動詞と格:三格と四格支配の動詞【ドイツ語文法27】
Ich kaufe einen Apfel.
(私はりんごを買う。)
この文は
主語(ich=私)+動詞(kaufen=買う)+目的語(einen Apfel=ひとつりんごを)
でできています。
動詞kaufenには格変化で四格になった単語(einen Apfel)が直接ついています。
では次の文はどうでしょう。
Ich helfe dir.
(手伝うよ。)
これも
主語(ich=私)+動詞(helfen=手伝う)+目的語(dir=君に)
同じ文型でできていますが、動詞helfenの目的語は三格(dir)になっています。
こんな文もあります。
Ich warte auf meinen Zug.
(私は電車を待っています。
主語(ich=私)+動詞(warten=待つ)+目的語(auf meinen Zug=電車を)
動詞wartenと目的語meinen Zugの間にaufという前置詞が入っています。
動詞wartenは必ずaufとセットになって「~を待つ」という意味になるのです。
日本語の「電車を待つ」を直訳してwartenに直接、四格をつけてしまうと間違いです。
✖ Ich warte meinen Zug.
ではなぜ上の文のように時々目的語に四格がついて、時々目的語が三格になって、時々前置詞がつくのか?
なぜなら、これは動詞によって決まるからです。
たとえばkaufenは四格、helfenは三格、wartenは前置詞aufと一緒に、とあらかじめ決まっているのです。
これからどの動詞に何格がつくのか、という使い分けをここで勉強します。
このページではまず
・動詞+三格
・動詞+四格
・動詞+三格+四格
を勉強します。
前置詞つきの動詞については次回の文法で詳しくやります。
三格がつく主な動詞と四格がつく主な動詞を一気に覚えてしまいましょう。
割合としては四格支配の動詞が圧倒的に多いですが、ここではよく使う動詞のみ紹介します。
なお、ここに出てくる四格支配の動詞とは、その目的語をつけなければ文が成り立たないものをいいます。
目的語をつけてもつけなくても成り立つ動詞も多々あります。
たとえばkaufenは
Ich kaufe mir einen Apfel.
このように三格mirをつけてもかまいません。
しかしmirがなくてもIch kaufe einen Apfel.と文が成立するので、kaufenは三格支配の動詞とはいいません。
しかし
Ich kaufe mir.だけだと文は成立しません。だからkaufenは四格支配の動詞というのです。
また、ほとんどの動詞には意味が2つ以上ありますが、その意味の一つが四格支配で、もう一つが目的語をつけない、というような場合もあります。
たとえばspielenには「(楽器を)弾く」「(球技スポーツを)する」という意味と「遊ぶ」などの意味があります。
Ich spiele Gitarre.
(私はギターを弾く)
spielen Wir heute Fußball.
(今日サッカーする?)
↑この場合は四格支配ですが
Die Kinder spielen.
(子供たちが遊んでいる)
↑こっちの場合は目的語がつきません。
なのでspielenは厳密には必ずしも四格支配の動詞とは言わないのですが、四格がつくことも知っておく必要はあります。
このような動詞にはessen, trinken, lernen, lesenなどがあります。
1.動詞+四格
四格がつく主な動詞一覧:
anrufen・aufgeben・aufräumen・abholen・ausgeben・backen・bekommen・bestellen・brauchen・besuchen・essen*・finden・haben・hören*・kaufen・lesen*・lieben・machen・nehmen・suchen・trinken*・untersuchen・vergessen・verstehen
*は四格を目的語としないこともあります。
・anrufen(電話する)
Gestern habe ich dich angerufen.
(昨日君に電話したよ。)
・aufgeben(あきらめる)
Er will den Plan aufgeben.
(彼はその計画を断念しようとしている。)
・aufräumen(片づける)
Ich muss mein Zimmer aufräumen.
(部屋を片付けなきゃ。)
・abholen(取りに行く)
Ich hole dich vom Bahnhof ab.
(君を駅まで迎えに行く。)
・ausgeben(お金を使う)
Er gibt gerne Geld aus.
(彼は金遣いが荒い。)
・backen(焼く)
Meine Mutter backt gerne Kuchen.
(母はケーキを焼くのが好きだ。)
・bekommen(もらう)
Sie hat einen Studienplatz in Heidelberg bekommen.
(彼女はハイデルベルク大に入る資格を得た。)
・bestellen(注文・予約する)
Ich habe im Internet ein Flugticket bestellt.
(私はネットで航空券を予約した。)
・brauchen(必要である)
Ich brauche einen neuen Computer.
(私は新しいコンピューターがいる。)
・besuchen(訪ねる)
Ich werde dich bald mal besuchen.
(君をもうすぐ訪ねていこうと思っているよ)
・essen(食べる)*
Ich esse nicht gerne Knoblauch, weil man später aus dem Mund riecht.
(後で口が臭うから、私はにんにくを食べるのが好きじゃない。)
*essenは「Ich esse.=今食べている」「Hast du schon gegessen?=もう食べ終わった?」のように目的語なしで使うことも可能。trinkenも同じく。
・finden(見つける・思う)
Ich finde deinen Vorschlag gut.
(君の提案はよいと思うよ。)
・haben(持っている)
Ich habe früher mal zwei Autos gehabt, aber jetzt habe sie nicht mehr.
(昔は車を2代持ってたんだけど、今は一つも持ってない。)
・hören(聞こえる)
Hörst du mich?
(私の声、聞こえる?)
・kaufen(買う)
Wir überlegen, ob wir ein neues Auto kaufen wollen.
(新しい車を買おうかどうか考え中です。)
・lesen(読む)*
Kannst du den Brief lesen?
(その手紙、読んでくれる?)
*lesenは「~を読む」という意味で四格支配の動詞なのですが、そうでない場合もあります。
たとえば「今何してる?=Was machst du gerade?」の質問に“Ich lese.”と目的語なしで答えることもできるからです。
目的語がない場合は「読書している」という意味ですね。
このように、100%四格支配とはいえない動詞もあるのが厄介なところです。
・lieben(愛する)
Liebst du mich?
(私のこと好き?)
・machen(する)
Sie wollen heute keine Hausaufgaben machen.
(彼らは今日宿題をしたくない。)
・nehmen(取る)
Ab morgen nehme ich Urlaub.
(明日から休暇を取る。)
・suchen(探す)
Ich habe lange eine Wohnung gesucht.
(私は長い間住居を探した。)
・trinken(飲む)*
Ich möchte eine Tasse Kaffee trinken.
(コーヒーを一杯飲みたいです。)
・untersuchen(調べる)
Wir untersuchen die Unfallursache.
(私たちは事故の原因を調べています。)
・vergessen(忘れる)
Ich vergesse oft seinen Namen.
(私は彼の名前をよく忘れてしまう。)
・verstehen(理解する)
Können Sie mich verstehen?
(私の言うことがわかりますか?)
2.動詞+三格
三格がつく主な動詞一覧:
helfen・absagen・antworten・danken・ähneln・dienen・drohen・einfallen・fehlen・entgegenkommen・folgen・gefallen・gehorchen・gehören・gelingen・genügen・glauben・gratulieren・nützen・passen・passieren・raten・schmecken・vertrauen・verzeihen・wehtun・widersprechen・zuhören・zustimmen
・helfen(助ける・手伝う)
Wie helfen Ihnen gerne.
(私たちはあなたを喜んでお助けします。)
・absagen(取り消す)
Ich muss Ihnen morgen leider absagen.
(申し訳ないけど、明日あなた(との約束)をキャンセルせざるを得なくなりました。)
・antworten(答える)
Warum antwortest mir nicht?
(なんで答えないの?)
・danken(お礼を言う)
Ich danke dir.
(ありがとう)
・ähneln(似ている)
Das Mädchen ähnelt ihrer Mutter sehr.
(あの女の子は母親にとても似ている)
・dienen(勤務する・尽くす)
Ich diene dem Staat.
(私は国家に仕えている ※公務員である)
・drohen(脅かす)
Ich wollte dir nicht drohen.
(君を脅迫するつもりじゃなかったんだ)
・einfallen(思いつく)
Eine gute Idee ist mir eingefallen.
(いいこと思いついた)
・fehlen(欠けている)
Mir fehlt das Geld für die Reise.
(旅行資金が足りていない。)
・entgegenkommen(合致する)
Ihr Angebot kommt meinen Wünschen sehr entgegen.
(あなたのご提案は私の希望にとても添っています。)
・folgen(後を追う)
Die Polizei folgt der Spur eines Verdächtiges.
(警察は容疑者の行方を追っている。)
・gefallen(気に入る)
Die Farbe gefällt mir sehr.
(私はこの色が気に入っています。)
・gehorchen(従う)
Der Hund gehorcht selten den Befehlen.
(この犬はめったに命令に従わない)
・gehören(~のものである)
Wem gehört das Auto?
(この車は誰のですか?)
・gelingen(成功する)
Es gelingt mir nicht, die Aufgabe zu lösen.
(この問題を解決することが私にはできない。)
・genügen(十分だ)
Mir genügen 1000 Euro im Monat.
(月1000ユーロあれば私には十分だ。)
・glauben(信じる)
Ich glaube ihr.
(私は彼女を信じる。)
・gratulieren(お祝いを言う)
Die Kollegen gratulieren Herrn Schmitt zum Geburtstag.
(同僚たちがシュミットさんに誕生日のお祝いを言う。)
※なぜ単数形なのにHerrnになるの?と不思議に思った人はこちら
・nützen(役立つ)
Meine Sprachkenntnisse haben mir sehr genützt.
(私の語学力はとても役に立っている。)
・passen(似合う)
Die Kleidung passt ihm.
(この服は彼に似合っている。)
・passieren(起こる)
Das ist mir vorher noch nie passiert.
(それは今まで一度も起こらなかった。)
・raten(助言する)
Ich rate dir, schnellstens zur Arzt zu gehen.
(できるだけ早く医者に行くことを勧めるよ。)
・schmecken(~の味がする)
Diese Speise schmeckt mir nicht gut.
(この料理はまずい)
※schmeckenに三格が付いた場合gut/schlechtの二択になる。Es schmeckt salzig(これは塩辛い)などの他の表現は三格がつかないので注意!
・vertrauen(信用する)
Vertraust du deinem Instinkt etwa nicht?
(直感を信じる?)
Die Deutschen vertrauen dem Bargeld mehr.
(ドイツ人は現金をより信用している。)
・verzeihen(ゆるす)
Sie kann ihrem Freund immer noch nicht verzeihen.
(彼女は彼氏のことを今もまだゆるせない。)
・wehtun(痛い)
Mein Bauch tut mir weh.
(お腹が痛い)
・widersprechen(反論する)
Du darfst mir jetzt nicht widersprechen.
(今は私に反論してはいけない。)
・zuhören(聴く)
Ich habe dir nicht zugehört.
(君の話をちゃんと聴いていなかった。)
・zustimmen(同意する)
Alle haben dem Vorschlag zugestimmt.
(皆その提案に賛成した。)
3.動詞+三格+四格
三格と四格が同時に使われる動詞:
bringen・empfehlen・erklären・erzählen・geben・leihen・sagen・schenken・schicken・schreiben・stehlen・verbieten・wünschen・zeigen
・bringen(持ってくる)
Bringst du mir bitte das Buch?
(その本持ってきてくれる?)
・empfehlen(勧める)
Der Dozent hat seinen Studenten dieses Buch empfohlen.
(その講師は学生たちにこの本を勧めた。)
・erklären(説明する)
Kannst du mir die Theorie nochmal erklären?
(その理論をもう一度私に説明してくれる?)
・erzählen(語って聞かせる)
Die Mutter erzählt ihren Kindern ein Märchen.
(母親が子供に童話を語って聞かせる。)
・geben(与える)
Können Sie mir ein Beispiel geben?
(たとえを出してもらえますか?)
・leihen(貸す)
Ich leihe dir kein Geld.
(君に金は貸さない。)
・sagen(言う)
Du sagst mir besser die Wahrheit.
(私に本当のことを言った方がいいよ。)
・schenken(プレゼントする)
Ich habe ihm ein Buch geschenkt.
(私は彼に本をプレゼントした。)
・schicken(送る)
Ich habe ihr ein Geschenk zum Geburtstag geschickt.
(私は彼女に誕生日プレゼントを送った。)
・schreiben(書く)
Wir schreiben euch eine Karte aus dem Ausland.
(海外から君たちにはがきを書くね!)
・stehlen(盗む)
Er hat ihr das Portemonnaie gestohlen.
(彼は彼女から財布を盗んだ。)
・verbieten(禁止する)
Er verbietet dem Sohn das Computerspielen.
(彼は息子にネットゲームを禁止した。)
・wünschen(願う)
Ich wünsche dir viel Erfolg.
(君の成功を願っているよ。)
・zeigen(見せる)
Ich möchte euch eine schöne Stadt zeigen.
(私は君たちに美しい街を案内したい。)
(決まり文句)
・reichen(届く)
Du kannst mir nicht das Wasser reichen.
(君(の能力)は僕にはまだまだ程遠いよ。)
三格と四格がつく動詞は、どちらかを省略したり、なしで表現されることも多いです。
どの動詞が何格なしで使われているのかなどはたくさんの文章を読んで勉強していきましょう。
4.語順について
ドイツ語の基本の語順は動詞が2番目の定位置という以外、その他の語は定位置がありません。
しかし上の例文で見るように、動詞+三格+四格の場合、だいたいの文は
主語+動詞+三格+四格
の順になるのが自然です。
三格は人称代名詞が多く、また短い語なのでそちらのほうがいいやすいのでしょう。
しかし三格も四格も代名詞の場合、語順が入れ替わる、という特徴があります。
たとえば
Der Vater verbietet seinem Sohn das Computerspielen.
(父親は息子にそのコンピューターゲームを禁止する。)
という文を、人間だけ人称代名詞に変えるとこうなります。
Er verbietet ihm das Computerspielen.
この場合、語順は変わりません。
しかし、四格であるコンピューターゲームを代名詞に変えると、四格⇒三格の順に逆転します。
Er verbietet es ihm.
三格も四格も代名詞の場合、四格⇒三格の順番になること、注意です。
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日本語では「三格=~に」「四格=~を」と訳されていることがよくありますが、ドイツ語でも同じとは限りません。
たとえば「私は友達に(ばったり)会う」は日本語では三格ですが、ドイツ語では「会う」という動詞は四格と一緒につきます。
⇒Ich treffe meine Freunde.
日本語を勉強しているドイツ人が「私は友達を会う」とかってよく間違えるのも、ドイツ語の会う(treffen)が四格支配であることからきているのです。
*また、一格がつく動詞は4つだけ存在します。sein, werden, bleiben, heißenです。
一格は厳密には目的語とは言わないのですが、ここでは一格がつく動詞としてこの4つを覚えておきましょう。
ほとんどの動詞が三格、四格、または前置詞の目的語を必要とするの対し、この3つは異例ともいえます。
例)
Das ist meine Tochter.
(この子は私の娘です。)Ich werde Schauspieler.
(私は俳優になる。)Er bleibt ein Lehrer.
(彼は先生のままでいる。)Ich heiße Lara.
(私はララといいます。)
Schauspielerはゼロ冠詞なので冠詞がつきませんが、上の文はすべて目的語(実際には述語という)に一格が入っています。3つの動詞は一格支配としてここで覚えておいてもいいでしょう。
この文法の解説動画はこちら↓
Ich habe früher mal zwei Autos gehabt, aber jetzt habe sie nicht mehr.
恥ずかしながら früher mal の使い方を初めて調べました。
今まで知らなかった言い回しが出てくるので本当に勉強になります。
früher malは口語ですね。正確には früher einmalです。
Der Hund gehorcht selten den Befehlen.の Befehlenは、何故複数形を使うのでしょうか
命令が一つじゃないからです。
なぜ代名詞になると3格→4格だった語順が4格→3格になるのでしょうか??
そう決まっているからとしか言いようがないですねぇ。
いい例えがないのですが、なぜ日本語は動詞が最後につくのかと問うているような感じでしょうか^^;
でもなぜだろうと思いますよね。