食べる時と買う時の「パン」の言い方は違う【ドイツ語メモ】


「私は朝ごはんにパンを食べます」

これ訳せますか?

冠詞をつけますか、つけませんか?

Ich esse zum Frühstück Brot.

Ich esse zum Frühstück ein Brot.

Ich esse zum Frühstück Brote.

どれが正しいですか?

これはどれも正しいのですが、意味が違います。3番目の文はお相撲さんならいうかもしれませんが、私たちが言うと嘘だと思います。

どういうこと?と思った方はこのページを勉強してください。

パンを食べるとかパンを買うっていうだけでもかなり大変。でも理屈をしれば誰でも納得。

それではどうぞ。

 

ドイツ語の「パン」はdas Brotと言います。複数形はdie Brote.

たとえばライ麦パンのような大きい系のパン。ちなみにライ麦パンはBauernbrotといいます。

 

小さいパンはdas Brötchen.複数形はdie Brötchen.

 

明らかに数えられる。

しかし「パンを食べた」はほとんどの場合

Ich habe Brot gegessen.

といいます。

 

Ich habe ein Brot gegessen.

とも

Ich habe zwei Brote gegessen.

とも言いません。

 

他にも、「パンを食べるのが好き」というときも

Ich esse gern Brot.

と言います。

 

誰一人

Ich esse gern Brote.

とは言いません。

 

つまり冠詞をつけないし、複数形にもしないのです。

冠詞をつけずに複数形にしないということは、ゼロ冠詞なのです。

でもパンがゼロ冠詞?どう見ても1こ2こ3こって、数えれるやん?と思いませんか?

文法は間違ってる?

いえ、文法的にはすべて正しいのです。

 

パンは数えられるのです。でもゼロ冠詞なのです。

同時に数えられて同時に数えられない。シュレーディンガーの猫。

 

なぜなんでしょう?

非論理ではないよ。完全に誰もが納得する説明ができます。

 

なぜかというと、たとえば私たちが食べるパンってこんな感じですよね。

右は小さいパンなのでまるまる食べるけど、左のは大きいパンを切った中の一枚です。

ってことはあの大きいパンを「一つ」と数えるので、これは一つの何等分かです。

だからこの写真の食事を描写するなら

Ich esse Brot mit Käse und ein Brötchen.

=チーズをのせたパンと小さいパンを食べます。

となります。

 

逆に

Ich esse ein Brot mit Käse und ein Brötchen.

と言ったら、もちろん文法は正しい。でも意味はどうなるでしょう?

あのまるまるのどでかいパンを一つと小さいパンを一つ食べたということになるので食べる量がだいぶ変わってしまいますね。

 

同じ要領でこれを描写してみましょう。

どうなるでしょう?

こう思った人はいますか?

×Ich esse zwei Brote mit Butter und ein Brötchen.

これは写真の描写とは違いますね。

 

答えは

Ich esse Brot mit Butter und ein Brötchen.

です。

 

明らかに2枚あるって?そう、でも数えられないのだからzwei Broteとは言えないのです。

 

いや、でも1つ目の写真は1枚で、2つ目の写真は2枚なのに同じ言い方するのは変やろ、「2枚のパン」を強調したいんだ、という方は、他の方法がありますね。

なんでしょう?

 

ドイツ語には、数えられない名詞を数える方法がありました!

数えられない名詞の数え方【ドイツ語基礎文法8-1】

これを勉強すればいうことができます。

ここではScheibeをMengenangabenの中から使うのがふさわしいでしょう。

Ich esse zwei Scheiben Brot mit Butter und ein Brötchen.

ですね。

日本語で言ういわゆる助数詞をつけることで、このように切ってしまったりして数えられなくなったものを数えることができます。

それでも名詞自体は単数形のまま。

×zwei Scheiben Brote

は不正解です。

 

とはいえMengenangabenを使うのはあくまで1枚じゃなく「2枚」食べたのだ!と強調したい時なので、普通は食パンみたいなのが1枚であろうが2枚であろうが、Brotと言ってもおかしくありません。というか普通です。

 

なので複雑に見えますが考え方はいたって非常にシンプル。

ネイティブも感覚的になんの矛盾も感じていません。

 

なので食べる時は、ひとつまるまる食べるもののみ数えられて、切ってその一部を食べる場合はゼロ冠詞なのだ、ということです。

他の野菜でも大きな野菜はわりかしこの論理がまかり通ります。キャベツとかね。

だから食べ物の表現ではゼロ冠詞が非常に多いのは納得できるのではないのでしょうか。

 

「どれを1と数えるか」という視点を持っていることが大切ということです。

☆☆

 

そしてこれが理解できたら、買い物のときはどうなるか、もう想像がつくのではないでしょうか?

パン屋さんに行って、これを買いたい時は何と注文しましょう?

まるまる一つ買うので

Ich hätte gern ein Bauernbrot.

と言わなければなりませんね。

 

×Ich hätte gern Bauernbrot.

だと何個ほしいん?ってなります。

 

そしてこのパンを2つ買うのであれば

Ich hätte gern zwei Bauernbrote.

が正しいです。

なんの矛盾もない。

 

ということで奥の深いゼロ冠詞、実は誰でもできる使い方をするわけです。

 

だから

パン=ゼロ冠詞なのだ、とか

いつも冠詞をつけずにいうのが正しい、とか

パン=数えられるからいつでも冠詞つけなきゃ、とか

受験勉強風や暗記するだけ風な覚え方をしていると、全く実践的に使えない単語でもあります。

 

今回は

「食べる」と「買う」という動詞で、その後の「パン」の使い方が違うよ、という例を出しましたが、この理屈を知っているとどの動詞と使ってももう怖くありません。

「ライ麦パン持っていくわ」というときに1こまるまる持っていくのか、切ってその一部を持っていくのかで使い分ければいいだけだからです。

 

語学学習では言語問わずこのような実践的な勉強を私は推奨しています。

テストのためだけにいろんな単語をひたすら暗記してどうやって実践で使える?使い方知らなかったら「パンを食べる」すらまともに言えないのよ?

といういい例かなと思います。

 

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