほどのミュンヘン工科大学が発表した論文の中から

何をしたら点数が上がり、何をしたら点数が下がるのか、具体的な例を探してみようと思います。社会信用システム。加点と減点の基準。No.3

追記:深圳市のページでは顔写真まで出ていた。

No.3につづく⇒加点と減点の基準はあるのか?

  1. Clear Sanctions, Vague Rewards: How China’s Social Credit
    System Currently Defines “Good” and “Bad” Behavior
  2. 「信用中国」