ドイツ語に進行形の文法がないということ
ドイツ語の時制の文法には進行形がありません。
しかしだからといってドイツ語に進行形が存在しないというのはイコールではありません。
進行形は日常的にもしょっちゅう使われています。しかも、ひじょーに多用な表現で。
ここではふか~いドイツ語の進行形表現の入り口を深みにはまらない程度に少しお見せしたいと思います。
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まず基礎から。
ドイツ語の時制は全部で6つあります。(文法の形の話です)
内訳は
現在:1
過去:3
未来:2
です。
見てわかる通り、現在形は一つしかなく「~する」と訳されますね。学校に行くとかご飯を食べるとか、普通の現在形です。
過去は3つありますが用法や形の違いのみで、意味はすべて「~した」です。学校に行ったとかご飯を食べたとか。
しかしドイツ語の時制の文型には「~している(現在進行形)」や「~していた(過去進行形)」がありません。
日本語や英語の時制であれば存在するものですね。
しかしだからといってドイツ語は進行形を表現できない、などということはありません。
むしろものすごい数のバリエーションを持っていると感じます。
「今ご飯食べてる」「今移動してる」などの進行形は毎日のように使われています。
今回はそのバリエーションの豊富さを思いつくままに少し伝えてみたいと思います。
(*調べた内容ではありません。言語学的にどうなのか、という考察ではなく実践でよく使う進行形の表現を並べてみます)
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副詞gerade
これは一番知られている、そして一番容易な進行形の作り方ではないでしょうか。
現在形+gerade
であれば「~している」
現在形+jetzt
であれば厳密には未来「今から~する」
という意味になります。
Ich koche gerade.
(今料理している)Gerade sind wir in der Besprechung.
(会議中です。)
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前置詞seit
時間の前置詞seitは、過去のある時点から現在も続いている事柄に使えますね。
つまり「〇〇(過去の時点)から~している」という意味です。文句なしの進行形です。
Seit gestern nehme ich ab.
(昨日からダイエットしてるの)Seit 10 Jahren wohne ich in Deutschland.
(10年前からドイツに住んでるよ)
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自動詞
たとえば
sich setzen(座る)とsitzen(座っている)のように他動詞と自動詞をもつ動詞のなかの自動詞のほうが進行形になる例。
Ich setze mich an den Tisch.
(机に座る)Ich sitze am Tisch.
(机に座っている)
前者は厳密には今から座る動作をするところで使い、後者はすでに座っているという進行形を表します。
前者は「ここに座ってね」と相手に促す時によく命令形で使いますね。
Setz dich bitte.のように。
その他もsich stellenとstehen、sich legenとliegen、hängenといった動詞が典型的です。
詳しくはこのページの一番下「動く動詞と動かない動詞」↓
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動詞が変わる
たとえばsich anziehen(着る)とanhaben(着ている)のように完全に別の動詞で表現されるものもあります。
Ich ziehe heute eine kurze Hose an.
(今日短パンはこうっと。)Ich habe heute eine kurze Hose an.
(今日短パンはいてるよ。)
anhabenはtragenでもいいですね。
Ich trage heute eine kurze Hose.でも進行形です。
これはけっこう高度な進行形でしょう。しかし着替える前にIch habe eine kurze Hose anとは言いませんし、すでに着ているのにIch ziehe eine kurze Hose anともいいません。やはりそれぞれにふさわしい使い方があるのです。
tragenについてさらに詳しく見る↓
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状態受動
これは説明するまでもありません。受動態を学習するときに必ず出てきます。
sein+過去分詞
で「~した状態である」という進行形と習いますね。
これは状態受動の説明によく使われる例文です↓
Die Tür wurde geschlossen.
(ドアが閉められた)Die Tür ist geschlossen.
(ドアが閉まっている)
余談ですが、ネイティブは学校でドイツ語文法(国語)を習うとき、この文型を状態受動とは習いません。
私達ドイツ語学習者が習っている状態受動を厳密に訳せば
Die Tür ist geschlossen
(ドアが閉められている)
という意味になりますよね。あくまで受動態なので。
しかしネイティブはgeschlossenの形を形容詞として捉えています。
ドアが閉まっている
という解釈ですね。
厳密には後者の感覚のほうが正しいのでしょう。しかしgeschlossenを動詞の過去分詞として習う私達ドイツ語学習者はgeschlossenは感覚的に動詞だという理解があるため、動詞の受動態として理解した方が分かりやすいという配慮な気がします。
しかしドイツ語に精通してくると、いろいろな場面で動詞の過去分詞の意味を、動詞か形容詞のどちらの意味で使われているのか区別ができてくるようになり、そのほうがいろいろと便利であることを実感させられます。
これがいわゆるネイティブの感覚ってやつでしょう。
たとえば次の例などはいい例です↓
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形容詞
風邪をひく・風邪をひいている
これは風邪をひくの場合は動詞sich erkälten.
風邪をひいている場合はerkältetと形容詞です。
Ich habe mich erkältet.
(風邪ひいた~)Ich bin erkältet.
(風邪ひいてんねん)
後者の形は状態受動ですが、日本語では風邪にひかれているとは訳せません。
なのでerkältetは形容詞と理解することが正しいです。
☆☆
前置詞am
これは口語で非常によく使われる便利な表現です。
Wir sind am Essen.
(私ら食べてるところよ)Ich bin am Einkaufen.
(買い物中よ)
am+三格で、三格のところにはだいたい動詞がそのまま名詞になった形で入ります。
ちなみに、もっと口語ではamすら省略されて
Ich bin Einkaufen.的な表現も全然おかしくないです。
しかしここまでくると一体文法とは・・・という思考に陥りますので、あまり考えないように。ここでストップ。
☆☆
sein+dabei
これも典型的な進行形の表現です。
この表現の特徴はzu+不定詞と使うことです。
Ich bin gerade dabei, abzunehmen.
(今ダイエットしてるとこなんだ)Ich bin schon dabei, den Koffer zu packen.
(荷造りもう始めてるよー。)
geradeやschonという副詞と使われることが多いです。geradeが入ると「今やってる!」を強調することに対し、schonだと「もうやってる!」というニュアンスです。
どっちも進行形にはありですよね。
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その他
まだまだありますがここでは一例をあげて終わります。
Ich bin unterwegs.
(移動中)Ich bin auf dem Weg zur Arbeit.
(今仕事にいってる途中)
unterwegsやauf dem Wegは目的地にいく途中にいるときに使う表現です。
向かっている最中ですのでこれも進行形。毎日のように使える表現ばっかりじゃないですか?
深いでしょ、進行形!
☆☆
ということで今思いついただけでもこれだけの進行形をあげることができました。
もっとちゃんと考えたらどれだけ挙げれるのでしょう?
しかもこれ、教科書とかにのってるほとんどの表現よりよく日常会話で使ってるような!
すごいバラエティーに富んだ文法を使って表現していますね。
で、最後に思ったこと。
ドイツ語の時制に進行形が体系化されて入らなかったのは、豊富すぎて文法として統一できない&そもそも統一する必要がなかったのでは?
ということです。ちょっとずついろんな文法から拝借し、完全に機能している!便利!ネイティブにとっては!
・・・しかし学習者にとってはそんなバラエティー豊かな表現があると慣れるまでは苦行に近いですね。
文法があったほうが楽。
そう、楽なんです。
文法はあったほうが楽だよ。
だから、ある文法はありがたく勉強しましょう。だってそのほうが楽だから!
動画解説はこちらです(*^-^*)↓
下の階の靴箱。2人しか住んでないのにどういうこと!?
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