【ドイツ語文法5】名詞の格変化:定冠詞と不定冠詞


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ドイツ語の名詞は、ほぼ必ず冠詞という語とセットで出てきます(冠詞+名詞)。この形はドイツ語ではとっても大事です。このページではおもに冠詞についての勉強です。

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前々回の文法では名詞の性、前回は名詞の複数形を学びました。

der Mann, die Frau, das Kind, die Leute

といったように、名詞の前にder, die, das, dieを付けることによって区別しました。今回はこのder, die, das, dieの使い方について勉強します。

実はこのように名詞の前にder, die, das, dieを付けた時点で、この名詞は主語の働きをします。

der Mann ⇒ 男性

die Frau ⇒ 女性

das Kind ⇒ 子供

die Leute ⇒ 人々

たとえば「男性がそこにいる」という文は “Der Mann ist da.” というし、「女性が買い物にいく」は “Die Frau geht einkaufen.”といいます。

それでは、主語「は」や「が」以外の名詞はどういえばいいのか?

「男性車」は?

「女性言う」は?

「子供呼ぶ」は?

このように、名詞を主語以外の表現に使うときに、ドイツ語では名詞の前の der, die, das, die の形を変化させて表現します。

ではどのように変化するのか?男性名詞を例に見てみましょう。

der Mann = 男性は/が

des Mannes = 男性

dem Mann = 男性

den Mann = 男性

これを名詞の格変化といいます。(4種類)

そしてそれぞれの格変化を文法用語では

der Mann(男性が)⇒ Nominativ(一格または主格)

des Mannes(男性の)⇒ Genitiv(二格または所有格)

dem Mann(男性に)⇒ Dativ(三格または与格)

den Mann(男性を)⇒ Akkusativ(四格または対格)

と言います。主格や所有格と言った日本語を覚える必要は全くありませんが、ドイツ語の文法用語のほうは覚えておいたほうが便利です。

また、日本語で「に」や「を」を使っていますが、ドイツ語になった場合、すべての「に」や「を」を直訳できるわけではありません。

たとえば

「友達に会う」は日本語では「友達」といいますが、ドイツ語では三格ではありません。

Ich treffe meine Freunde.

meine Freundeは四格。つまり四格が正解です!

さっきの「がのにを」法則の日本語で直訳すると「私は友達を会う」がドイツ語の文法です。

これらについては動詞と格という文法で勉強してください。動詞とともに徐々に覚えていくことをお勧めします。

今はまず、各冠詞の一格から四格の形を覚えることが先決。

 

それでは先ほどの例(der, des, dem, den)は男性名詞の格変化です。

ということは当然、女性・中性・複数名詞にもこの格変化があります。それを表にしたのがこちら。

Kasus(格) maskulin
(男性)
feminin
(女性)
neutral
(中性)
Plural
(複数)
Nominativ(一格) der die das die
Genitiv(二格) des    -s der des    -s der
Dativ(三格) dem der dem den     -n
Akkusativ(四格) den die das die

分かりやすく名詞を入れてみましょう。

Kasus(格) maskulin feminin neutral Plural
Nominativ・が der Mann die Frau das Kind die Leute
Genitiv・の des Mannes der Frau des Kindes der Leute
Dativ・に dem Mann der Frau dem Kind den Leuten
Akkusativ・を den Mann die Frau das Kind die Leute

※男性・中性名詞の二格は名詞のうしろに“s”、複数名詞の三格はうしろに“n”をつけることを忘れずに!

※複数名詞の三格は通常はうしろに“n”がつきますが、例外として“Partys”のように最後が“s”で終わる名詞のときは、三格のときも“s”のままです。例)den Partys, den Pizzas, den Autos など。

der, die, das, dieのように名詞の前につくものの総称を冠詞(Artikel)といいます。

そしてder, des, dem, denのように目的に合わせた4つの変化を、名詞の格変化(Deklination von Nomen)といいます。

der, die, das, dieの格変化は冠詞の中の一種類であり、定冠詞(Bestimmter Artikel)といいます。定冠詞は特定の何かをさすばあい、例えば “Der Mann sitzt da.” その男性(目の前にいる)があそこに座っている。などと表現するときにつける冠詞です。

定冠詞の対極として、もうひとつの重要な冠詞が不定冠詞(Unbestimmter Artikel)です。

不定冠詞は名詞の前にein, eine, ein, eineという形で出てきます。「ある」や「ひとつの」といった不特定のものを指すときに使います。

たとえば“Ein Mann sitzt da.”ある男性(知らない誰か)があそこに座っている。または男性がひとりあそこに座っている。といった使い方です。

不定冠詞の格変化表はこちら。不定冠詞は「ひとつ」の意味を含むので複数形はありません。

Kasus maskulin
(男性)
feminin
(女性)
neutral
(中性)
Nominativ
(一格)
ein eine ein
Genitiv
(二格)
eines       -s einer eines      -s
Dativ
(三格)
einem einer einem
Akkusativ
(四格)
einen eine ein

名詞を入れた形はこちら。

Kasus maskulin feminin neutral
Nominativ・が ein Mann eine Frau ein Kind
Genitiv・の eines Mannes einer Frau eines Kindes
Dativ・に einem Mann einer Frau einem Kind
Akkusativ・を einen Mann eine Frau ein Kind

参考に定冠詞と不定冠詞の変化表を比べてみましょう。

Kasus maskulin feminin neutral plural
Nominativ der/ein die/eine das/ein die
Genitiv des/eines  -s der/einer des/eines  -s der
Dativ dem/einem der/einer dem/einem den  -n
Akkusativ den/einen die/eine das/ein die

非常に似ているといえば似ています。

定冠詞を覚えてしまえば、不定冠詞の形を覚えるのもそう難しくない気はします。

が!!!

難しいのはこの変化表を覚えることではなく、どの場面でどっちの冠詞を使うのかの判断!!

これをかなりの時間をかけて練習する必要があります。なぜなら日本語の名詞には定冠詞をつける必要がなく、省略できてしまうから。直訳で考えていると永遠に身につかないのです。

たとえば

「私はりんごを食べたい」

という普通の文。名詞「りんご」の前に日本語では何もつける必要がありません。

しかしこれをドイツ語にすると

×Ich will Apfel essen.

りんご“Apfel”の前に何もついていないこのような文は完全ではありません。

必ず

〇Ich will den Apfel essen.

または

〇Ich will einen Apfel essen.という必要があります。

一体どの場面でどっちを使うの?つけない、という選択肢がない以上、どちらかを言わなければならない。
なぜならドイツ語の冠詞には冠詞そのものの機能の他に、日本語でいう“が・の・に・を”という助詞の機能もあるから、つけないとそもそも文法が成り立たないのです。

しかしこれが通常、日本語母語者は自然に使いこなすのが困難です。たいがいはつけずに言ってしまうか、全部関係なく定冠詞をつけてしまいます。

どれだけややこしいのかは、定冠詞と不定冠詞の使い分け方を読むと(または聞くと)わかります。

でも(少なくとも最初は)たったの2択です。なんとなくでも感じをつかんでみることから始めましょう。

そして初級のころから必ず、名詞の前にはどちらかの冠詞をつけて表現する習慣をつけましょう。

ここではまず、定冠詞と不定冠詞の格変化に慣れるために、例文をたっぷり紹介しておきます。

定冠詞と不定冠詞は日本語に訳すと不自然になるため、日本語訳は意訳なので参考程度に。意味を理解する助け程度に考えてください。

以下、男性名詞女性名詞中性名詞複数名詞を色でわけます。

Nominativ(一格)

主語になるもの。「~は」または「~が」。

定冠詞の例:

Der Schüler liest. = (男子)生徒は読んでいる。
Die Schülerin liest. = (女)生徒は読んでいる。
Das Kind spielt. = 子供は遊んでいる。
Die Kinder spielen. = 子供たちは遊んでいる。

不定冠詞の例:

Ein Mann sitzt da. = ある男性がそこに座っている。
Eine Frau geht einkaufen. = ある女性が買い物に行く。
Ein Fahrrad steht auf der Straße. = ある自転車が道路に置いてある。

Genitiv(二格)

日本語の「の」にあたるもの。しかしドイツ語は順番が違うので注意。たとえば「父の本」はドイツ語では「本 父の」となる。

Das Buch des Vaters. = 父親の本。
Das Buch der Mutter. = 母親の本。
Das Buch des Kindes. = 子供の本。
Das Buch der Schülern. = 生徒たちの本。

Der Stift eines Mannes. = ある男性のペン。
Der Stift einer Frau. = ある女性のペン。
Der Stift eines Mädchens. = ある少女のペン


Dativ(三格)

日本語の「に」にあたる。

Der Stift gehört dem Schüler. = そのペンはその生徒のものだ。(直訳は「~属する」)
Der Stift gehört der Lehrerin. = そのペンはその(女性の)先生のものだ。
Der Stift gehört dem Kind. = そのペンはその子供のものだ。
Der Stift gehört den Eltern. = そのペンは両親のものだ。

Ich helfe einem alten Mann. = 私はあるおじいさんを助ける
Ich helfe einer alten Frau. = 私はあるおばあさんを助ける
Ich helfe einem Kind. = 私はある子供を助ける


Akkusativ(四格)

日本語の「を」にあたる。目的格ともいう。

Der Vater isst den Apfel. = 父はそのりんごを食べる。
Der Vater isst die Banane. = 父はそのバナナを食べる。
Die Mutter isst das Eis. = 母はそのアイスを食べる。
Die Mutter ist die Bananen. = 母はそのバナナ(2つ以上)を食べる。

Der Vater isst einen Apfel. = 父はりんごをひとつ食べる。
Die Mutter isst eine Banane. = 母はバナナを一本食べる。
Das Kind isst einen Kuchen. = 子供はケーキをひとつ食べる。

四格がつく主な動詞も一緒に覚える。

それでは、練習問題をやってみましょう。回答は下です。

【初級】定冠詞:名詞の格変化の穴埋め練習問題【ドイツ語文法】

また4つの冠詞の中で一番理解しにくい二格については集中的に練習問題を作っています。

【初級】所有冠詞と二格の練習問題【ドイツ語文法】

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