【A1】ゲーテドイツ語試験の基本情報と内容まとめ:Goethe Zertifikat A1
ゲーテドイツ語試験は、日本でしか証明できないドイツ語技能検定試験(独検)と違い、世界中で通用するドイツ語検定です。
それに対し独検は、日本で日本人に対してドイツ語ができることを提示したい人に向いた試験です。
ドイツ人との会話、またはドイツでの生活を目的に学習している人は、実践的でもあるゲーテドイツ語試験を目標に勉強することをおすすめします。
(参考:Prüfungsziele-Testbeschreibung,2011)
はじめに
ゲーテドイツ語(A1)には
・10歳から16歳までの児童・青少年向けのドイツ語試験(Fit in Deutsch 1)
・大人向けのドイツ語試験(Start Deutsch 1)
の2種類があります。
ここでは後者の試験内容と概要を解説します。
A1レベルの試験で問われるドイツ語能力は
1.相手がゆっくりはっきり話してくれれば、簡単な会話を理解し、話すことができる。
2.日常的によく使われている表現や簡単な文を理解し、また使うことができる。(特定の人やその家族の情報、買い物、仕事、周りの身近な事柄などについて)
3.自己紹介や人物の紹介ができる、また人に個人的な質問をすることができる。(どこに住んでるか、どんな人を知っているか、どんなものを持っているかなどについて)
主にこの3つのドイツ語能力が筆記、会話、リスニングすべてで問われます。
テストの基本情報
試験は読解・作文・リスニング・会話の4種類に分かれています。
それぞれの時間配分と点数はこちら。
種類 | 時間 | 点数 |
リスニング(Hören) | 20分 | 25 |
読解(Lesen) | 25分 | 25 |
作文(Schreiben) | 20分 | 25 |
会話(Sprechen) | 15分 | 25 |
合計 | 約80分 | 100 |
100点満点で、合格点は4種類すべてにおいて60点以上であることです。
60点以上で合格ではありますが、合格の中でも60点と90点は同じではありません。それは点数と一緒についている評価に表されます。
点数 | 評価 |
90-100 | sehr gut(秀) |
80-89 | gut(優) |
70-79 | befriedigend(良) |
60-69 | ausreichend(可) |
0-59 | nicht bestanden(不合格) |
仮に1つだけ60点に足りず、残りの3つが60点に足りていたとしても、次回はすべての試験を受ける必要があります。
試験会場は世界中にあるゲーテ・インスティテュート。
日本では東京・大阪・京都にそれぞれあります。
試験日程はこちらのホームページの情報をご覧ください。(ホームページはこちら)
ゲーテ試験にてA1を合格することが条件である人は
・ドイツ人配偶者がいて、滞在ビザの取得が必要な人(2007年から)
・ドイツでオペアに応募する人
またドイツ語の会話能力、単語、文法がそれぞれ筆記と会話でA1に達していることを世界で証明する必要のある人、または望んでいる人が世界中で受験しています。
それでは先ほどの4種類の試験内容をもう少し詳しく見ていきましょう
リスニング(Hörverstehen)
流された録音のテキスト内容を聴き取ります。
リスニング時間は約15分。3部に分かれており、全部で15問。15×1,66=25なので、実際の点数に1,66をかけたものがあなたの点数になります。
2度流れる問題と1度しか流れない問題があります。
リスニングの概要説明と答案用紙もドイツ語のみなのであらかじめ対策もしておきましょう。
1部ごとテーマが決まっています。ここではおおまかに内容を見ておきましょう。
1部:身近な日常会話(Kurze Alltagsgespräche)
2人の身近な会話が流れる。シチュエーションはさまざまで、道で知らない人に何かを尋ねる会話、店員との会話、友達同士、また学校の同級生や仕事の同僚の短い会話など。
2部:公共アナウンス(Öffentliche Lautsprecherdurchsagen)
アナウンスの内容が流れます。ガヤガヤしている周りの音も入っているため、1部より少し聴き取りにくくなっています。シチュエーションは空港、スーパー、地下鉄の駅などで流れているアナウンス。
内容は呼び出しから広告まで様々。
3部:電話(Telefonansagen)
実際の電話や留守電で流れるものまで電話に関する内容。シチュエーションはプライベートな内容や、仕事の内容、医療機関からの予約の通知など。
会話スピードは比較的早いけれど、はっきりとした標準語の発音、そして男女様々な声が出てきます。
リスニング対策については別のページで詳しくやりますが、数字を問うものだったり時間を問うものだったり、問題の一つの一つのテーマははっきりしているため、対策はとれます。
問題は話すスピードなので、たくさん聴いてネイティブの話す速さにできるだけ慣れておくことをおすすめします。
読解(Leseverstehen)
読解も大きく3部に分かれており、全部で15問です。時間は25分。
それぞれの部の最初には例が示されてあります。おおまかな内訳の内容はこちら。
1部:短信・短い記事(Kurznotizen)
2種類の短いメールやメモなどを読んで質問に答えます。
内容は簡単な日常会話の域を超えず、たとえば「〇時に駅に着く予定だよね、迎えにいくから〇時までには駅にいるよ。もし場所がわからなかったら電話してね」のような内容。
2部:小さな広告(Kleinanzeigen)
1問に2つずつの広告が出題され、全5問(10広告)。2つの広告の上に文があり、それにふさわしい広告を2つの中から選びます。
広告の内容は、たとえば語学学校の案内、旅行会社の募集、電車のチケット広告など。
完全な文ではなく、時間や単語などがちりばめられているため単語の意味の理解が必要で、その中で宣伝内容を正しく理解することが大事。
3部:表示板・貼り紙(Aushänge)
全5種類の貼り紙を読解します。問題は全5問。貼り紙の下にある文の内容が正しいか正しくないかを問うものです。こちらも2択。
1部は文法の読解力、そして2,3部は完全な文は出てこないが、単語を理解する必要があります。それだけでなく背景(誰に向けて書かれているのか)を理解する能力を問うている印象がありますね。実践的な出題です。
作文(Schreiben)
作文は2部に分かれています。時間は20分。
とはいえ1部は作文というより読解の延長線上です。おおまかな内容を見てみましょう。
1部:応募用紙(Formular)
文章を見て、完全ではない応募用紙に必要な情報を埋めていく内容です。
応募用紙には5項目欠けています(つまり全5問)。何に応募しているかと応募者の情報を書いた文章を読んで探すため、読解的な内容。内容は旅行ツアーへの応募だったり、ホテルの予約だったりです。
2部:短い知らせ(Kurzmitteilung)
題に即した短い文章を書きます。30単語ほどの文章です。
内容は公共機関や旅行先などに情報を求めるメールであったり、誘いを断るメッセージだったりです。
作文では(特に2部では)文法の処理能力を問われています。短い文でいいので正しい文法で書けるようにしておきましょう。
その他、メールの最初と最後に書く決まった形式(Liebe Grüßeなど)についても知っておきましょう。
作文の点数配分は複雑なのでここでは論じませんが、内容が3つに分かれて見られており、それぞれの点数がつきます。長くても短くてもよくなく、30~40単語の間ぐらいで調整できることが望ましいです。
詳しくは作文のページで解説します。
会話(Sprechen)
会話試験はまず、リスニングから始まります。試験の内容は試験管からすべてドイツ語で伝えられます。
会話の内容だけをチェックされるのではなく、聴かれたことを理解し正しく答えられているかも同時に見られているので、まさに会話総合力の試験です。
内容は3部です。4人が同時に受けます。準備時間は一切ないため、あらかじめ内容をある程度準備しておきましょう。対策が有効です。
1部:自己紹介・アルファベットの綴り・数字
名前、齢、国籍、住んでる場所、話せる言語、職業、趣味の7種類を一文ずつ。
その後、試験管から綴りと電話番号または郵便番号の質問があるのでそれに答えます。
2部:質問と回答
テーマと6つの単語がテーブルの上に並べられます。
机の上に置かれた単語を恣意的に選び、テーマに沿ってその単語を入れた疑問文を作って隣の人に尋ねます。
隣の人が理解できる発音と内容であること、つまり伝わっているかが大事です。テーマはたとえば「Wochenende」。
単語例はFrühstück, Lieblingsessen, Sonntag, Bierなど。
つまり週末と手に取った単語の2つを使って疑問文を作ります。
単語の範囲は非常に広いのでA1の単語の暗記は必須。
3部:頼み事とそれに対してのリアクション
第2部は単語を選ぶものでしたが、第3部は絵を選びます。選んだ絵の単語を知っていることが必要です。
書かれている絵の単語を入れて隣の人に何かをお願いする文を作ります。
例えば時計の絵が描かれていたら「今何時か教えてもらえますか?」など。それに対する答え方も練習しておきましょう。
会話は対策が可能であり、それさえすればかなりの高得点を期待できます。
しかし恣意的に単語を選ばせるなど、ある程度の柔軟さや応用力、あと忘れてはならないのがリスニング能力も必要です。その上、面接官や受験生と一緒に受けるため緊張感や周りに影響されやすいともいえるでしょう。
たくさん練習し、いくつかのパターンを知っておくこと、聞きなれておくことで当日落ち着いて受験することができます。
文法の範囲
最後に、ゲーテドイツ語試験の文法の範囲に軽く触れておきます。
ゲーテの試験では独検が大好きな文法の穴埋め問題が一切ありません。そのかわり、文章を書かせたり言わせたりすることで正しい文法が使えているかどうかチェックしています。
A1で出てくる文法の範囲はほぼすべて現在形です。読解では少しだけ過去の形が出ています。
そして話法の助動詞は必須です。本動詞と一緒に変化形を覚えておくだけではなく、正しく書けて正しく言えるように。
逆に各名詞の単数形複数形や、性別は間違っても原点などはありません。そこまで正確なことは求められませんので大事なところだけ抑えておくように。
レッスンでもそれらのアドバイスはしております。
人称代名詞、動詞の現在人称変化、冠詞、名詞の性と複数形、否定文、疑問文、動詞の格支配、場所の前置詞、時間の前置詞、分離動詞に加え、話法の助動詞の文法を勉強しておくといいと思います。
単語
A1の試験の単語は約650と言われています。すべての単語を最低、見て理解できるようにはしておきましょう。
名詞と動詞は書ける、言える、必要な時に出てくるレベルまで覚えておきましょう。
日本語約つきの単語リストはこちらです↓(準備中)
さいごに
ドイツの語学学校では約120~150時間の授業でA1の教科書まるまる1冊が終わる目安で設定されています。もちろんオランダ語やロシア語の母語者は150時間の半分もあれば十分ですし、アジア言語の母語者なら150時間ではとても無理な人も多いです。
日本でドイツ人が周りにいない環境でドイツ語を勉強されている方、また大学の第二か国語でドイツ語を勉強されている方、週一ぐらいのペースでドイツ語を習っている方、それぞれ進度は違います。
が、だいたいの目安として週1で1~2時間ドイツ語レッスンを受けている方がゲーテ試験のA1に受かるかどうかのレベルに達するまでには平均1~2年ぐらいと予想します。
ドイツ語の語学学校で一日3時間、つまり週に15時間ドイツ語で授業を受けている人は平均2か月でA1の授業が終わります(受かるかは別)。現地でドイツ語を頻繁に聞いている、話す機会のある方は3か月あればA1レベルに持っていくのは困難ではないと思います。
時間に換算してみると週1で1時間ペースで授業を受ける人は一年に約55時間の授業時間であるのに対し、現地で週に15時間授業を受ける人は2か月で優に120時間を超えます。
さらに現地に留学している人は最初からドイツ語で授業を受けるため、リスニングにかなりの差が出ます。
大学の授業のように日本で日本語でドイツ語の授業を受けている方は、週1ペースだと2年でもA1に到達しない方も少なくないでしょう。もちろん効率的に独学をすればいくらでも早まります。特にリスニングは独学は必須でしょう。
別の方向から考えてみると、英語やヨーロッパ言語の母語者や流暢な方はもっと習得が早いです。
日本語母語者でヨーロッパ言語の勉強が初めて、という方は先ほど言ったように平均1~2年、またはそれ以上を目安として見ておきましょう。