話法の助動詞:過去形・現在完了形【ドイツ語文法26】


ドイツ語基礎文法一覧

ドイツ語の時制といえば。

・ドイツ語で過去の表現は3つある。

・そのうち一つ(過去完了形)は使える場面が決められている。

・残りの二つ、過去形(Präteritum)の方は書面で使われる。そして日常的に会話で使うのは現在完了形(Perfekt)だ。

と、記憶している人もきっと多いですね。

過去形(Präteritum)を復習する
現在完了形(Perfekt)を復習する

しかし、話法の助動詞が入るとそれは一転し、過去形が会話でもよく使われるようになります。

もちろん、現在完了形もよく使われていますが、過去形の方が短く表現できるため、やや好まれている印象があります。

過去形は、文の2番目にある語を過去形に変化させるだけでできます。
könnenを例に見てみましょう。

現在形:Ich kann das Rätsel lösen.
(私はこのなぞなぞが解ける。)

過去形:Ich konnte das Rätsel lösen.
(私はこの謎が解けた。)

現在完了形は補助動詞habenが2番目に入り、文の後ろに本動詞、話法の助動詞の順でいずれも不定形でつきます。

現在完了形:Ich habe das Rätsel lösen können.

※通常、現在完了形は 補助動詞+過去分詞(Ich habe früher Geige gespielt.)となりますが、話法の助動詞が入ると過去分詞はなぜか不定形になります。注意!

*また文法的には何ら問題がないIch kann Geige spielen.の現在完了形はIch habe früher Geige spielen können.(私は昔バイオリンが弾けた。)という表現ですが、ネイティブに言わせるとこの表現は使えないといいます。

なぜかというと楽器が弾けるといった技術的な能力は、一時的ではなく少なくとも一定期間は持続するものなので現在完了形はおかしいそう。上記の例のような「謎が解けた」といった一回きりの出来事のみ現在完了形で使うことができるようです。

文法が正しければ何でも使えるかといえばそうではないところが難しいですね。

 

では、話法の助動詞は入っているが、本動詞が省略されている場合の現在完了形は?

その場合は、話法の助動詞が過去分詞形(PartizipII)変化します。

現在形:Der Arbeiter will mehr Urlaub(haben).
(その従業員はもっと休みが欲しい。)

過去形:Der Arbeiter wollte mehr Urlaub.

現在完了形:Der Arbeiter hat mehr Urlaub gewollt.
(その従業員はもっと休みが欲しかった。)

とはいえ、話法の助動詞の過去分詞形が使われることは滅多にありません。

使われるのは真ん中の文のような過去形がほとんどです。意味は過去形も現在完了形も全く同じ。

 

ただ、mögenだけは本動詞の意味で使われるので、たとえば

現在形:Ich mag den Film nicht.
(私はこの映画が好きじゃない。)

現在完了形:Ich habe den Film nicht gemocht.
(私はこの映画が好きじゃなかった。)

このように現在完了形で使われることも多いです。

 

6つの話法の助動詞の過去形の変化表はよく出てきます。丸覚えしましょう。
一人称と三人称単数のみここに書いておきます。そのほかの人称変化はすらすら出てくることが理想。

現在 過去形
ich kann ich konnte
ich mag ich mochte
ich will ich wollte
ich soll ich sollte
ich muss ich musste
ich darf ich durfte

現在完了形の変化は参考程度で十分です。

*mögenの過去形mochteは本動詞の「好き」の意味で使われることは多いですが、話法の助動詞の意味で使われることはありません。その時はwollteが使われます。

〇Ich mochte früher Schokolade.

=昔はチョコレートが好きだった。

✖Ich mochte als Kind Pilot werden.

=小さいころパイロットになりたかった。

〇Ich wollte als Kind Pilot werden.

話法の助動詞の意味を復習する

 

☆☆

それでは、よく日常会話で使われる過去形の例文をいくつかあげておきます。
どんな場面で使われるのか、少しでも想像できると嬉しいです。

1.

A:Was wolltest du als Kind werden?
(小さいころ、何になりたかった?)

B:Ich wollte als Kind Pirat werden.
(小さいころ、海賊になりたかった。)

 

2.

A:Warum konntest du gestern nicht zur Schule kommen?
(なんで昨日学校にこれなかったの?)

B:Ich konnte gestern nicht kommen, weil ich krank war.
(病気だったから来れなかったんだ。)

 

3.

A:Musstest du gestern zur Uni gehen?
(昨日大学いかなきゃならなかったの?)

B:Ja, ich musste zur Uni. Wir hatten einen Test.
(うん、いかなければならなかった。テストがあったんだ。)

 

4.

A:Durftest du mit 16 Jahren Alkohol trinken?
(16歳でアルコール飲んでもよかった?)

B:Nein, das durfte ich nicht.
(ううん、ダメだった。)

 

5.

A:Kannst du bitte nochmal sagen, was ich sofort machen sollte?
(何をすぐにしたほうがよかったかもう一回行ってくれる?)

B:Du solltest deinen Chef zurückrufen.
(すぐに上司に電話したほうがいい。)

 

6.

A:Ich habe die Schule nicht abgeschlossen.
(私は学校を卒業しなかった。)

B:Das solltest du aber.
(それはでもしたほうがよかったね。)

ーーーーーー

さらなる例文。

・Ich musste kurz mit meiner Mutter telefonieren.
(ちょっと母と電話しないといけなかった。)

・Ich musste leider sagen, dass ich ihr nicht beim Umzug helfen kann.
(彼女の引っ越しを手伝えないと言わないといけなかった。)

・Er konnte heute Morgen nicht aufstehen.
(彼は今朝起きれなかった。)

・Ihr konntet diese Geschichte bestimmt nicht glauben.
(君たちはこの話を確実に信じられなかったでしょう。)

・Weil sie Fieber hatte, konnte sie nicht arbeiten.
(熱があったので今日彼女は働けなかった。)

・Sie durfte nicht nach China, weil sie kein Visum hatte.
(彼女はビザを持っていないので、中国に入国できない。)

Durftest du als Kind allein ausgehen?
(子供の時、ひとりで出かけてもよかった?)

・Er wollte immer viel arbeiten und Geld verdienen.
(彼はいつも働いてお金を稼ぎたかった。)

・Du solltest gestern pünktlich zum Termin kommen.
(昨日遅刻したらあかんかったやんか。)

 

☆☆

ここからは現在完了形をもう少し突っ込んでみます。

先ほど現在完了形の形をやりましたが、もう一つ疑問に残った方もいるかと思います。

普通の現在完了形はhabenまたはseinの補助動詞がつきました。

さっきの例文ではhabenが入っていたけど、じゃあsein動詞を使う現在完了形は話法の助動詞が入るとどうなるの?

 

例文で見てみましょう。

現在完了形:

Ich bin nach Hause gegangen.

(私は家に帰った。)

 

これにmüssenを入れて「私は家に帰らなければならなかった」という文を作ります。

過去形:
Ich musste nach Hause gehen.

現在完了形:
〇 Ich habe nach Hause gehen müssen.
✖  Ich bin nach Hause gehen müssen.

話法の助動詞が入った文では、sein動詞も全部habenになります。

現在完了形で補助動詞seinと話法の助動詞は一緒に使わないと覚えておきましょう。

どっちか迷わなくていいですね!

 

☆☆

さらに、本動詞が2つ入る文に話法の助動詞を入れるとどうなるか?

Meine Mutter geht einkaufen.
(私の母は買い物に行く。)

gehen(行く)とeinkaufen(買い物をする)が2つ動詞に入った文です。

話法の助動詞の現在形を入れると

Meine Mutter will einkaufen gehen.
(私の母は買い物に行こうとしてる。)

 

また過去形は

Meine Mutter wollte einkaufen gehen.
(私の母は買い物に行こうとしていた。)

 

じゃあ現在完了形は?

Meine Mutter hat einkaufen gehen wollen.
(私の母は買い物に行こうとしていた。)

になります。

ただ、現在完了形を使うと動詞があまりにも多くなるので、普通は過去形が使われます。

 

また、話法の助動詞が2つ入った文も作ることができます。

応用としてこちらを参考にどうぞ↓

2つ(以上)の話法の助動詞を使った文の作り方【ドイツ語文法25-1】

 

まとめ。

・話法の助動詞は過去形で使われることも多い。

・現在完了形はhaben+本動詞の不定形+話法の助動詞の不定形。

・本動詞が省略されている場合のみ、話法の助動詞が過去分詞形に変化する。

・現在完了形の補助動詞seinと話法の助動詞は一緒に使えない!すべてhabenになる。

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