会社の寮と中国人ルームメイト【上海】


上海で私が住んだ寮の部屋。とてもシンプルな女子2人部屋でした。費用は無料。

築8年ほどだという大きな建物の1階で仕事をし、4階がこの寮でした。2階は他の会社が入っており、私たちの隣の部屋はその会社の人たちの部屋でした。私の部屋は6畳ほどの大きさで、ペラペラの木のベッドが置かれているだけのシンプルな部屋。シーツやふとん、枕は新しいものを会社が至急してくれました。

こんなかんじです。手前が中国人の社員さん、奥がわたし。マットが薄すぎてベッドが硬すぎて慣れるまで時間がかかりました。

中国人のルームメイトは杭州出身で、結婚して小さな子供がいました。中国ではまあまあ有名な大学の国際貿易学科を出ていました。平日の4日はこの寮に寝泊まりし、金曜~月曜日の週末3日間は実家のある杭州に帰って家族と過ごす、という生活をすでに7年も続けていました。

中国では親と子供が離れて暮らすというのはごく普通の現象です。子供は戸籍のある土地(生まれた場所)で学校に通わなければならないため、親の転勤などで引っ越すことが許されません。親が出稼ぎまたは転勤で他の土地に行く場合はいわゆる単身赴任と言う形になり、子供の義務教育期間は祖父母が面倒を見ることが多いようです。

私からすると、まだ小さな子供が一週間の半分以上、母親と離れて暮らすなんて酷な気がしますが、彼女は、子供とあまり離れていないところで働けて週に3日も子供に会える自分は恵まれていると満足していました。電話で毎日声も聴けるし。

彼女は故郷の杭州を愛していました。彼女と暮らした間に何度「杭州にまだ行ったことがないの?いつ来るの?絶対行くべきだよ、あんな素敵な街はないよ」と説得されたでしょう(私は結局一度も行かなかった)。

上海に初めて来た日、すなわち彼女と初めて会った日、「アリババって知ってる?」って聞かれたことを思い出します。私は最初、アリババと40人の盗賊という物語のことかと思って、「あの有名なアラビアの物語のこと?」と答えました。

すると彼女は信じられないという顔をして「アリババっていう会社知らないの?冗談でしょ」と言ったので「ああ、马云の会社のことを言ってるのね」と答えると、「そうなの、そのアリババの本社が私の故郷、杭州にあるの。ハイテクでめちゃくちゃ大きいんだよ。」といいました。

確かにアリババは中国人にとってはそれなしで生活できないほどの影響力があるけどさ、海外では直接なんの影響力もない会社なんだよ・・あなたがきっとアマゾンを知らないように・・と言いたかった。けどやめといた。最初から感じ悪いのはアカン。

その上彼女は、盲目に政府を支持していました。私に仕事があり、幸せな家庭を築き、旅行にもいけるだけの経済の余裕があるのは共産党がいるからだ、といった考えが根底にあり、その様は私の眼には本心のように聞こえました。小さい頃からの繰り返しの洗脳ってこういうことなのね、と思いながら聞いていました。

だから海外を飛び回り、ドイツの大学を出て上海、その次台湾・・多言語を話しヨーロッパ人の恋人を持つ日本人・・といった私は彼女には想像のはるか外側にあるようでした。同じ部屋で住んでいてもあまり分かり合えることはなく、会話もほとんどが彼女の家庭や子供についての域を超えなかったです。私が自分の今までの体験を話したり、意見を言ったりすることはほとんどありませんでした。

それでも生活においてとくに不自由はなく、清潔面での問題もなく、仲良くやっていました。

彼女と2人で使っていたシンプルなシャワールームと女子トイレ。

シャワールームとトイレは女子と男子に分かれていました。が、女子は2人だけで男子のほうが圧倒的に多かったので、男子シャワーやトイレが使用中のときは、男子が女子のトイレを使うこともよくありました。

また、皆が仕事をはじめる9時~は寮の掃除をする人も毎日来てくれるのですが、掃除係の人がここのシャワーを使っていることが時々ありました。

適当中国!そうだよね、ここの水はタダだもん!

また中国人のルームメイトと私がちょっと異なるなあと思った点は、彼女が自分のものはすべて見えないところに毎回片づけることです。

私はどうせ2人しか使わないシャワールームなら自分のもの(シャンプーや洗顔など)ぐらい置きっぱなしでも迷惑にならないだろう、と思い部屋にいちいち持ち帰ることはしませんでした。が、彼女は毎回自分のものをすべて持ち帰って、私にも見えない場所にしまっていました。

やっぱり友達や同僚であれ、家族以外の人はあまり信用しないんだろうな。特に私は習慣も文化も異なる得体のしれない外国人だし。この後、中国は何か犯罪まがいの事や不都合が起きたとき「やったほうが悪い」のではなく、「やられたほうに隙がある」という考えだということを何度も実感しました。

また使った衣服は週末に持って帰って洗い、また新しい服を寮に持ってくる・・という生活をしていました。パンツだけは毎日手洗いをして部屋に干していた。シミがついても破れてもずっと買い替えずに使い続けていました。

そうそう、寮生活はほとんど20~30代の若い中国人で占められていたのですが、男子たちはほとんど洗濯機を使わず、衣服を手洗いしていました。手慣れた洗い方で、子供のころからずっと手で洗っていたのかなあという印象をもった覚えがあります。私は当たり前のように機械に囲まれた、恵まれた子供時代を過ごしていたのだなあと感じます。

だって私、日本で服を手洗いしたこと一度もないし、洗い方もわからない。とんだお嬢様だよ。

洗面所は4つ。洗濯機はほとんど誰も使ってなかった。洗面所で頭を洗う人もいたのでいつもびちょびちょに濡れていました。

そして私が上海を離れる数日前のある朝、突然こんなことに。

築8年の品質とは・・と考える出来事でした。

なにはともあれ、お世話になりました!

上海移住の記事まとめ。