万能tragen【ドイツ語動詞】


動詞tragenはめっちゃ使いやすい。

なんで?

だって身につけるものについて日本語が細かく「着ている」とか「はいている」とか「つけている」とか「かぶっている」とか「かけている」とか使い分けてるややこしいやつが、ドイツ語は全部tragenひとつで言えちゃうから!進行形限定だけど。それは後から解説します。

ドイツ人の日本語学習者はこのtragenの使い分けにぶつぶつ文句を言いながら覚えているわけ。彼らは当たり前に「ぼうしをつけている」のか「ぼうしをかぶっている」のか識別できない。これこそ最初は理屈なしで覚えるだけの世界です。

私らが日本語では「~に行く」と全部言えちゃう「に」が、ドイツ語では目的地によってinになったりnachになったりzuになったりすることを覚えなくちゃいけないのと同じですね。(詳しくは場所の前置詞へ

 

いやいや、ぼうしみたいに上から置くまたは着せるのは全部「かぶる」でだから「ぼうしをつける」とは言わないって?

じゃあヘッドホンは?

ヘッドホンも頭の上から置くけどヘッドホンをかぶるとはあまり言わないよね?ヘッドホンはつけるのだ。

こういう風に実際に場面を想像して感覚でふさわしい言葉が出て来るのはネイティブスピーカーですよね。

日本語学習者でもかなり頑張って勉強するとこのような感覚は後からついてきます。「え、かつらってつけるんやっけ?かぶるんやっけ?(今までの学習経験から)たぶんかつらはどっちも言えるんじゃないか」っていう感じです。

もちろんドイツ語のネイティブスピーカーも感覚でドイツ語を話しています。この感覚は非ネイティブでも長い時間をかけてすごい努力して勉強していると少しずつついてきます。ちなみに私はすでにかなり感覚でも言えます。

しかしその前に非ネイティブは文法という名前の知識網を通らないと、感覚どころか正しく話すことすらできません。感覚だけついてるけど文法を知らない、という非ネイティブは無自覚に聴いている側にものすごい負担をかけてます。

まず文法を徹底的に。

ドイツ語の基礎文法一覧

話がそれた。

動詞tragenについて今から解説します。

この動詞は四格支配です。なのでこの動詞を見つけたら必ず四格を真っ先に見つけて訳さないといけません。

それでは今から、この四格に入る主な名詞を意味別にみていきます。

 

運ぶ

スタンダードな意味は「運ぶ」です。(四格)を運んで移動させる感じですね。

Ich trage dich.

=あなたを運ぶよ。

Der Sanitäter hat den Verletzten getragen.

=救急隊員がけが人を運んだ。

Die Kleine schläft. Ich trage sie ins Bett.

=あの子寝ちゃったね。ベッドに運ぶよ。

 

人が四格になるとお姫様抱っこして運ぶ感じのイメージです。ちなみにdie Kleineはちいさい女の子のこと。der Kleineはちいさい男の子です。

 

ちなみにお姫様抱っこがそのままの四格の意味なら「おんぶして運ぶ」もこの動詞を使います。

 

Ich trage dich huckepack.

=おんぶしてあげるよ。

Kannst du mich huckepack tragen?

=おんぶしてくれる?

 

人も運ぶことができますが、モノももちろん運べます。

 

Wir müssen den Koffer zum Flughafen tragen.

=トランクを空港まで運ばなきゃ。

Wir können die Waschmaschine nicht tragen. Sie ist zu schwer.

=洗濯機は運べない。重すぎる。

 

引っ越しなどは色々なものを運びますから、tragenは使いやすい動詞です。

 

ちなみにtragenはあくまで「運ぶ」なので、「持っていく」の場合はmitnehmenなどの動詞を使います。

「運ぶ」は何かを目的地まで「動かす」という感じなので、たいそうなものや重いもののほうがしっくりくるかもしれません。もちろん軽くてもいいですが、状況によりふさわしい、ふさわしくないはありますので使い分けを。

「持っていく」との使い分けも一緒に勉強することをおすすめします。

「持っていく」と「取りに行く」☆mitnehmen, mitbringen, holen, abholen【ドイツ語動詞】

☆☆

それでは2番目の意味です↓

 

身に着けている

先ほど言った「着ている」「履いている」「つけている」「かぶっている」といった「身に着けているもの」はすべてtragenが使えます。

服はもちろん、靴、帽子、時計、めがね、アクセサリー、エプロン、ヘッドホンから香水なんかもtragenでOK。やったー。

以下例文です。

 

1)Er trägt einen Anzug.

2)Ich trage keine Brille.

3)Wie viel Schmuck trägt ihr?

4)Ich trage eigentlich nicht gern Schmuck, aber nur einen Ring trage ich immer.

5)Ich trage Ohrringe und eine Armbanduhr.

6)Mein Vater trägt beim Kochen eine Schürze.

7)Viele tragen auf dem Arbeitsweg einen Kopfhörer.

8)Er trägt Parfum.

9)Ich habe eine Weile eine Zahnspange getragen.

 

日本語訳

1)あの人はスーツを着ている

2)私は眼鏡をかけていない。

3)アクセサリー何個つけてる?

4)あんまアクセサリーつけるの好きちゃうけど指輪だけはつけてる。

5)ピアスと時計をつけてるよ。(ピアスは普通は複数形)

6)お父さんは料理するときエプロンつけてる。

7)通勤のときヘッドホンつけてる人多いよね。

8)あの人は香水をつけてる。

9)ちょっとの間だけ矯正してたよ(直訳:矯正器具をつけていた)。

 

身につけるものの単語はこちらにさらにあります。これらはtragenとつけることができます↓

【ドイツ語単語】服 “die Kleidung”

 

しかしこれを使うときには注意事項が。

日本語では「身に着ける」ではなくて「身に着けている」という意味であることを自覚しておいてください。

つまり身に着けるものと一緒に使うときはtragenは進行形です。これ大事だよ!もう身に着けている時にしか使えない!

だから「今日はスーツ着よかな」なんていう動作の時には×Ich trage heute einen Anzug.とは言えないのです。

いいですか。

「今スーツを着ている」状態の時だけtragenは使えるのです。

じゃあ、今からスーツ着るって言いたかったら何ていうねん?と思った方、この場合は動詞を変えてください。

「着る」の動詞はanziehenです。

Ich ziehe einen Anzug an.

だったら今からスーツを着るんです。

 

ドイツ語の進行形は非常に難しく、さまざまな使い方があります。

こちらにその例をだしながら少し解説していますので興味のある方はどうぞ↓

ドイツ語に進行形の文法がないということ

 

話を戻します。

今回2番目に紹介した「身に着けている」は服などのときは進行形ですが、例外的にアクセサリーの時はどっちも同じtragenを使ってもいいです。

Ich will diese Kette tragen.

=今日このネックレスつけよっと。

Ich trage diese Kette.

=このネックレスつけてるよ。

 

参考程度に、先ほどの例文を進行形でなく、今からする動作に変えるとどうなるかも見ておきましょう。

 

1)Er zieht einen Anzug an.

=スーツを着る。

2)Ich muss noch die Brille aufsetzen.

=眼鏡もかけなきゃ。

3)Sie steckt Ohrringe ein.

=ピアスをつける。

6)Mein Vater zieht beim Kochen eine Schürze an.

=お父さんは料理の時エプロンをつける。

7)Viele setzen auf dem Arbeitsweg einen Kopfhörer auf.

=通勤時ヘッドホンする人がたくさんいる。

8)Er sprüht sich mit Parfum ein.

=香水をふりかける。

9)Ich habe gerade eine Zahnspange eingesetzt.

=さっき矯正器具をつけた。

☆☆

動作になるとanziehen, aufsetzen, einstecken, einsetzenなど様々な動詞を使わなければなりません。

ということでtragen簡単!だって日本語みたいな動詞の使い分けがないから!とか言ったけど、それは進行形だけの話で、今からする動作の時はちゃんと使い分けが存在するのです。

とはいえ、anziehen(日本語で言うと「着る」に似ている動詞)でかなりのことが言えてしまいますがね。しかしそれについては今回は触れません。

それでは次。

 

 

髪型・髭

身に着けているものは何も自分が装着したものだけではありません。

もとから自分の身体についているものもtragenと言えるんです!

たとえば髭と髪の毛。

髪型や髭のファッションもtragenと一緒に覚えましょう。ちなみにこれも進行形です。

「今日髪おろしてるんだね」なんて普通の会話はtragenを使います。

 

1)Ich trage gern meine Haare offen.

2)Sie trägt die Haare gelockt.

3)Ich trage einen Pferdschwanz.

4)Sie trägt einen Dutt.

5)Sie trägt einen geflochtenen Zopf.

6)Er trägt einen Seitenscheitel/Mittenscheitel.

7)Er trägt einen langen Bart.

8)Er trägt einen Dreitagebart.

 

日本語訳

1)髪をおろすのが好き。

2)パーマをかけている。髪を巻いている。

3)一つにくくっている。ポニーテールをしている。

4)おだんごにしている。

5)三つ編みにしている。

6)髪を横分けしている。髪を真ん中でわけている。

7)髭を長くはやしている。

8)こんな感じの髭↓

これらの表現も進行形の「~している」という意味です。髪をくくったり三つ編みにしたりするときは別の動詞を使います。

が、やり始めるときりがないので今回はtragenの使い方を理解したところで止めておきましょう。

tragenは今回紹介した意味の他にもたくさんの意味があります。たとえばVerantwortung tragen / Sorgen tragenなどはしょっちゅう聞く表現かと思います。

また気が向いたらこちらのブログのほうにその他の表現も増やしていきたいと思います。

 

今回はとりあえず基礎の

1)運ぶ

2)身に着けている

3)(髪型や髭)をしている

の日常的表現を紹介しました。

1)の運ぶは進行形の意味ではありませんが、2)3)は進行形だということを忘れないでね。

それでは最後にtragenの変化表を。不規則動詞。

tragen Präsens Präteritum Perfekt
ich trage trug habe getragen
du trägst trugst hast getragen
er, sie, es trägt trug hat getragen
wir tragen trugen haben getragen
ihr tragt trugt habt getragen
sie tragen trugen haben getragen

tragenの動画解説はこちら↓

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家の前が数か月の大工事中。なのに先日、間違った場所を掘っちゃって下水道を破裂させちゃった図。大変。