台湾からふたたびドイツへ


朝7時。空はすでに明るいもののひんやりしていて、小さなマフラーでも巻いてこればよかったかなと後悔した。見渡すとあたりは白い霜でおおわれている。今日の朝は19度。日中は30度以上まで上昇する。気温の変化が激しいからこそ、ここの気候は気持ちいいのだ。

澄んだ空気を胸いっぱいに吸いながら、遠くまで見渡せる広く美しい景色を見ると、ここはつい最近いた場所と同じ地球なのかと、つい本心がぽろっと出てしまいそうになった。

ドイツの朝は早い。

パン屋さんはだいたい6時に焼き立てのパンをそろえてあけているし、一番早いスーパーは7時にオープンする。

7時すぎに外を歩いているとちらほらと自転車に乗る小学生たちを見かける。色とりどりの服装、リュックサック、ヘルメットをそれぞれ身に着けて、小さいけれどかっこいいマウンテンバイクに乗って颯爽と通学している。

ここは車はほとんど通らない。

数十分たつと今度は中学生、高校生たちが同じく自転車にのって現れはじめる。彼等は誰一人ヘルメットをかぶっていない。道路にはほとんどが通学する義務教育の子供たちばかりなので120%安全に、見える。

平和だ~。

ここにいると自然が近く感じる。鳥の鳴き声や、水の流れとか木が揺れる音とか葉っぱがこすれあう音が聴こえて落ち着くことができる。耳が研ぎ澄まされる感じ。

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台湾の朝は、いつも大きなバイクの音か、ゴミ収集車の音楽、バダジェフスカ作曲の「乙女の祈り」ではじまった。少なくとも私はどちらかの音で毎回起こされていた。ゴミ収集車の音楽は単音でしかもリズムがおかしいので、毎回聴かされるとまいってしまうが、それが台湾だ。

台湾のゴミ収集車は明確な時間は決まっていないけれど、朝の7時半ぐらいか夜の9時ぐらいに来ることが多い。なぜならほとんどの人がまだ家にいる時間帯だからだ。台湾では各家庭のゴミは、自らゴミ収集車に投げ込まなければならない。音楽は「ゴミ収集車きたよ~」の一斉の合図なのだ。だから家の中にいても、耳の遠いお年寄りでもたっぷり聴こえるような大音量で音楽が流されるのだ。

今から台湾にいた時の経験を書いていこうと思う。ドイツに戻ってきてまだ3日だけれど、すでに台湾の記憶が薄れているのを感じる。あまりにも環境が違うのだ。気候も、景色も、人も、食べ物も。

ドイツののどかな自然の中にいると、なんだか台湾の騒々しくも刺激的だった生活が夢のように感じて、なんだか輪郭がぼやけてくる。完全にドイツの生活に浸る前に、写真などを見ながら記憶を整理して、記録に残しておきたい。

バイクで通学する台湾の高校生。